フィリピン進出を検討する経営者・海外事業責任者の方とお話していると、
- 「うまくいっている会社もあれば、撤退した会社もある」
- 「何が分かれ目になるのかが分かりにくい」
という声をよく伺います。
フィリピンは成長性が高く、日本企業にとってもチャンスの大きい市場ですが、
実際には「もっとうまくやれたはずだった」と感じながら撤退・縮小する企業も少なくありません。
本記事では、当社 Social Zero が見てきたケースや支援実績をもとに、
- フィリピン進出で日本企業が陥りがちな5つの落とし穴
- その背景にある「思い込み」
- 事前に打てる対策と、進出検討時のチェックポイント
を整理します。
「これからフィリピン進出を検討する」あるいは「すでに検討中だが不安がある」という方に、一度立ち止まっていただくための材料としてお役立てください。
特にプロダクトアウト型で“出たら何とかなる”、という考えが多い日本企業が注意すべきポイントを網羅しています。

Contents
なぜフィリピン進出は「成功事例」より「失敗事例」から学ぶべきか
◆成功事例だけを見ると、リスクの輪郭がぼやける
成功事例は参考になりますが、
- その企業ならではのブランド・資本力・人的リソース
- 偶然のタイミングや、たまたま良いパートナーに出会えた
といった要素が、実際の海外進出企業事例にも多く含まれています。
一方で失敗事例は、
- 「何をやらなければ良かったのか」
- 「どこで軌道修正すべきだったのか」
が比較的明確で、再現性のある学びが得やすいという特徴があります。
※ここでのポイントとして:
- 自社単体では進出前に、事業の成功要因と失敗要因が分からない
- 進出後も、自社単体での正確な事業の振り返りが難しい
という事が、当社がこれまでフィリピンを含む海外市場で見てきた企業では、非常に多く散見されるという“事実”です。
◆フィリピン特有の前提を理解せずに、日本と同じ感覚で進めてしまう
フィリピン進出での失敗の多くは、
- 市場が悪かった
- フィリピンだから難しかった
というよりも、
「フィリピンの前提条件を理解しないまま、日本と同じやり方で進めてしまった」
ことに起因しているケースが目立ちます。
以下では、実際によく見られる失敗パターンを5つに整理し、それぞれの対策をお伝えします。

落とし穴1:市場調査不足で「ニーズ・競合・価格設定」を誤る
◆よくある失敗パターン
- 日本で成功しているサービス・商品を、そのままフィリピンに持ち込む
- 「競合はまだいない」と思い込んでいたが、実はローカルプレイヤーが既に存在していた
- 現地の購買力・価格感覚を読み違え、ターゲットが極端に狭くなってしまう
結果として、
- 想定していた売上規模に届かない
- 値下げせざるを得ず、採算が合わない
- 数年頑張るも、事業として成立しないまま撤退
という結末になりがちです。
◆背景にある「日本式プロダクトアウト」のクセ
日本企業には、
- 「良いものを作れば売れる」
- 「品質で勝負すれば勝てる」
というプロダクトアウト的な発想が非常に根強くあります。
実際に当社へこれまで海外進出や海外販路開拓のお問い合わせを頂いた企業の大多数が、同様の発想を根拠に海外進出をしようとしています。
しかしフィリピンでは、
- 価格・利便性・ブランド・チャネルなど、複合的な要素で比較される
- 例として、フィリピンは大小さまざまな島で構成されており、エリアごとの特徴や一部のディストリビューターが市場を握っている等の特徴があります。
- ローカル企業が似たコンセプトを素早く安価にコピーしてくる
- フィリピンを始め、海外では良い製品やサービスは市場に出るとすぐにコピーされ、オリジナルより確実に安い価格で市場にローンチしてきます。
という前提があり、単純な「良いもの勝ち」ではありません。
このように、日本企業は“出せば何とかなる”という傾向が強く、初期の調査を怠る傾向がありますが、海外進出に成功している企業ほど、新規参入する国の初期市場調査を詳細に行っています。
◆回避するためのポイント
- 事前に市場調査・競合調査をしっかり行う
- ターゲット・価格帯・チャネルを現地の実態に合わせて設計する
- 「日本と同じビジネスモデル」でやる前提を一度疑う
- サービスや製品のコピーに対する打開策や代替案を準備しておく
当社では、フィリピン進出の初期段階で必ず市場調査やフィジビリティスタディを行い、「どの事業なら勝ち筋があるか」を整理するところからご支援しています。

落とし穴2:パートナー選定を急ぎ過ぎて、合弁・代理店でつまずく
◆よくある失敗パターン
- 外資規制を理由に、現地パートナーと安易に合弁会社を設立
- 代理店やディストリビューターに一社集中で任せてしまう
- 初期の契約で、販売コミットメントや報告義務があいまいなままスタート
結果として、
- 売上が思ったように伸びない
- 情報開示が十分に行われず、進捗の実態が不明
- 契約期間中はパートナーを変えられず、時間とコストだけが消えていく
という状況に陥るケースが少なくありません。
◆「最初から合弁ありき」が危険な理由
- お互いのカルチャー・オペレーション・価値観を理解する前に資本を入れてしまう
- 自社側にフィリピンでの実務経験・判断軸がないと、相手の良し悪しを見極めづらい
ため、パートナー選定のミスがそのまま構造的な問題として残ってしまいます。
◆回避するためのポイント
- いきなり合弁会社ではなく、「業務委託・テスト販売」から始める
- 複数候補と小さく組んでみて、親和性や実行力を見極める
- 契約期間・独占条件・KPI・解約条件を慎重に設計する
当社でも、最初は委託や共同プロジェクトから始めて、
うまくいったケースのみ合弁や深い提携に進むというステップを推奨しています。
一度、誤った海外パートナーと合弁会社を設立してしまうと、提携解消や合弁会社の清算には非常に多くの時間とコストがかかります。

落とし穴3:法規制・ライセンス・税務を軽視して後戻りになる
◆よくある失敗パターン
- 数年前の情報や他社事例だけを頼りにスキームを決めてしまう
- 外資規制の対象かどうかを曖昧なまま事業を進める
- 税務・利益の還流方法を詰めないまま売上規模だけが先に立ち上がる
その結果、
- 途中で追加のライセンスが必要だと判明する
- 外資規制に抵触し、ストラクチャーの組み直しが必要になる
- 税務リスクやペナルティが発生する可能性が出てくる
といった「やり直しコスト」が発生します。
当社へご相談を頂いた企業の例として、フィリピンの土地売買の話をフィリピン側の知人から持ち掛けられ、契約直前まで行っている段階で当社へご相談をされました。
その際に、外国人または外資が40%以上の企業は土地の所有が出来ないというフィリピンの法律に基づいたアドバイスとリスクヘッジ策を行いましたが、これらの話は大半が外国人を狙った投資詐欺であり、直前に防ぐ事が出来ました。
◆フィリピンは「動きながら調整」が効きにくい領域がある
フィリピンに限りませんが、新興国では、
- 法改正が頻繁に行われる
- 実務運用が担当部署・担当者によって異なることもある
ため、「とりあえず始めて、問題があったらそのとき考える」という進め方は危険です。
◆回避するためのポイント
- 事業内容を細かく分解したうえで、外資規制・ライセンスの要否を精査する
- 現地の法律・会計・税務の専門家と早い段階から連携する
- 事業内容によっては「利益をどう日本に戻すか」まで含めてストラクチャーを組む
当社では、現地弁護士・会計士とチームを組み、
法人設立やPEZA等の検討も含めて、事前の設計からご支援しています。

落とし穴4:採用・マネジメント設計の欠如で、離職と内紛に苦しむ
◆よくある失敗パターン
- 日本本社の評価制度・給与テーブルを、そのままフィリピンに持ち込む
- 拠点長・マネージャーの権限があいまいで、現場の意思決定が遅い
- 人事評価・昇給・昇格のルールが不透明で、優秀な人材から離れていく
結果として、
- 採用してもすぐ辞める
- 現場のモチベーションが下がる
- 拠点長と日本本社の間で対立が起きる
といった「人の問題」がボトルネックになります。
※当社のこれまでの各国での海外進出の経験からも、これらの日本式の進め方は最も避けるべき海外進出および現地法人運営の方法と断言できます。
◆「日本式」を守ること自体が目的化してしまう罠
- 年功序列
- あいまいな評価と昇給
- 本社の承認フローを重ねた重い意思決定
これらは日本では当たり前でも、
フィリピンをはじめ海外市場では、人材が定着しない原因になり得ます。
◆回避するためのポイント
- フィリピン市場に合わせた新規の評価・報酬制度を設計する
- 初年度〜2期目は「マネジメント人材の採用と育成」に集中する
- 現地拠点にどこまでの意思決定権を持たせるかを、経営として明確に決める
当社のフィリピン現地法人運営事例として、
初年度から評価制度・役割定義・キャリアパスを整備し、現地平均の約3分の1という低い離職率を実現することで、事業拡大につなげた実績があります。
人的資本の観点からも、このポイントは決して軽視できない、非常に重要な海外進出の成功および失敗の要因となります。
※フィリピンの人件費と人材採用に関しては、別記事「フィリピンの人件費と人材採用の実態」で詳しく解説しています。

落とし穴5:本社とのコミュニケーションと意思決定が機能しない
◆よくある失敗パターン
- 現地拠点の報告・相談のルールが曖昧
- 本社の関係部署が多く、誰が最終決裁者か分からない
- 拠点長はやる気があるのに、意思決定プロセスが重くてスピードが出ない
その結果、
- チャンスがあっても動けない
- 現地チームが疲弊して辞めていく
- 「フィリピンは難しい」という結論だけが残る
という状態になってしまいます。
◆「本社の事情」で足が止まると、現地の信頼を失う
フィリピンのような成長市場では、
- 競合の動きも早く
- 顧客のニーズも変化が激しい
ため、数カ月単位で意思決定が遅れると、すぐに機会損失につながります。
実際に各国の日本企業の海外現地法人を対象にしたJETORの調査結果でも、意思決定フローやスピードが海外現地法人の障害になっていると回答している企業の割合は、非常に多いというデータもあります。
◆回避するためのポイント
- 本社側の窓口と最終決裁者を明確にする
- 拠点長に任せる範囲と、必ず本社承認が必要な範囲を事前に決める
- 報告・相談のリズム(週次・月次)とフォーマットを整える
- 海外事業に知見の無い本社側の意思決定者は極力除外する
当社では、現地拠点と本社の間に入り、
コミュニケーションルール作りや意思決定プロセスの整理をお手伝いするケースも増えています。

失敗を防ぐための事前チェックリスト
フィリピン進出を検討・準備する際、
最低限、次のポイントは「はい/いいえ」で✔チェックしておくことをおすすめします。
1. 市場・競合・価格
- 自社のターゲットと価格帯は、現地の実態に合っているか
- 主要な競合プレイヤーと自社の優位性を言語化できているか
- 「日本と同じモデル」でやる前提を、一度疑ったか
- 市場を理解した品質以外の強みがあるか
2. スキーム・法規制
- 事業内容を細かく分解し、外資規制・ライセンスの要否を確認したか
- 利益の還流方法・税務リスクについて、専門家と議論したか
- 合弁・代理店に頼り過ぎない選択肢を検討したか
- 代替案を準備したか
3. 採用・マネジメント
- 拠点長・マネージャーに求める要件を具体的に定義したか
- フィリピン市場に合わせた評価・報酬制度を検討しているか
- 現地拠点に与える権限と、本社の関与範囲を決めているか
- フィリピン現地法人の制度は専門的な知見に基づいているか
4. 本社体制・意思決定
- 本社側のオーナー(責任者)が明確か
- 海外事業全体の意思決定フローをグローバルスタンダードにできるか
- 3〜5年の事業ポートフォリオの中で、フィリピン拠点の役割を定義しているか

Social Zeroが「失敗しないフィリピン進出」のためにできること
当社 Social Zero は、
自社でのフィリピン現地法人立ち上げから運営・オフショア拠点構築の経験と、
複数の日系企業のフィリピン進出支援実績をもとに、
- 市場調査・フィジビリティスタディ
- スキーム設計・法人設立
- 人材採用・組織立ち上げ
- 現地オペレーションと本社の橋渡し
まで、一気通貫で伴走支援を行っています。
特に、
- すでに何となく進めてしまっている計画を「一度棚卸ししたい」
- 進出構想はあるが、リスクと打ち手を整理してから決めたい
- これまでの海外進出で苦労した経験があり、同じ失敗は避けたい
といった企業様に対して、
「前回の失敗を繰り返さないための設計」をご一緒に行うケースが増えています。
※日本企業のためのフィリピン進出に関しては、別記事「【保存版】日本企業のためのフィリピン進出ガイド」で詳しく解説しています。
まとめ:落とし穴を知ってからフィリピン進出を判断する
フィリピン進出は、
- 若い人口と伸びる中間層
- 英語力の高い人材・BPOノウハウ
- コスト優位性と親日感情
といった大きなチャンスがある一方で、
- 市場調査不足
- パートナー選定のミス
- 規制・税務の見落とし
- 採用・マネジメント設計の欠如
- 本社との意思決定不全
といった落とし穴も存在します。
重要なのは、
「フィリピンだから難しい」のではなく、
「フィリピンに合わせた設計になっているかどうか」
という視点です。
- フィリピン進出を検討しているが、失敗リスクを整理してから判断したい
- すでに検討中・一部着手済みで、不安なポイントを第三者に見てもらいたい
- 過去の海外進出の反省を踏まえ、今回は設計から専門家と進めたい
という段階でも、気軽にご相談ください。
御社の現状とご検討内容を伺ったうえで、
「どこに落とし穴があり得るか」「今から打てる手は何か」を、具体的に整理いたします。



