高リスク?バングラデシュでのオフショア開発のデメリットや注意点とは?対策も合わせて紹介

2024年現在、バングラデシュは世界第8位の人口規模を誇ります。
さらに、今後20年間の人口ボーナス期を迎える事から豊富な労働力が期待されています。
なおかつ人件費も安価である事から、次なる海外事業拠点地としてバングラデシュが注目され始めています。
システムの開発・制作を自国以外で行うオフショア開発においても、これまではベトナムやフィリピンが人気でしたが、バングラデシュが候補として挙げられる事も増えてきました。

しかし、バングラデシュへの進出を検討している場合は、そのデメリットやリスク、注意点を事前に理解した上で進出するか否かの意思決定をする必要があります。

この記事では、アジアを中心とした17カ国以上の海外事業支援実績を有するコンサルタントが、バングラデシュでのオフショア開発のデメリットと対策について解説します。

バングラデシュでのオフショア開発のメリット

バングラデシュ国旗

バングラデシュでのオフショア開発のデメリットについて述べる前に、メリットについて簡単に説明します。
バングラデシュでのオフショア開発のメリットは、以下が挙げられます。

  • コストパフォーマンスが高い
  • 優秀なIT人材が豊富
  • 英語でのコミュニケーションが可能
  • 外資・ITソフトウェア企業に対する様々な優遇措置

これまでオフショア開発の進出国として人気の高かったベトナムやフィリピンでも比較的同様のメリットはあるものの、バングラデシュではより多くの恩恵を受けられる可能性が高いです。

詳しい内容については、バングラデシュへの事業拠点進出を検討中の企業担当者様向け法人設立ガイドをご確認ください。

バングラデシュでのオフショア開発のデメリット

バングラデシュでのオフショア開発のデメリットについて説明します。

インフラが整備段階であり交通や通信のトラブルがある

バングラデシュのオフショア開発において最も心配されるのはインフラ面です。
例えば、交通インフラ一つとっても、日本のようには整っていません。
日本は、都市交通マスタープラン「ダッカ都市交通戦略計画」の改定や、ダッカ市内のメトロ整備など長年バングラデシュの交通インフラ整備を積極的に支援してきました。

しかしながら、交通インフラに関する課題は依然として多いのが現状です。
例えば、住民の都市間のアクセスが制限されていたり、公共交通機関の乱れによって始業時間に間に合わないといったこともバングラデシュでは頻繁に発生しています。
バングラデシュでは現地従業員の自宅のリモート環境が整っていないケースも多く、交通アクセスのトラブルが業務に直結しやすいので注意が必要です。

ダッカ市内

また、オフショア開発に必要不可欠な通信においても心配な点があります。
世界経済フォーラム(WEF)でも、2024年のバングラデシュのリスク首位にエネルギー供給不足が挙げられています。

首都のダッカ市内でも、日中に複数回停電することは珍しいことではありません。
システム開発においては、停電が起きるとその都度全ての業務が停止します。
これら日本とは全く異なるインフラの状況を、バングラデシュに進出を検討している企業は把握しておく必要があります。

人材の流動性が高く、短期離職のリスクがある

これは他のアジア圏でも言えることですが、バングラデシュは比較的離職率が高いです。
退職の理由は様々ですが、オフショア開発に絞って言及すると、IT業界全体が成長市場である事から就業者に成長意欲や向上心が高い層も多く、新たなチャレンジを求めて転職をする傾向があります。

人材流動性が高いこと自体は、企業にとってネガティブなことばかりではありません。優秀な人材が確保しやすいなどポジティブな面も多くあります。
短期離職のリスクを念頭に置いた体制構築ができるかどうかが、バングラデシュでのオフショア開発の明暗を分けるでしょう。

政治的不確実性が高く、ビジネスリスクがある

直近では、2024年1月に総選挙が行われ、ハシナ首相率いる与党が過半数の議席を獲得し政権を維持しました。
しかしながらこの選挙は、与党側による弾圧に反発した最大野党がボイコットを決めた事から、実質与党以外に選択肢がない選挙であったとも言われています。
今後、選挙をボイコットした最大野党側との対立がいっそう深まるおそれがあり、政治情勢の混乱や治安の悪化が懸念されています。

政治的な抗議活動やストライキが起きると、予期せぬ業務の中断が起こりうるリスクがあります。また、治安悪化は、現地の従業員や日本からの出向メンバーの安全を脅かす事にもつながるため、企業として注意しなければなりません。

日本語が通じづらいため、日本語でのコミュニケーション難易度が高い

PCで仕事

バングラデシュの公用語はベンガル語です。
基本的には、一般市民はベンガル語しか話しません。

英語については、高等教育を受けている方であれば話せる場合が多いです。
これは、バングラデシュの大学が英語主体の教育を行うケースが多く、大学卒業後は欧米企業への就職を望む生徒が多い事などが関係しています。

日本語については、英語よりもさらに話者が少なくなります。
日本はこれまで長年に渡って精力的にバングラデシュを様々な形で支援しており、日本語に関しても、国際交流基金による日本語教育プログラムなどを通じて、日本語学習者の増加を促しています。そのため一部の層は日本語を話すことができます。

しかしながら、バングラデシュは日系企業との取引が欧米企業と比べて少ないこともあり、バングラデシュ全体では日本語への関心は高くなく、多くの人は日本語を話しません。
ちなみに、日本語学習者は主に国費留学や私費留学を目指して、初級後半程度まで日本語を学ぶ傾向があります。

文化が異なるため、業務を遂行する上での認識齟齬が発生しやすい

バングラデシュに限った話ではないものの、日本企業が海外でビジネスを推進する際は、文化の違いによるミスコミュニケーションが最も大きなリスク要因となることが多いです。

典型的な失敗例として、日本企業が海外でプロジェクトを進める際、「これは言葉にしなくても流石に伝わるだろう」という思い込みから仕様や依頼事項を言語化せずに進めてしまい、後から認識齟齬が発生してしまうといったことが挙げられます。
文化の違いは、ビジネスの様々な場面で影響を及ぼします。例えば、会議の進め方や意思決定のプロセスにおいても、日本では暗黙の了解や相手の意図を汲み取る文化が重視されますが、他国では明確な指示や合意が求められることが多いです。これはバングラデシュでも同様です。

オフショア開発で海外進出するにあたって、その国の文化的背景を理解せずに進めると、後から必ず問題が生じるため、注意してください。

信仰がイスラム教であることから、日本とは異なる仕事の進め方になる

バングラデシュの風景

日本では宗教による就業への影響は少ないですが、バングラデシュはイスラム教圏であり、信仰に基づき日々の生活が営まれています。

営業日一つとっても異なります。バングラデシュの週末は金曜日と土曜日です。また、イスラム教徒は仕事中でも一日に複数回礼拝をし、断食(ラマダン)に取り組みます。
日本の常識を基準にして業務を進めようとすると、スケジュールや仕事の精度といった面で問題が出てくる可能性があるので、注意が必要です。

バングラデシュのオフショア開発のデメリットへの対策

これまであげたバングラデシュのオフショア開発のデメリットには、どういった対策を取るべきなのか説明します。

進出エリアを吟味し、企業独自のサポート体制を構築する

まず、インフラ面についてです。
実際にバングラデシュで日々ビジネスを推進している現地企業は、インフラが不安定な条件下においてどのように対応しているのでしょうか。
基本的には、各社それぞれ独自のサポートの仕組みを整えています。
例えば、交通インフラについては、従業員向けに通勤用のバスを準備し、公共交通機関を利用せずとも通勤できるようにするなどです。

続いて停電に対する措置ですが、首都ダッカ市内の外資系企業や大手企業が集まるエリアにある近代的なオフィスビルやホテルは、基本的にはバックアップジェネレーターが完備されています。そのため、停電が発生してもすぐには業務に影響が出ないようになっています。

バングラデシュの町並み

オフショア開発拠点のエリアや入居ビル選びは、インフラのバックアップ体制の観点でもチェックをすることをお勧めします。
その上で、従業員の通勤サポートなど企業独自の仕組みを構築することが現実的な解決策となるでしょう。

個々のキャリア形成を支援し長期的に所属したい組織づくりと仕組み化

バングラデシュのIT人材には、新たなチャレンジを求めて転職をする層が多いことは先ほど述べた通りです。

成長意欲や向上心が高くかつパフォーマンスの高い従業員の短期離職を防ぐには、従業員自身がこの組織で働き続けたいと思える組織づくりが重要になります。
企業として個々のキャリア形成を支援する仕組みを作り、転職せずともキャリアアップが図れるようにする事で、離職率を下げることが可能です。
筆者は過去アジア各国でオフショア開発の拠点の立ち上げに携わってきました。自身の経験からも、キャリア形成支援の仕組みは優秀な人材の退職を左右する大事なポイントと言えます。

MTG風景

当たり前ですが、仕組みは設計だけでなく、実際に運用をしなければ意味がありません。
しかしながら、運用まで全てを日本側がマネジメントするのは現実的ではないため、キャリアアップ支援策の運用を安心して任せることができ、現地メンバーのモチベーション含めてマネジメントできる現地のマネージャーの採用が大変重要になるでしょう。

このように組織で力を発揮してほしいメンバーの不必要な退職リスクを防止しつつ、その上で業務が属人化しない仕組みを考えていく事も必要です。
例えば、日々の業務や、メンバーのオンボーディングについてマニュアルを整備するなどです。

政治的不確実性に対しては、情勢変化をキャッチアップし続けることが重要

政治上のリスクについては、企業ごとにコントロールできるものではない上、具体的にどういう問題に直面するかも予測しづらいです。
日々バングラデシュ全体の情勢をキャッチアップし、都度必要に応じて、オフショア開発の現地のメンバーや日本からの出向・出張メンバーの安全面に配慮した対策を講じていく他ありません。

前提として、政治的不確実性はバングラデシュでビジネスを行うにあたって一つのリスクです。しかしながら、政治的不確実性がある事は多くの途上国に言えることで、バングラデシュだけが特出して悪い状況ではないということを理解してください。
実際、筆者は日本とバングラデシュを行き来しながらビジネスに携わっていますが、一企業や個人が現地でビジネスを行う上での政治的要因によるリスクは現在はそれほど高くはないと感じます。

先述した与野党の対立など懸念点はありますが、バングラデシュは近年外資の参入が盛んで、現地政府も外資優遇策を取っており、今後はより政治的なリスクが低くなることが期待されています。
また、現政権が親日政権であることも、バングラデシュに進出を考えている日系企業にとっては一つの安心材料となるでしょう。

日本語コミュニケーションは、短期的にはブリッジSE、中長期的には教育で担保

MTG

オフショア開発における日本語でのコミュニケーションは、短期的にはブリッジSE(BrSE)を確保することが最も有効な対策です。

しかし、自社で優秀な日本語×ITの人材を見つけるのはそう簡単ではありません。
そのため、中長期的には自社で日本語トレーニングを提供し、日本語人材を育成することをお勧めします。

日本語トレーニングは、うまくいけば従業員のモチベーションアップにも繋がり、組織への定着を促すことができます。
短期離職がリスクとなるバングラデシュのオフショア開発において、ぜひ取り入れてほしい施策です。

小まめな進捗確認の実施で、両国の文化の違いにより発生する齟齬を防ぐ

「言わなくても伝わるだろう」という阿吽の呼吸を期待するコミュニケーションは、日本特有の文化です。そのためまずは、日本側が仕様や要望をしっかりと言語化することが大事です。
しかし、気をつけていても文化や言語の異なる国とのビジネスにおいてミスコミュニケーションは大なり小なり避けられないでしょう。
そのため、ミスコミュニケーションは発生してしまうものとして、いかにそれを防ぎ、齟齬が発生した場合も最小限に留めるかが重要です。

そのためには、密なコミュニケーションと小まめな進捗確認が最も有効です。
初期段階で互いの役割分担を明確にし、進捗管理を日々行うことを取り入れるべきです。
また、プロジェクトの一部だけでなく全体像やその目的、自身の仕事がプロジェクトにどのように寄与するのかを相手にしっかりと理解してもらうことも大切です。

信仰に対する理解と配慮、その上で余裕をもったスケジューリングを

ベンガル語書籍

バングラデシュでビジネスを推進する上で、イスラム教に対する理解と配慮が大前提として重要です。
しかしまだあまり知られてはいませんが、実は近年日系企業が徐々にバングラデシュに進出している事から、日本の営業日に合わせた出勤体系を取るなど、他国の慣習や文化に合わせて働いている人も増えつつあります。
一概にイスラム教に全てを合わせるべき、というわけではありませんが、イスラム教徒の生活を理解した上でオフショア開発を進める事業所のルールを設計していく必要があります。

またこのような就業に関するルールだけでなく、プロジェクトの納期や進行スケジュールに余裕を持たせるなどリスクヘッジのための策を取ることも有効です。

デメリットを踏まえてでも自社はバングラデシュに進出すべきか?

バングラデシュのオフショア開発のデメリットと対策について説明しました。
デメリットを踏まえてでも自社がバングラデシュのオフショア開発に取り組むべきかは、企業によって異なります。

当社は、17カ国以上のアジア各国でビジネスを手がけてきたコンサルタントがバングラデシュ進出をサポートします。

当社の初回無料カウンセリングでは、貴社の海外進出先にバングラデシュが適しているかや、バングラデシュ進出における貴社特有のリスクについてアドバイスを差し上げることが可能です。まずはぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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