現代のビジネス環境において、オフショア開発の活用は多くの日本企業にとって重要な戦略となっています。コスト削減や人材確保の面で大きなメリットをもたらすと言われているオフショア開発ですが、近年の円安傾向により新たな課題も浮上しています。
円安が加速する中、海外企業との取引におけるコストの上昇は避けられません。しかし、この状況下でもオフショア開発は依然として有効な選択肢となり得るのでしょうか。
本記事では、円安がオフショア開発に与える影響を考えていきます。貴社のビジネスの意思決定の際の参考になれば幸いです。
Contents
オフショア開発とは
まず、オフショアリング(Offshoring)とは、企業が業務の一部分もしくは全体を海外に移すことをいいます。
オフショア開発とは、企業が自国以外の国にソフトウェア開発やIT関連の業務を委託することを指します。
以下に、オフショア開発の主な特徴と利点を説明します。
オフショア開発のメリット
オフショア開発には以下のようなメリットがあります。
開発にかかるコストを削減できる
コスト削減は、オフショア開発における最も重要なメリットの一つです。
日本国内のIT人材の年収は年々上昇傾向にあり、さらに物価上昇も加わって、多くの企業にとってコスト削減が喫緊の課題となっています。
オフショア開発を活用し、日本よりも人件費や事業関連コストの低い国で開発を行うことで、大幅なコスト削減が可能になります。
オフショア開発の人気進出先であるベトナムやフィリピンでは、IT人材の人件費が日本のおよそ半分程度です。人件費が半減することで、プロジェクト全体の収益性に大きな好影響をもたらすことが期待できます。
スムーズな人材採用が可能に
オフショア開発は、国内で確保が難しいIT人材の効率的な確保ができます。
日本のIT人材不足は深刻で、多くの企業が人材確保に苦心しています。
これまでオフショア開発の主な目的は「コスト削減」でした。しかし、2023年版『オフショア開発白書』のユーザー企業実態調査によると、オフショア開発の検討理由に大きな変化が見られました。
長年首位だった「コスト削減」に代わり、「リソース確保」がトップとなったのです。この変化は、オフショア開発を取り巻く環境の最新動向を如実に表しており、業界にとって重要な転換点と言えるでしょう。
オフショア開発の人気国では人口増加に伴い若い労働力が豊富です。さらに、これらの国々では将来性豊かなIT業界に興味を持つ若者が多く、日本と比較して人材確保がはるかに容易です。
このような環境下で迅速に人材を確保できることは、日本企業にとって大きな利点となります。採用プロセスにかかる時間と費用を大幅に削減できるだけでなく、人事部門の負担も軽減されます。結果として、企業全体の業務効率が向上し、本来の事業活動の注力にも繋がります。
開発リソースの柔軟な調整が可能
一般的なオフショア開発のメリットとしてあまり挙げられないかもしれませんが、人材の柔軟性は大きなメリットです。
同じシステムを開発していても、サービスのフェーズや機能が変われば当然必要なスキルも変わります。
日本では、都度必要なスキルを持った人材を配置するべくSESや業務委託を選択する企業も多いですが、これは事前に計画性を持って動かなければ、プロジェクト開始時期になっても必要な人材が確保できないといったリスクが上がってしまいます。
オフショア開発のラボ型契約であれば、柔軟な調整が可能です。
もちろん度合いはそのオフショア開発企業によって異なりますが、ラボ型開発であれば月単位での稼働時間内で柔軟なアサインが可能なケースが多いです。例えば、今月まではPHP、来月からJavaのエンジニアをアサインするといった事が一つの契約内で可能になるイメージであったり、ブリッジエンジニアは半人月のみアサイン等の調整が可能なケースが多いです。
ラボ型契約であれば、必要な時に必要な人数やスキルを持つ人材を随時アサインすることができるため、変動するニーズに対して迅速かつ効率的に対応できるのが魅力です。
円安によるオフショア開発への影響
このように、オフショア開発には多くの魅力がある一方で、円安の影響を懸念する声も少なくありません。
円安は一般的に輸出に有利で輸入に不利に働く傾向があります。オフショア開発は実質的に「サービスの輸入」と捉えられるため、円安がネガティブな影響を及ぼすのではないかという疑問は当然のものです。
ご懸念の通り、円安がオフショア開発に与える主な影響は「コストメリットの低下」と言えるでしょう。
この「コストメリットの低下」が具体的にどういう状況なのかを考えていきましょう。
オフショア開発の依頼料金が上がる
まず、相対的にオフショア開発に携わる海外のIT人材の人件費が上がるため、当初の想定よりも高い価格での開発依頼となることが考えられます。
またオフショア開発企業によっては、為替レートによって日本のクライアント企業側の金銭的負担が上がるため、契約が短期になることや料金未収などのリスクを見込んで、リスクヘッジとして保守的な見積もりを提示されることもあり得ます。
実際の支払い金額が当初の予算を上回る
オフショア開発企業には米ドルでの受け取りを希望する企業も多いです。
円安は他の通貨に対して円の価値が下がっている状態であるため、日本企業が海外企業との取引をする際により多くの円が必要になります。
予算確保時期から円安がさらに進めば、当初の予算よりも支払額が増えるため予算超過のリスクが考えられます。
また円での取引の場合も請求時には為替状況に応じて請求額を調整する事が多いため、円だからといって日本のクライアント企業側のコスト負担が軽減される事も特にありません。
依頼内容の合意の難易度が上がる
システム開発を企業に依頼する際は、事前に社内で予算を確保してから開発を依頼するのが一般的です。
日系企業の社内の予算確保は日本円のケースがほとんどですが、バッファを持たせていない予算でオフショア開発企業に発注した場合は、依頼内容の合意の難易度が上がることが考えられます。
円安が加速するとドル換算した際にその金額内でできることが純粋に減ってしまうため、都度オフショア開発企業との契約内容のすり合わせが必要になるためです。
オフショア開発企業の稼働人員が数名であれば、クライアント企業側にとって大した差額ではなくとも、数十人の稼動や長期契約となるとコストインパクトも大きくなります。
また、都度依頼内容やボリュームのすり合わせが発生すると、その分開発スケジュールにも影響が出てきてしまうため注意が必要です。
円安の状況下でも、オフショア開発に取り組むべき理由
上記のような円安のネガティブな影響を考慮しても、日本企業がオフショア開発に取り組む価値は果たしてあるのでしょうか?
その度合いは企業や外的環境によって変わるものの、円安状況下で日本企業がオフショア開発に取り組む価値は依然として高いと言えるでしょう。
円安の状況下でも、オフショア開発に取り組むべき理由を以下に述べます。
人材を効率的に確保でき、柔軟に調整できる
冒頭でお伝えしたオフショア開発のメリットの通り、日本国内ではIT人材の不足が深刻な問題となっています。コストメリットが薄くなったからといって日本国内にターゲットを絞ったところで、現実的には人材採用に苦戦する企業が多いと予想されます。
オフショア開発であれば、グローバルな人材プールにアクセスでき、必要なスキルを持つ開発者を効率的に確保しやすいです。
また、日本は、終身雇用制の伝統や法律や社会規範により、労働市場の流動性が比較的低いと言われています。労働市場の流動性の低さは、企業にとって適材適所の人材配置を困難にする可能性があることも否めません。
一方、オフショア開発では、チームのスキルやボリュームを柔軟に調整しやすいという利点があります。
開発体制の時間と地理的分散によるリスクヘッジ
日本にも開発拠点を置いた上でさらにオフショア開発拠点を設ける場合、時差を活用して24時間の開発サイクルを実現できる可能性があります。これにより、開発速度を向上させることが可能です。
通常時の開発速度向上も大きなメリットですが、二カ国での協力により時差を活用して24時間体制で緊急対応が可能になることは、企業にとって大きな安心材料となるでしょう。
さらに、開発リソースを地理的に分散させることで、自然災害などのリスクに対する耐性も高めることができます。
依然として高いコストメリット
円安でコストが上昇しても、現時点で人気のあるオフショア開発国の場合、依然として国内開発よりコストパフォーマンスが高い可能性が高いです。
為替に関係なくIT人材の人件費は世界的に高騰傾向ではあるものの、オフショア開発の人件費はベトナムで日本の約2分の1、バングラデシュで日本の約3分の1〜2分の1です。
短期、中期視点で見れば、コストメリットは十分にあると言えるのではないでしょうか。
特に大規模システム開発やWebサイト制作では、オフショア開発のコストメリットが維持される可能性が高いでしょう。
円安時代にバングラデシュでのオフショア開発という選択
このように、円安でもオフショアを選択すべき理由は多くあります。
一方で、日本の経済状況を踏まえると、以前よりも慎重に国や依頼する企業を検討する必要性が増しているのは事実です。
オフショア開発の依頼先、進出先として、これまではベトナムやフィリピンが人気でしたが、今バングラデシュが注目を集めています。
バングラデシュの人件費は他のアジア諸国と比較しても安価であり、円安下でも費用対効果が高くなりやすいです。
また、優秀で英語力も高いIT人材が豊富など、コスト以外でも魅力的な点が多いです。
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まずはぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。