バングラデシュの治安と安全対策について、ダッカ在住の日本人女性が解説

バングラデシュは現在、外資の投資を増やすべく外資企業を積極的に誘致しています。
実際、日本からもライオンやアートネイチャーなど名の知れた企業が進出しています。

また、日本とバングラデシュ間の直行便(成田~ダッカ間)が2023年9月より再開したこともあり、今後より多くの人が、ビジネスや旅行など様々な理由でバングラデシュに渡航するでしょう。

バングラデシュに行く際、治安が気になる方も多いと思います。
この記事では、実際にバングラデシュのダッカで生活をしている日本人女性がバングラデシュの治安情報と対策を説明します。
外務省や大使館など信頼できる情報をベースに、自身の経験も織り交ぜながら、気を付けるべきエリアや注意すべき犯罪、防犯対策などを説明します。
この記事を参考に、バングラデシュの旅を安全なものにしてください。

バングラデシュの治安について、危険レベルとポイント

まず、バングラデシュの治安について外務省の海外安全ホームページを見ていきましょう。
なお危険情報は日々変化するものなので、渡航日程が明らかになったら小まめに以下のページを確認することをお勧めします。
外務省 海外安全ホームページ バングラデシュの危険情報

外務省のバングラデシュ危険情報

バングラデシュ全土の治安はレベル1(十分注意してください)

現在、特定の地域を除くバングラデシュ全土の危険情報はレベル1となっています(2024年7月時点情報)。
レベル1は、その国・地域への渡航、滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要という事を指します。
海外安全ホームページではレベル1の理由について以下のように説明されています。

バングラデシュでは、2019年から2020年にかけて治安当局を標的とする爆弾テロが散発的に発生したほか、2023年にはバングラデシュを拠点とする新たな過激派組織が確認されるなど、依然としてテロの脅威が排除されていません。
政権与党に対するデモ・抗議活動も多く確認され、2022年12月にはダッカ市内で警察と最大野党であるバングラデシュ民族主義党(BNP)の活動家らが衝突し、複数の死傷者が発生しました。
また、2024年1月に実施された総選挙に至る過程においても、野党による抗議活動が行われ、死傷者を伴う暴力が発生しました。総選挙後の情勢は概ね落ちついているものの、野党による抗議活動などの可能性もあり、引き続き治安情勢には十分注意が必要です。

外務省 海外安全ホームページ バングラデシュの危険情報(2024年7月時点)

チッタゴン丘陵地帯はレベル2(不要不急の渡航は止めてください)

バングラデシュ全土はレベル1ですが、チッタゴン(チョットグラム)や丘陵地帯(カグラチャリ県、ランガマティ県、バンドルボン県)はレベル2で指定されています。
これは不要不急の渡航は止めてくださいということを指します。
海外安全ホームページではレベル2の理由について以下のように説明されています。

チッタゴン(チョットグラム)丘陵地帯では、仏教系少数民族が多数居住していますが、民族対立等が依然として未解決です。バングラデシュ治安部隊によるチッタゴン丘陵地帯でのテロ掃討作戦のため、ミャンマー国境の一部で渡航制限が継続されるなど、治安情勢が不安な状態が続いており、引き続き警戒する必要がありますので、同地帯への不要不急の渡航は止めてください。

外務省 海外安全ホームページ バングラデシュの危険情報(2024年7月時点)

バングラデシュで起こりうる犯罪、事故

バングラデシュで起こりうる犯罪、事故

バングラデシュで被害に遭う恐れのある犯罪や事故は何が挙げられるでしょうか。

テロ

まず、テロが挙げられます。
バングラデシュでは、過去、各地で外国人やイスラム教スンニ派以外の宗教信者、治安当局関係者等が標的となるテロ事件が相次いで発生しました。
これまで日本人被害者も出ており、2016年のダッカ襲撃テロ事件では殺害された20名以上の被害者のうち7名が日本人でした。

2016年以降は外国人を標的としたテロ事件は発生していないものの、油断はできません。
過激派組織の拠点から爆弾や爆弾の原材料等が押収される事案は現在も生じていますし、2023年にはバングラデシュを拠点とする新たな過激派組織2団体が確認されました。

テロ情勢は引き続き注視していく必要があると言われています。

デモ・ストライキ

2024年1月の総選挙では、選挙前に野党による政権与党への抗議活動や反政府運動が連日のように行われ、死傷者を伴う暴力が発生しました。
選挙後の政治情勢は概ね平穏に推移しているものの、今後野党が再選挙を要求する抗議活動を行う可能性は十分にあり、引き続き治安情勢の注視が必要です。

また、特定の主張や抗議の意思を集団で主張する行為は、デモ・ストライキだけとは限りません。
例えば2024年1月の選挙目前に発生した急行列車の火事は、野党を支持する何者かが放火したことにより起きたのではないかと言われています。

詐欺・ぼったくり

バングラデシュでは、詐欺・ぼったくりがとても多いです。
日本女性である筆者も、実際頻繁にぼったくりの被害に遭っています。
バングラデシュの都市での移動は、自転車タクシーのリクシャや、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas:CNG)を燃料とした緑色の三輪車であるCNGを利用することが多いですが、こういった乗り物のドライバーはほぼ100%上乗せ請求してくるので注意してください。
また衣料品を扱うアパレルショップでもぼったくり被害に会うことがとても多いように思います。

ポイント

また治安の話とは少し離れるかもしれませんが、バングラデシュではあらゆるところに物乞いの方がいたり、お花や風船の押し売りがあるので、それも気に留めておくといいかもしれません。

スリ・ひったくり

筆者はまだ被害にあったことはありませんが、バングラデシュではスリやひったくりも多いです。
夜の繁華街など人の多い場所でのスリや、逆に人気の無い道でのオートバイ犯によるひったくりが起こっています。
スリ・ひったくりは日中よりも夜間の方が圧倒的に多いです。バングラデシュの人々は夜に活動することが多く、夜になると街は人で混雑します。そのため、スリを狙う犯人にとって夜の街が絶好のチャンスの場となるのです。

安全地帯

このような犯罪に巻き込まれないようにするために、どういった対策を取るべきか見ていきましょう。

危険なエリアや場所に近づかない

まずは、危険なエリアや場所に自ら近づかないことが大事です。
テロが多発しやすい地域や、暴動やデモが頻発するエリアなど、外務省や大使館が危険と指定する地域に近づかないようにしてください。
渡航前だけでなく、バングラデシュ滞在中も滞在地域の最新の治安状況や警備体制を確認することが重要です。

スマホを持った女性

外務省の海外安全ホームページでは、外国人が多く集まるレストラン、欧米関連施設、政府施設、公共交通機関、観光施設、宗教施設、警察署、ショッピングモール、公立学校や市場などテロの標的となりやすい場所への訪問を控えることも推奨されています。
これらの場所を訪問する必要がある場合には、滞在時間を短くしたり、避難経路を確認しておく等、必ず安全対策をとるようにしてください。

治安状況に応じて、外出を避ける

国全体の緊張感が高まる選挙期間や、宗教行事、季節的行事、大規模イベントが開催される期間に不要な外出をしない事も重要です。
バングラデシュへの渡航時期を自身で調整できる場合は、治安悪化が懸念される時期は渡航を控えるようにしてください。

また治安状況に限らず、現地では早朝・夜間に単独で外出しないようにすべきでしょう。
特に、女性の単独外出については早朝・夜間は必ず避けるようにしてください。
筆者も、単独での外出は必ず昼間にするようにしています。

早朝・夜間は痴漢や誘拐などの犯罪に巻き込まれる可能性がどうしても高まります。
これは、移動を徒歩や公共交通機関ではなくタクシーにするから安心、ということでもありません。
タクシーに夜間乗客1人で乗車して別の場所に連れていかれ、犯罪に巻き込まれる可能性も否めません。

また時間帯問わず、女性は外出時服装に配慮して、なるべく肌を見せない方が安全です。
バングラデシュはイスラム教圏のため、女性はあまり肌を露出しない傾向にあります。
できれば現地では、パンツスタイルや丈が長めのワンピースなど、腕や脚の露出を控えたコーディネートにしてください。

ストールを被った女性

さらにスカーフやストールなどで首や頭をカバーするのもおすすめです。
ちなみに、バングラデシュ人はカラフルな色を好む傾向があり、洋服も華やかな色のものを好んで着用しているので、服の色については特別気にする必要はないように思います。

状況に応じて移動手段を変える

バス、電車などの公共交通機関は利用しないのも一つの防犯対策となるでしょう。

野党派の国民による政治騒動で、人々が学校や企業に行くのを止めたり、電車やバスなど公共交通機関を止めたりする過激なストライキ運動をハルタルといいます。
ハルタルは以前と比べると最近は少なくなっていますが、2024年総選挙の前には頻発しました。

また、夜行バスは、交通事故の危険に加え、強盗団(ダコイト)から被害を受ける可能性が非常に高まります。

公共交通機関を利用しないことは上記のリスク回避にも繋がります。
筆者もバングラデシュでは基本的に公共交通機関は利用しないようにしています。
なお先述の通り公共交通機関でなければ安全という訳ではないので注意してください。
リクシャ、CNG、一般タクシー、また日本でも普及しているUberでもリスクはあります。公共交通機関でなくとも夜間、早朝は外出を避けましょう。

貴重品はむやみに持ち歩かない、見せない、離さない

筆者はスリの経験はありませんが、在バングラデシュ日本国大使館の安全の手引き(令和6年2月)において、外国人居住地区内のマーケットやニューマーケット、グリスタン(国立競技場) の2つのマーケット地区で通行人を狙ったスリ、ひったくりなどが多発している事も報告されています。

スリの被害を避けるために以下のような基本的な自衛は必要です。

  • 貴重品はかばんの中にしまって行動する
  • 大金を持ち歩かない
  • 狭い路地や人が多い所では体の前に荷物を持ってくる

ひったくり対策のためには、バッグは道路側とは反対側の手に持つことが重要です。
万が一、ひったくりに遭った際には、引きずられて怪我をしないようにすることも大事です。

アプリや固定価格販売店を活用してぼったくり対策を

ぼったくり防止のためにできる対策について説明します。

タクシー

まず、車両移動についてはUberなどの配車アプリの利用が明朗会計のため安心です。
道端のリクシャ、CNG、一般タクシーだと、都度ドライバーたちとの値段交渉が必要になってしまいます。筆者は都度交渉をして利用していますが、これは現地相場を把握していなければ難しいため、短期滞在の場合は現実的でないかもしれません。
相場を無視して交渉すると、ドライバーが納得できない料金の場合乗車ができなくなるので注意が必要です。

続いて、買い物についてです。
買い物は、Fixed priceと書いてあるような固定価格販売をしているお店の利用をおすすめします。
言い値で販売しているお店は、適正価格の2~3倍で提案してくるところが多く、そのため多少値切れたとしても結局適正価格よりも高く支払っているケースも少なくありません。
それでもバングラデシュは物価が安いため、旅行者や短期滞在の方はそこまで経済的なダメージを受けないかとは思いますが、上記を頭に入れておくといいでしょう。

筆者は現地の衣料品の調達の際は、固定価格のお店に行くようにしています。
AarongArtisanといったチェーン店を好んでよく利用します。
また、Yellowというお店も固定価格かつチェーン店なので、安心して買い物ができ、お勧めですよ。

緊急時に備えて現地の緊急連絡先情報を事前登録する

電話をする女性

緊急時に備えて、緊急連絡先を記録、登録しておく事も防犯対策の一つです。

バングラデシュの警察の番号は999です。
また以下の在バングラデシュ日本国大使館の安全の手引きの25ページより、ダッカ市内警察署一覧もあるので参考にしてください。

在バングラデシュ日本大使館 安全の手引き(令和6年2月)

また、在バングラデシュ日本国大使館の連絡先は以下の通りです。

  • 電話 (市外局番02)222260010
  • 国外からは(国番号880)-2-222260010
  • 緊急電話(国番号880)-961-0998492

防犯対策をしてバングラデシュ滞在をより良いものに

バングラデシュの治安概況と安全対策について紹介しました。
基本的な安全対策をした上で、現地でもしっかりと危機管理をし、バングラデシュでの滞在を安全で良いものにしてください。

注意

※記載の情報が最新ではない可能性があります。最新情報は必ず外務省のホームページなどでご確認ください。
外務省 海外安全ホームページ

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