Digicon Technologies PLCは、経済成長が著しいバングラデシュのIT・BPO業界を牽引する最大手企業の1社です。Digicon Technologies PLCのChairmanであるAzim氏に、バングラデシュのITやBPO市場の現状、日系企業がバングラデシュ市場に進出する事のメリットや注意点について、弊社Social ZeroのCEOがダッカ市内でインタビューを行いました。
写真右から
- Soham氏 / Digicon Technologies PLC / Assistant Vice President
- 西川 / Social Zero Inc. / CEO
- Azim氏 / Digicon Technologies PLC / Chairman
- 棚橋 / Social Zero Inc. / Content Creator
Contents
バングラデシュのITやBPO企業の現状
まず初めに、バングラデシュのITやBPO業界の現状について教えてください。
(Azim氏) バングラデシュは急成長している国であり、現在多くの若者が市場に参入しています。彼らはITのバックグラウンドを持って大学を卒業し、バングラデシュのサービス業界やBPO業界を支えています。また、政府の2041年までのビジョンである「スマートバングラデシュ」の推進により、現在、弊社を含め業界は大きな変革期を迎えています。
政府部門だけでなく民間部門にも多くの自動化が導入されており、2041年に向けたスマートバングラデシュのビジョンのもと、自動化やプロセスの最適化、AI、機械学習、チャットボットなどの最先端技術が急速に普及しています。これらの技術は政府部門にも導入され、プロセスの効率化と最適化を図っています。
私は非常に大きな潜在力を感じており、実際に現在のサービス産業は急速な成長を遂げています。これは数字的にも急増している最大セクターの一つです。このセグメントではBPOが非常に重要な役割を果たすことができます。
さらに付け加えたいこととして、大学を卒業したばかりの若者たちは大きな才能を持っています。彼らがITセクターで働くチャンスを見つけることができれば、その潜在能力を十分に発揮することができるでしょう。
そして、私たちはこの潜在能力を有していることを証明でき、インド、ベトナム、フィリピンなどの隣国と十分に競争できると考えています。
バングラデシュ市場の魅力や日本企業が進出するメリット
バングラデシュ現地企業から見て、バングラデシュ市場の魅力や日本企業が進出するメリットについて教えてください。
(Azim氏) バングラデシュ市場において、日本企業が受けるメリットは多岐にわたります。リソース面の利点に加え、政府も多くのインセンティブを提供しています。
例えば、輸出向けのITサービスソフトウェアや公立学校向けに、政府は大きなインセンティブを用意しています。また、政府は既に3つのテクノロジーパークを稼働させており、さらに8つを建設中です。
これらのテクノロジーパークの目的は、外国企業が自社でインフラを整備する必要なく、リソースとシステムを持参するだけで、すぐに業務を開始できるようにする事です。つまり、「プラグアンドプレイ」方式が可能だということです。
日本企業等の外資系企業がハイテク産業でオフィスを開設する際には、税制面での優遇措置も受けられます。これも大きな利点の一つです。
さらに、バングラデシュでは毎年約1万人の新卒者が労働市場に参入しています。これらの若い人材にチャンスを与えることができれば、日本企業にとっても魅力的なポイントとなるでしょう。
加えて、バングラデシュの労働コストは、インド、フィリピン、ベトナムなどの隣国と比較しても非常に競争力があります。
バングラデシュで日系企業や外資系企業がビジネス展開をしていく上での注意点
逆に、バングラデシュで日系企業や外資系企業がビジネス展開をしていく上での注意点は何がありますか?
(Azim氏) 日本のような外資系企業がバングラデシュでビジネスを開始する際、事業者登録を含め、ビジネスに関わる全ての政府機関の承認を得る必要があります。
これらのプロセスにおいて、いくつかの機関が長期間を要することがあり、これが現時点での主な注意点と言えるでしょう。
例えば、VAT認証の取得を考えてみましょう。VAT認証はすべてオンラインで申請できますが、処理に予想以上の時間がかかることがあります。
また、外国企業は事業創業にあたり、バングラデシュ投資開発庁(BIDA)に登録し、BIDAを通じてワンストップサービスを受けることになります。しかし、手続きの複雑さから、予想よりも許可取得に時間がかかる場合があります。ただし、これはプロセスの一部として理解すべきでしょう。
これらの点を除けば、他に大きな課題は見当たりません。
日系企業が現地法人設立などでバングラデシュに進出し成功するには
日系企業が現地法人設立などでバングラデシュに進出し成功するには、どのようなことが必要だと考えますか? 例えば、マインドセットや戦略などです。
(Azim氏) まず、マインドセットについて述べたいと思います。日本企業がバングラデシュに進出し、自社のオフィスを開設して事業を成功させるためには、マインドセットは非常に重要な要素となります。
私は、日本企業は「柔軟に適応する」マインドセットを強化する必要があると考えます。
海外企業がバングラデシュで現地法人を立ち上げる場合、従うべき特定のプロセスがあります。このプロセスを円滑に進めるには、高い適応性が求められます。日本とバングラデシュの文化には違いがあり、これが時に課題となることがあります。
バングラデシュ人は独自の方法でプロセスに従いますが、日本人はこのプロセスを最適化するために異なるアプローチを取るかもしれません。そのため、適切なシナジーを生み出すことが重要になります。
両国間の文化的な違い、教育システム、その他多くの要素を考慮する必要があるため、シナジーの創出には時間がかかることもあります。しかし、適切なシナジーが創出できれば、事業は順調に進展していくでしょう。
日本企業がバングラデシュに進出する際は、ビジネスを創造し推進するために柔軟に適応するマインドセットが不可欠です。これには時間がかかることもありますが、人々が適切にエンゲージメントし、適切に配置されることが重要です。
ありがとうございます。私自身もアジア各国でビジネスをしてきましたが、日本と他国のマインドセットには大きな違いを感じます。
戦略面ではいかがでしょうか?
(Azim氏) 各国にはそれぞれの強みやレギュレーションがあります。同様に、バングラデシュでは良い関係を築くことが非常に重要です。戦略というより、これはバングラデシュでビジネスを成功させるための必須要素です。 私たちのパートナーは優れたネットワークを持っており、私たちが行くどこでも適切な会社や人々を紹介してくれます。これが私たちのビジネスを多角化する方法です。また、エンドユーザーとの関係を築くことが必要です。これらの関係を通じて、私たちはエンドユーザーに対して私たちの専門的な強みを示すことができ、それが目標達成の可能性を高めることにつながります。これが成功の鍵です。素晴らしい製品を持っていても市場で影響を与えられなかった企業の例があります。まさにこの点で、良好な人間関係が重要な役割を果たします。バングラデシュでビジネスを確立し、現地に適応することがこの点で非常に重要です。
確かにバングラデシュの方々は繋がりをとても大事にされていますし、そこから新たなビジネスチャンスやアイデアが生まれる事も多いですね。日本では、この点を軽視する企業や経営者も少なくありませんが、バングラデシュでは必要不可欠な要素であるように感じます。逆にAzimさんから見て、バングラデシュに進出する企業が抱える課題や陥りがちな失敗にはどのようなものがあると思いますか?
(Azim氏) まず第一に、正しいビジネスパートナーを選ぶことが非常に重要です。これが主な焦点であるべきです。パートナーにはそれぞれの考え方があります。長期的なビジョンを持ち、着実な成長を信じている人もいれば、「ここに時間を投資したのだから、すぐに利益を得たい」と考える人もいます。したがって、正しい考えを持つ適切なパートナーを見つけることが極めて重要です。これは特に注意すべき点です。外国企業がバングラデシュで事業を登録する場合、多くの政府機関から多くの許可が必要とされます。適切なパートナーはこのプロセスを加速させることができます。ですから、パートナーは賢く選んでください。
確かに、新たな市場でビジネスを行う際にパートナーは非常に重要ですね。私自身も様々な国で事業を担当してきました。その経験から、現地の信頼できるパートナーがいると、物事が本当にスムーズに進むことを何度も実感しています。
(Azim氏) その通りですね。長期的なビジョンを持つ適切なパートナーが必要です。時にはすぐに利益を求める人もいますが、長期的なビジョンがなければこの国ではうまくいきません。パートナー同士が共通の目標に向かって協力することが成功の鍵です。着実な成長を信じてくれるパートナーを見つけることが重要です。
たとえば、弊社Digiconは常に持続可能な成長を伴う長期的な計画を信じています。
逆に言うと、すぐに多くのお金を稼ぐための急な飛び込みの姿勢は一切取りません。この長期的な持続可能な成長のビジョンで私たちはこの道を13年間歩んできました。
最後に
最後にバングラデシュ市場への進出に興味がある日系企業に向けて、メッセージをお願いします。
(Azim氏) 日本の企業の皆様に最も伝えたいメッセージは、バングラデシュはおもてなしの心を持つ人々で溢れているという事です。長期にわたる日本とバングラデシュの二国間関係のおかげで、私たちは日本の人々をいつでも心から歓迎します。
次に、バングラデシュの若い世代は非常に機敏で、新しい技術や新しいことに対しての適応力があります。そして、彼らは非常に謙虚であり、かつ質素なバックグラウンドを持っているという事です。
教育や家庭環境へのサポートは彼らにとって大きな支えとなります。これは日本企業の皆様がバングラデシュ人と協力関係を築く上で大事かもしれません。
さらに、バングラデシュ政府は外国からの投資を促しており、外資系企業にインフラを築いてもらうよう奨励しています。そのため、バングラデシュは現在、外資系企業に非常にビジネスフレンドリーな国となっています。BIDAも非常に寛容で、外国企業が参入するときはワンストップサービスを提供します。バングラデシュで現地法人や支社などを立ち上げ新たな事業を運営することのハードルは以前と比べ大いに下がりました。これは日本の皆様にとっても安心材料になるのではないでしょうか。
最後にもう一つ、品質基準についてです。
バングラデシュの品質基準は、良い意味で世界の他の地域とは異なる独自の特性を持っています。私たちが保有するスキルセットと日本企業の力を掛け合わせてシナジーを創出する事ができれば、世界的に認知される私たち独自の品質基準を築くことができるのではないでしょうか。
本日はお忙しい中、インタビューを受けてくださりありがとうございました。
インタビュー企業
- Digicon Technologies Ltd.
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Digicon Technologies Ltd. はバングラデシュの大手アウトソーシング組織であり、BPO および IT・ITES ソリューションの分野で業界をリードしている企業です。
同社のダイナミックなソリューションは、世界的有名企業から政府機関まで多くのクライアントに提供されています。
https://digicontechnologies.com/ - Social Zero株式会社
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“Social Zero”は「社会的なゼロ地点」を象徴し、新しい社会的な動きや変化の始点を意味します。 数多くの海外事業立ち上げを経験したメンバーやDX Agencyで長年の経験を積んだエンジニア、デザイナー、マーケターが在籍しており、多様な文化への理解と尊重を基に、海外進出支援サービスや海外プロモーションなど世界中のビジネスと文化を繋ぐサービスを提供します。
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