日本国内において、エンジニアをはじめとするIT人材の需要は増加の一途を辿っており、それに伴い企業間の採用競争は年々激しさを増しています。良い人材がなかなか採用できないとお悩みの企業も多いでしょう。
また、IT人材の需要増に加え、近年の物価高騰等の要因も重なり、人件費の増加に危機感を持つ企業も多いです。
日本の受託システム開発会社やSIer、自社プロダクト開発を内製化している企業にとって、オフショア開発はコストを下げながら優秀なIT人材を集めることのできる魅力的な選択肢の一つです。
オフショア開発の進出先としては、ベトナムやフィリピン、インドなどが人気ですが、現在急速にバングラデシュに注目が集まり始めています。
この記事では、アジアを中心とした17カ国以上の海外事業支援実績を有するコンサルタントが、オフショア開発の進出先としてバングラデシュが選ばれている理由や、バングラデシュでのオフショア開発のメリットについて解説します。
Contents
バングラデシュ人民共和国について
まず、バングラデシュの基本データから見ていきましょう。
人口
バングラデシュは人口約1.7億人の国で、2024年時点で世界第8位の人口規模を誇ります。
人口増加は現在でも続いており、特に首都であるダッカの人口増加率が顕著です。
主要言語
公用語はベンガル語です。英語を話せる人も多く、バングラデシュ全体の人口のうち約20パーセントが英語を話します。
日本の英語話者割合が約10パーセントであることを踏まえると、バングラデシュの英語話者の多さが想像できるでしょう。
宗教
2022年のバングラデシュ統計局データによると、イスラム教徒が91%、その他(ヒンズー教徒、仏教徒、キリスト教徒)が9%となっています。
日本国内では、イスラム教徒は約700人に1人といわれており、身近にイスラム教徒がいる方は多くはないかと思います。
日本ではあまり馴染みがないかと思いますが、イスラム教は、仕事中でも時間になれば礼拝をし、時期が来れば断食(ラマダン)にも取り組みます。
バングラデシュでビジネスを展開する上では、このようなイスラム教の教えや習慣を理解し、配慮することが必要です。
今、日本企業のオフショア拠点としてバングラデシュが急速に注目されている理由
システム開発会社やSIerのオフショア拠点としては、近年ベトナムやフィリピンが人気でした。オフショア開発白書(2023年版)のオフショアの検討先の国別割合を見ても、ベトナム・フィリピン・インドだけで全体の80%を超えています。
現在バングラデシュに進出している日本企業も2023年1月時点で338社(JETRO調べ)とそれほど多くなく、かつ業種も製造業や建築業がメインです。
それにもかかわらず、なぜ今日本企業のシステム開発のオフショア拠点としてバングラデシュが注目され始めているのでしょうか。
ベトナム・フィリピン・インドなどアジア各国における人件費の高騰
直近、アジア主要国において人件費の高騰をリスクと捉える日系企業が増加しています。
以下の図を見ていただくと、ベトナム・フィリピン・インド全ての国で人件費が上昇傾向にあることがわかります。
例えばベトナムでは、2018年から2023年までに約20~30%月額基本給が上昇しています。ちなみに、グラフには記載がないものの2013年から2023年においては2倍を優に超える上昇率です(2023年の為替差を考慮、日本円換算)。
このようにアジア各国の人件費が高騰しつつあるため、バングラデシュの人件費の安さが相対的に際立ち、オフショア拠点や海外進出を狙う企業にとってバングラデシュの魅力が上がってきています。
スマートバングラデシュ・デジタルバングラデシュによる優秀なIT人材の急増
バングラデシュが世界第8位の人口(1.7億人)を有する国であることは先述の通りです。
さらに、バングラデシュは1990年代以降、生産年齢人口(15~64歳)比率が上昇する「人口ボーナス」期を迎えており、ピーク時の人口は2億人を超えると予想されています。
また、同国政府はスマートバングラデシュ・デジタルバングラデシュといった政策に注力し、プログラミングやソフトウェア開発のスキルを持った人材の育成にも積極的に取り組んできました。
これらのIT教育を受けた卒業生の中には現在世界で活躍している人もいます。
また、国内には現在すでに60万人のITスキルを有するフリーランサーがいると言われています。
豊富な若い労働力がベースにあり、国を掲げてIT教育に注力しているバングラデシュでは、今後優秀な若手のIT人材がより増加していくと考えられます。
もちろん、ベトナムやフィリピンにも優秀なIT人材は多くいます。しかしながら、フィリピンやベトナムで実際にビジネスに携わる中で、現地では『人材の取り合い』が既に起き始めており、企業の人材確保の難易度が顕著に上がってきているのを感じます。
そのため、人材確保においてまだ穴場と言えるバングラデシュがオフショア開発拠点の次の候補地として注目されているのです。
バングラデシュのオフショア開発のメリット
バングラデシュがオフショア開発の進出国として注目されている理由について少しお分かりいただけたかと思います。
ここからはバングラデシュのオフショア開発のメリットについて解説します。
コストパフォーマンスが高い
コスト削減は、多くの企業がオフショア開発に求める必須要件でしょう。
バングラデシュは人件費が非常に安価な国です。
ベトナム、フィリピン、インドだけでなく、その他のアジア主要都市と比べても群を抜いて人件費が安いです。
ちなみに現時点でアジア主要都市の中でダッカより人件費が低いのは、ヤンゴンとコロンボだけです。
バングラデシュのオフショア開発の人件費は、日本の約2分の1です。
例えば、日本のSESで月70〜90万円の人材が、バングラデシュのラボ型開発だと月30〜40万円になります。また、日本で直接雇用した場合に月30万円程度の人材が、バングラデシュでは10〜15万円程度になるイメージです。
労働集約ビジネスの側面を持つシステム開発においては、このバングラデシュのコストパフォーマンスの高さは大きな魅力でしょう。
優秀なIT人材が豊富
スマートバングラデシュ・デジタルバングラデシュについては先ほど少し触れました。
そのような政府の後押しもあって、バングラデシュではコンピュータ関連専攻の学生が増加しており、ITフリーランサーを含め優秀なIT人材が増加しています。
集まった人材が求めていた水準に届いていない場合、たとえ単価が低くともマネジメントや教育に多大なコストを投下し続ける必要があるため、結果としてオフショア開発のコストパフォーマンスが下がってしまうことも考えられます。
しかし、バングラデシュは単価が安価である上、プログラミングなどのIT技術力も持ち合わせている人材が豊富なので、そういったリスクは他国と比べて低いと言えるでしょう。
ちなみに、バングラデシュの技術については、特にバックエンド系の人材が豊富です。
エンジニアの使用言語としてはPHPやJavaが人気です。
また、開発手法としてはウォーターフォール型よりもアジャイル型での開発が多いです。アジャイル型のような柔軟な開発手法はバングラデシュ人の国民性にもあっているように思います。
一方で、日本のスタートアップや新興企業で選択されるGoやRubyといった新言語を扱える人材は多くないという課題はあるので自社の扱っている技術との親和性は慎重に検討する必要があります。
チャレンジングではありますが、自社がバングラデシュではメジャーでない技術を扱っている場合でも、自社の希望する言語に合わせて開発体制を整えていくポテンシャル自体はあると言えるでしょう。
バングラデシュ人は自身のスキルアップに意欲的で勉強熱心な若者が多く、かつ英語で仕事ができる欧米企業への就職も人気が高まっています。自社の使用技術・言語が世界的に将来性があるものでかつ英語でのコミュニケーションが問題なく行える環境が提供できれば、実現不可能な目標ではない、というのが私の見解です。
さらに、大半のバングラデシュ開発会社の主要顧客はヨーロッパ諸国やアメリカ等がメインです。そのため、品質面に於いても上流工程から下流工程まで品質を保った体制が期待できます。
私も実際に複数の開発企業との現地商談時に事例を拝見しましたが、デザイン面を含め非常に洗礼されていて、アジア圏にありがちな低品質なUIデザインや構成は見受けられませんでした。
英語でのコミュニケーションが可能
バングラデシュでは英語を流暢に話す人が多いです。これは、過去にイギリスの植民地であったという歴史的背景に加え、バングラデシュで高等教育を受けるためには英語が必要なことが多いことが理由として挙げられます。
実際のオフショア開発プロジェクトでは基本的に英語でのコミュニケーションとなります。バングラデシュ人の英語は日本人にとって非常に聞き取りやすく、ビジネス英会話ができる方であればバングラデシュでの英語商談やミーティングで困ることは基本的にありません。
特にIT人材に関しては、授業やプログラミング自体の学習は英語で情報を得たり、バングラデシュの開発会社の主要顧客はヨーロッパ諸国やアメリカ等がメインであることから、日常的に英語でプロジェクトを進める事に抵抗が無い方が多いです。
外資・ITソフトウェア企業に対する様々な優遇措置
バングラデシュでは外資企業に対する優遇措置が多く設けられており、日本のIT・ソフトウェア企業がバングラデシュに参入する際にもその恩恵を受けることができます。
例えば、2018年にバングラデシュ政府が承認した「ICT Policy 2018」では、IT企業の法人税免除(2024年6月まで)が定められていますし、政府はこれまで工業地区(ハイテクパーク)やインキュベーションセンターを10カ所に設置してきました。
さらに、IT産業の工業地区(ハイテクパーク)、ICTビレッジ、ソフトウェア技術ゾーン、ITパークなどにIT企業を設立した場合、7年間法人税が免除されるなど多くの優遇措置を受けることが可能です。
納得のいくバングラデシュ企業進出支援パートナー選びが大事
バングラデシュのオフショア開発には魅力的なポイントが多く、今後はよりますます注目されていくでしょう。
バングラデシュのオフショア開発は2024年段階では穴場という見方ができますが、その分十分な知見のあるアドバイザー企業がまだ日本には多くないのが現状です。
当社は、17カ国を超えるアジア各国でビジネスを手がけてきたコンサルタントがバングラデシュ進出をサポートいたします。
当社の紹介無料カウンセリングでは「自社の進出先はバングラデシュが本当に最適なのか?」「バングラデシュでのビジネス展開における自社特有のリスクはないか?」など気になる点についてヒアリングしながらアドバイスを差し上げることが可能です。
まずはぜひ一度お気軽にお問い合わせください。