オフショア開発でのブリッジエンジニアの役割とは?よくある課題と解決策

オフショア開発は、日本企業が競争力を維持し、コストを削減し、技術リソースを最大限に活用するための重要な戦略といえます。しかし、オフショア開発のニーズが増す中で、オフショア開発の成功には、技術的なスキルやリソースだけでなく、効果的なコミュニケーションと適切管理が不可欠です。特に、システム開発に於けるブリッジエンジニアは、日本側とオフショアチームの間でカルチャーギャップを埋めながら円滑な連携を可能にし、プロジェクトの成功に寄与する重要な役割を果たします。

この記事では、ブリッジエンジニアが果たすべき役割や、彼らが直面する典型的な問題、そしてそれらを克服するための解決策について詳しく解説します。また、これまで多くのブリッジエンジニアとオフショア開発チームを採用から管理までをしてきた筆者の成功事例や、今後のオフショア開発に向けた実務的なアドバイスもご紹介します。

チームとのコミュニケーション

ブリッジエンジニアの役割

ブリッジエンジニアとは、日本側のチームとオフショアのチームを結びつけ、プロジェクトの成功に不可欠な役割を担う専門職です。彼らは、クライアントの要求・要件を理解し、プロジェクトの進捗を管理し、問題が発生した際には速やかに対処する能力が求められます。また、技術的な理解だけでなく、互いの言語や文化の違いやパーソナリティ等を理解し、双方のチームと円滑なコミュニケーションができるよう橋渡しの役割りを担い、プロジェクトを成功に導く非常に重要な役割を果たします。特にオフショア開発でのシステム開発におけるブリッジエンジニアの役割は、時に複雑な仕様の理解をオフショア開発チームに共有して正確な理解をしてもらう事が求められ、高度なコミュニケーション技術が求められます。

外国人との業務

ブリッジエンジニアのよくある問題とその解決策

コミュニケーションの課題

問題: 言語や文化の違いによるコミュニケーションギャップ

最も課題となりやすいのが、コミュニケーションの部分となりますが、単に語学力の問題ではなく、文化の壁の方が圧倒的に影響を及ぼしやすく、日本は世界的にも非常にハイコンテクストなコミュニケーション文化を持っており、そのコミュニケーション方法をそのまま翻訳・通訳してオフショア開発チームに共有すると多くの認識齟齬が生まれる事に繋がります。

解決策: ブリッジエンジニアの教育と現地チームとの密なコミュニケーション

このようなコミュニケーションエラーを回避する方法としては、まずオフショア開発チームとの関係性の構築から始まり、プロジェクトの期待値や互いの役割と責任の所在をプロジェクト開始前に明確にする事から始めます。ブリッジエンジニア1名とオフショア開発チーム5名の座組でプロジェクトチームを構成する場合に、ブリッジエンジニア視点では、オフショア開発チームという“面”で捉えますが、チーム1名1名に特徴がある為、それぞれへの期待値や役割と責任の範疇を明確にする事です。そこを担う役割の現地PMやリードエンジニアの役割を分担する事も有効といえます。

それに加え、プロジェクトチームごとにデイリーでのオンラインMTGやその中でのアイスブレークを設けたり、お互いのコミュニケーションの特徴を双方向で理解する事も日々のコミュニケーションの積み重ねで重要な要素となります。また、日本人特有の曖昧な表現を避け、明確な指示や情報を共有する事も必要となります。NG例としては、“よしなにやってくれ”等の表現や“いつものように”という表現は日本とは違う文化背景を持つオフショア開発チームとのコミュニケーションでは絶対に避けましょう。

プロジェクト管理の課題

問題: スケジュール管理の難しさ

オフショア開発でブリッジエンジニアは開発の進捗管理の責任を担う事が多く、開発スケジュールの遅延はオフショア開発の最も多い課題の一つといえます。

解決策: 効果的なプロジェクト管理ツールの活用とスケジュールに対する認識を理解したブリッジエンジニアの調整力

JIRA等のプロジェクト管理ツールやタスクごとのガントチャートを用いてデイリーでの進捗管理をする事が重要となります。よくある失敗例として、1週間ごとに進捗チェックをしていたら該当タスクが未着手で遅延がでてしまった。という事もあり、デイリーで進捗管理をしていれば遅延も1日でバッファで調整が付く範囲に収まることが多いです。

また、スケジュールや期限に対するカルチャーギャップも考慮する必要があります。例えば日本では10月1日がリリース日であれば、遅くとも前月の9月31日にはリリースを迎えられる状態にする事が常識ですが、海外ではスケジュールや期限は目安程度に捉える事も多く、それを避ける為に、明確にタスクごとの期限を設ける事やスケジュールを守ることの理由を説明してからプロジェクトに臨むことが有効といえ、また開発の途中で仕様変更や追加機能等の対応でもオフショア開発側ではスケジュールに影響が及ぼす場合がある為、随時開発側と調整をしてから各変更の対応をする事が必要となります。

品質管理の問題

問題: 日本側とオフショア側での品質基準の違い

スケジュールと同様に品質に対する捉え方も日本とオフショア開発を行う海外とではギャップがあります。例として日本の商習慣として、100%もしくはそれに近しい品質の物をリリースする事があたりまえと捉えている国と、50%の出来でも早くリリースして徐々にブラッシュアップさせた方が良いと捉えている海外とで、そもそもの品質に対する前提認識に大きな開きがあります。

解決策: ブリッジエンジニアを通じた品質基準の統一と検証プロセスの整備

システム開発に於いては、品質基準を明確にする事(例えばコーディングスタンダード等)や品質に対する期待値、品質の重要性等をプロジェクト開始前に説明を行い日本とオフショア開発チームで認識と統一させる事や、オフショア開発現地或いは日本にQAチームを置く事も有効な施策の一つといえます。

また、開発チームの中にコードレビュー体制を構築したり、定期的な品質チェックポイントを設ける等の事も有効な手段となります。

その他のよくある問題

日本側とオフショア開発チーム側でのコンフリクトの問題

厳しい納期や品質基準に対応すべく、 ブリッジエンジニアが厳しい管理をしたり、技術的な方向性の取り決めでの意見の食い違い等で、しばしば日本側とオフショア開発側でコンフリクトが発生する事は珍しくはありません。特に大規模なシステム開発や複雑な仕様のシステム開発等では良く起こる事の一つとなります。

解決策: 初期段階でのリスク評価とエキスパート、マネジメントの適切な介入

有効な手段としては、直接プロジェクトに入らないマネジメントメンバーが定期的なヘルスチェックを双方向で行い、些細なコンフリクトや現場のフラストレーションを早期に検知して対策を講じる事で、大きな問題になる前に解決する事が出来ます。その際に、一方的な報告内容のみで判断せずに双方の主張を詳しくヒアリングして、中立な立場で問題解決にあたる事が重要となります。

実際のプロジェクトにおけるブリッジエンジニアの成功事例

これまでの様々なオフショア開発でのシステム開発プロジェクトの成功事例に共通している事は以下のポイントが上げられます。

  • ブリッジエンジニアとオフショア開発メンバーの明確な役割と責任の範疇の取り決め
  • 両国間での明確なコミュニケーションとフローの取り決め
  • 第3者視点でのヘルスチェックポイントの設置
  • 品質基準の明確化
  • 見積提示時点で無理の無いスケジュール工数の提示と適切なバッファー
  • オフショア開発側の意見を取り入れた技術的な意思決定
  • ブリッジエンジニアによるクライアントの期待値やプロジェクト全体の情報共有
  • ブリッジエンジニアとオフショア開発チーム双方向での評価制度の導入
PCでMTG

オフショアチームとの長期的なパートナーシップ構築のために

中長期的な視点でオフショア開発チームとのパートナーシップ構築を測ることが大切です。関係性の構築について大切な点をご紹介します。

関係性の構築で失敗をするケース

日本企業がオフショア開発をする際に、良くありがちな失敗例として、オフショア開発委託先を下に見た上下関係を作ってしまい、パートナーとしてのワンチームの取り組みではなく、ただの下請けのような関係性でプロジェクトを進めてしまう事です。これでは相手のオフショア開発チームは当然ながら自発的な改善点を挙げたり、生産性や品質を自ら改善するモチベーションが無くなってしまいます。

関係性を構築する上で重要な事

ブリッジエンジニアとオフショア開発チームとの間で上下関係を作らない事や双方向での評価システムを構築する事が、関係性を構築する上で有効な施策の一つとなります。これを実施する効果としては、オフショア開発チームから改善点の提案やアラートが上がりやすくなり、意識的にコミュニケーションの壁を低くする効果もあります。これらを互いに意識してプロジェクトにワンチームで取り組む体制が出来ると、日本とオフショア開発チームとの双方向での生産性の向上や成長が期待できます。

最後に

当社では、これまで多くのブリッジエンジニアやオフショア開発チームの課題解決をしてまいりました。今後、需要が高まるオフショア開発も始めはトライ&エラーを繰り返して成長をして行くものですが、より早く強固な体制を構築してプロジェクトの成功や組織の拡大を目指す上で、初期段階での双方向トレーニングやプロジェクト開始前の各ルール作りが非常に有効となります。当社では、このようなお悩みの企業様に外国籍従業員向けのトレーニングやブリッジエンジニアの育成等の貴社のご要望に応じた研修サービスをご準備しております。

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