フィリピン拠点再建の2つのストーリー

―― 製造業A社とオフショア開発B社のケースから学ぶ

フィリピンに拠点を持つ日系企業で、

  • 日本の主要顧客や自動車業界の落ち込み
  • 1〜2社への過度な依存
  • フィリピン工場・センターの「余力」

に悩んでいる企業は少なくありません。

ここでは、実在の相談内容をもとに一般化した 2つのストーリーを紹介します。

  • ケース1:自動車依存の製造業A社(フィリピン工場)
  • ケース2:日本クライアント依存のオフショア開発/BPO企業B社

どちらも「営業代行を組み合わせて再建していったプロセス」という点で共通しています。


Contents

1. 共通する課題:日本依存とフィリピン拠点の“余力”

A社(製造業)のケース:自動車依存+フィリピン工場の赤字

  • 日本本社の売上の7~8割以上が、自動車・建機・農機・電子部品向けの大手数社
  • フィリピン工場は「日本からの仕事を受ける生産拠点」として拡張
  • ここ2〜3年で自動車/電子部品向けの発注が減少
  • フィリピン工場の稼働率低下/内政課題が発覚
  • 「このままだと26年度・27年度と継続的な赤字が見込まれる」という危機感

※関連記事:フィリピン進出企業の「営業課題」完全ガイド(2026年版)

B社(IT/BPO)のケース:日本クライアント依存+席の空き

  • フィリピンにオフショア開発拠点/BPOセンターを設置
  • 売上の大半は、日本の1〜2社のクライアントに依存
  • 既存プロジェクトの縮小・内製化・競合の増加などでボリューム減
  • 有償稼働率が低く、リソースに余裕はあるが、新規日本クライアント開拓が進まない
  • 「このままでは拠点を縮小せざるを得ないor拡大が見込めない」という状況

共通点は、

  • 収益源が「特定の国・特定の顧客」に偏っている
  • フィリピン拠点のポテンシャルを「営業」で活かしきれていない

という構造です。

※関連記事:東南アジア進出はフィリピンかベトナムか?IT・サービス企業が比較すべき7つのポイント


2. ケース1:製造業A社(フィリピン工場)の再建ストーリー

2-1. Before:状況・数字・組織

  • 売上構成:
    • 自動車関連:全体の約70%
    • その他(産機・農機など):約30%
  • フィリピン工場:
    • 稼働率 60%台
    • 在庫増加・受注減による利益圧迫
  • 組織:
    • 日本:営業2~3名(ほぼ既存フォロー)
    • フィリピン:営業専任ゼロ、工場長が「ついで」に既存営業フォローをしているだけ

2-2. Step1:技術の棚卸しと「第二の柱」の仮説づくり

まず取り組んだのは、営業ではなく「棚卸し」でした。

  • どんな加工・材質・ロットが得意か(差別化要因)
  • どの製品で、どの顧客に、どんな価値(コスト・品質・納期)を出せてきたか
  • フィリピン工場ならではの強み(人件費・設備・ロケーション)

を整理し、

  • 自動車以外に横展開できそうな業界候補
    • 電子部品・半導体関連
    • 産業機械・建機・農機メーカー
    • 医療機器・検査装置
    • 家電・OA機器・住宅設備

を洗い出しました。

ここで決めたのが、

  • 「自動車」というラベルではなく、「加工技術と品質」の汎用性で第二の柱をつくる

という方向性です。

2-3. Step2:営業代行で3〜6ヶ月の検証

次に、海外営業代行と組んで「どこに可能性があるか」を検証しました。

  • ターゲット仮説:
    • フィリピンに拠点を持つ日系・外資の電子部品・産業機械メーカー
    • 中国+ASEANのサプライチェーンを持つ企業 など
  • 営業代行が担当:
    • ターゲットリスト作成
    • メール・電話・オンラインでのアプローチ
    • アポイント獲得・一次ヒアリング→クロージングサポート
  • A社が担当:
    • 技術説明・見積・試作の提案
    • フィリピン工場の現場案内・評価対応

3〜6ヶ月の間に、

  • 反応が良い業界・企業規模
  • 話が進みやすい製品・ロット・条件

が見えてきました。

結果(例)

  • 電子部品・半導体関連:
    • 小ロット多品種の試作・治具には良い反応
    • 量産は競合が多く慎重な判断
  • 産業機械・建機:
    • 「自動車向け品質で産機部品」という訴求が刺さった
    • 中長期的な量産の見込みがいくつか見え始めた

2-4. Step3:1年後のビフォーアフター

1年後、A社には次のような変化が出ていました(あくまで仮想イメージです)。

  • 売上構成:
    • 自動車関連:70% → 50%台へ
    • 電子部品・産業機械:30% → 40%前後へ増加傾向
  • フィリピン工場:
    • 新規量産案件が2〜3件立ち上がり、稼働率が70〜80%ラインまで回復
    • 在庫・不正の是正とあわせ、黒字ラインを回復
  • 組織:
    • フィリピンで営業兼任だった人材の時間配分を見直し
    • 将来の営業専任採用を視野に入れた体制設計へ

ポイントは、営業代行が「第二の柱づくりのための検証エンジン」として機能したことです。


3. ケース2:IT/BPO企業B社(オフショア拠点)の再建ストーリー

3-1. Before:日本クライアント依存・低い有償稼働率

  • フィリピンにオフショア開発センター/BPOセンターを持つ日系企業B社
  • 売上の大半は日本の2〜3社のクライアントからの長期プロジェクト
  • クライアントの方針転換(内製化)で発注量が減少
  • チーム・席数に余力ができるが、新規開拓は「案件待ち」が中心
  • Webサイトや資料も「日本クライアント向け」の内容に留まっている

3-2. Step1:得意ドメインと提供価値の再定義

まず行ったのは、

  • 得意としている業界・業務領域
    • 例:SaaSのカスタマーサポート/ECのバックオフィス/製造業向けのシステム保守 など
  • 国内外での成功事例(成果指標:コスト削減率・応答品質・CS向上など)
  • 競合と比べた優位性(言語・技術・運用・ナレッジ)

の整理です。

ここから、

  • 「日本市場向け汎用BPO/開発」ではなく、
  • 「オーストラリア・アメリカ市場向けパートナー」としてのポジションチェンジ

を打ち出す方向性が見えてきました。

※関連記事:【脱・日本市場依存】IT企業の「逆オフショア」戦略

3-3. Step2:営業代行で特定業種向けに集中アプローチ

次に、海外営業代行と連携して、

  • ターゲット業界:
    • 例:オーストラリアのSaaS企業/EC事業者/サブスクモデル企業 など
  • オファー内容:
    • 小さく始められるPOC(概念実証)
    • 一部業務のみのBPO/一部機能だけの開発 など
  • 営業代行の担当範囲:
    • ターゲットリスト作成
    • メール・オンラインでのアポイント獲得
    • 一次ヒアリング(課題・席数・予算感)

という形で、狙いを絞ったアウトバウンドを実施しました。

B社側は、オンライン商談で:

  • 詳細なサービス説明
  • ケーススタディの共有
  • 小さく始める提案

を行い、「初年度は小さく、翌年以降に大きく育てる」前提での新規契約を少しずつ積み上げていきました。

3-4. Step3:継続案件の積み上げと、自社インサイドセールス立ち上げ

1年ほどの間に、

  • 小規模〜中規模の新規顧客が数社増加
  • 既存顧客の紹介だけに頼らない「新規パイプライン」が形成され始めた

のに合わせて、B社は、

  • 社内にインサイドセールス的な役割を1名配置
  • 営業代行で反応の良かった業種・セグメントに、自社でも継続的にアプローチ

する体制へと移行していきました。

営業代行は、

  • 新市場向けの開拓
  • 新たな国・業界への試験的アプローチ

に比重を移し、「新規の実験エンジン」として残る形になりました。


4. 2社に共通して「うまくいった理由」と「危なかったポイント」

共通してうまくいった理由

  1. 現状と強みを棚卸しした
    • なんとなく動くのではなく、「何ができる会社か」を一度言語化した分析
  2. 「第二の柱」の仮説を持ってから動いた
    • A社:自動車以外の製造業
    • B社:特定業種・特定業務領域のBPO/開発
  3. 営業代行を“丸投げ”ではなく“共創相手”として使った
    • ターゲット決め・メッセージ作成・振り返りを一緒に実施
    • 月次の定例ミーティングで、反応をもとに方針を微調整し続けた
  4. 3〜6ヶ月を「検証期間」として扱った
    • すぐに大きな売上を求めるのではなく、まず「どこに可能性があるか」を探る期間と位置づけた

危なかったポイント(やり方を間違えると失敗する点)

  • 経営層が途中から関与しなくなる(意思決定スピードやコミットメントの低下)
  • 担当者が忙しすぎて、情報提供・打ち合わせが行われなくなる(必要な情報共有ができなくなる)
  • 「ターゲットが曖昧なまま」「あれもこれも」で広げすぎてしまう(方向性かブレる)
  • 3ヶ月で「売上が出なかった=失敗」と判断してしまう(可能性を放棄)

これらは、実際に多くの企業が陥りがちなポイントです。


5. 自社がA社型かB社型かを見分けるチェック

A社型(製造業・工場依存型)の特徴

以下の項目に2つ以上当てはまれば「A社型」に近い状態です。

  1. フィリピンに工場があり、日本本社からの仕事が売上の7割以上を占めている
  2. 自動車・特定大手数社への依存度が高い
  3. フィリピン工場の稼働率が70%未満まで落ちている
  4. 現地に営業専任がいない、または機能していない
  5. 電子部品・産業機械など「第二の柱候補」はあるが、営業として動けていない

B社型(IT/BPO・オフショア依存型)の特徴

以下の項目に2つ以上当てはまれば「B社型」に近い状態です。

  1. フィリピンにオフショア開発拠点/BPOセンターがある
  2. 日本の2〜3社クライアントへの依存が高い(売上の6割以上)
  3. 有償稼働率が低くリソースに余力があり、新規案件が入ればすぐ対応できる状態
  4. 新規開拓は日本本社への問い合わせが中心で、攻めの活動は少ない
  5. サービスや強みはある程度あるが、「誰にどう売るか」が明文化されていない

6. タイプ別:3〜6ヶ月で何をすべきか(アクションリスト)

A社型:製造業・フィリピン工場の場合

  1. 技術・設備・品質の棚卸し(自動車以外に使える強みを整理)
  2. 第二の柱候補(電子部品/産機/医療機器 等)を3〜5カテゴリに絞る
  3. 営業代行と連携し、優先1〜2カテゴリに絞ったターゲットリスト作成
  4. 3〜6ヶ月で、アポイント数・見積・試作の件数と反応度を検証
  5. 手応えのあるカテゴリに、技術・生産・品質側の開発リソースも寄せていく

B社型:IT/BPO・オフショア開発拠点の場合

  1. 得意な業種・業務領域・技術スタックを棚卸し
  2. 「この市場の業種なら、こういう成果が出せる」というストーリーを1〜2パターン作る
  3. 営業代行とともに、特定市場・業種向けの集中アプローチを3〜6ヶ月実施
  4. 反応が良い業種・サイズの企業に特化した提案書・LP・資料を整備
  5. 社内にインサイドセールス/マーケの小さな役割を作り、継続的なパイプラインづくりへ

※A社型(製造業)とB社型(IT/BPO)に共通する事として、フィリピンや日本以外にも市場がある事を前提にアクションプランを設計する事が、可能性を広げる意味でも重要となります。


7. 自社の場合の「一歩目」を相談したい方へ

この記事で紹介したA社・B社はあくまで一部実例を基にした仮想事例ですが、

  • 日本依存が強い
  • フィリピン拠点に余力がある
  • 自社だけの力で新規開拓の仕組みを作るのは難しい

という構造は、多くの日系企業に当てはまります。

  • 自社がA社型かB社型かを知りたい
  • 3〜6ヶ月でどんな検証をすべきか一緒に整理してほしい
  • 営業代行を使うべきか、自社採用・代理店とのバランスを知りたい

という場合は、まずは状況整理のための無料相談をご活用ください。

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