インフルエンサーを起用するFAMトリップの海外成功事例から学ぶべき事

デジタルメディアやインフルエンサーの影響が大きくなっている現在、旅行・観光分野においてもインフルエンサーを起用するマーケティングが注目されています。その中でも、FAMトリップは特に人気の施策です。

しかし、インフルエンサーマーケティングやFAMトリップは、まだ市場として成熟しきっていないこともあり、自治体や観光地、観光施設などの運営側にとって、インフルエンサーと連携した施策に取り組むハードルは依然として高い状況です。

そこで今回は、世界各地のインフルエンサーを活用したFAMトリップの成功事例を取り上げ、そこから学べるポイントをまとめていきます。

FAMトリップとは?

FAMトリップとは、Familiarization Trip(ファミリアライゼーション トリップ)の略で、自治体や観光地、観光施設などが観光客の誘致を目的として実施する取り組みを指します。
FAMトリップは、特定の国をターゲットにした観光業界関係者やメディア、インフルエンサーなどを現地に招待し、地域の魅力を実際に体験してもらった後、その情報を自国向けにSNSやブログなどで発信してもらうものです。

FAMトリップの概要やメリットについては、以下の記事にて解説しているので是非ご覧ください。

インフルエンサーを起用するFAMトリップが注目されている理由

旅行・観光の誘致にあたって、なぜインフルエンサーを起用するFAMトリップが注目されているのでしょうか。その理由を以下に述べます。

世界中の成人の約 11% が旅行インフルエンサーをフォロー

データ収集・分析専門のグローバルグループであるYouGovの調査によると、世界中の成人の約11%が旅行インフルエンサーをフォローしていると答えています。
これは、旅行関連のマーケティングにおいてインフルエンサーが重要であることを実感させる数値です。

Z世代とミレニアル世代はSNSで情報検索する

SNSでのFAMトリップ

インフルエンサーマーケティングの重要性は、特に若い旅行者層に対して顕著だと言えます。
Googleの調査では、18~24歳のメディアユーザーの40%がインスピレーションを得るためにまずTikTokかInstagramを見ていることが明らかになっています。

ミレニアル世代とZ世代の旅行者にとって、TikTokとInstagramは発見の場です。そのため、彼らは旅行についてもTikTok・Instagramを活用して情報収集をします。
また、信頼性を重視するこれらの世代は、実際に直接体験した同世代からの情報を好み、企業目線の広告を好まない傾向にあります。

海外のインフルエンサー起用FAMトリップの成功例

インフルエンサーを起用したFAMトリップの海外成功事例をいくつかご紹介します。

マリオット・インターナショナル

マリオット・インターナショナルは、アメリカに本社を置く世界最大手のホテルチェーン企業です。世界各地で「マリオット」や「リッツ・カールトン」などのブランドを展開しています。
同社は、ホテル業界の中でもいち早くインフルエンサーマーケティングを取り入れた企業でもあります。

マリオット・インターナショナルは、UAE、サウジアラビア、クウェートで、コートヤード・マリオットホテルをプロモーションするためのインフルエンサーマーケティングキャンペーンを実施しました。

マリオット・インターナショナルは、インフルエンサーにコートヤード・マリオットホテルでの滞在を記録してもらうことで、コートヤード・マリオットホテルは手頃な価格でありながら贅沢な体験ができるということをターゲットユーザーに示しました。
インフルエンサーたちは、プールや朝食ビュッフェなど、ホテルの施設を楽しんでいる自分たちの姿をInstagramでシェアしました。

このキャンペーンでは、美しくクリエイティブなコンテンツを作成するだけでなく、旅行や高級ホテルに特に興味のあるフォロワーを持つインフルエンサーを選定する事が重要視されました。

その結果、キャンペーンは120万人以上のソーシャルメディアユーザーにリーチし、エンゲージメント率は8%(Instagramの平均エンゲージメント率は約2%)に達するという大成功を収めました。

24 Hours In Tokyo

マリオット・インターナショナルは、日本のマリオットホテルにおいても早くからインフルエンサーマーケティングに取り組んでいました。

旅行やライフスタイルに関するコンテンツで知られるイギリスのインフルエンサー、Jack Harriesが2015年に公開したYouTube動画「24 Hours In Tokyo」は、マリオットホテルとのコラボレーションによるものです。
動画の後半では、Jack Harriesが銀座のコートヤード・マリオットホテルに宿泊している様子が紹介されています。


この動画は、2024年8月時点で再生回数130万回以上、4,200を超えるコメントを誇るなど、大きな反響を得ています。

キュナード・ライン

豪華客船によるクルーズサービスを提供する英国のキュナード・ライン。
キュナード・ラインは、北極圏の豪華クルーズを宣伝するために、実際にインフルエンサーを招待しました。

クルーズ業界では、多くの人がクルーズを年配の旅行者向けのサービスだと考えていることを課題として捉えています。その中でも、伝統があり高級なブランドとして知られているキュナード・ラインは、より年配の顧客層を引き付ける傾向がありました。

キュナード・ラインは、洗練されたキャンペーンを通じてより幅広い顧客層、特に若い裕福な顧客層を獲得したいと考えていました。

当キャンペーンのインフルエンサーの選定に際して重視したのは、キュナードならではの特別な体験をより魅力的に伝えるため、旅行に対する真の情熱を持ち、ブランドのビジョンを理解し、そのビジョンを高度な写真やビデオ撮影を通じて視聴者に伝えられるスキルを持つ、というポイントです。

上記の条件に合致するインフルエンサーと連携した結果、この旅の記録はオンラインで話題となりました。その結果、ソーシャルメディアプラットフォームのユーザー300万人にリーチし、エンゲージメント率は4%に達しました。

ホテルズドットコム(Hotels.com)

ホテルズドットコムは、世界最大級のオンライン宿泊予約サイトです。
ホテルだけでなく、アパートメントやゲストハウスなど、さまざまなタイプの宿泊施設を取り扱っており、世界200か国以上の宿泊施設の予約が可能です。

ホテルズドットコムは、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「indaHash」と連携し、ブラジル、カナダ、英国、フランスなど、世界中の15の異なる市場を巻き込んだ国際的なキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンのコンセプトは「旅行中に食べ物を通じて地元の文化を体験し、探索できる」というもので、コンセプトに合わせてグルメ愛好家のインフルエンサーが起用されました。

インフルエンサーは、実際に旅行先での魅力的な風景×食事の写真をシェアし、写真の説明文で「Hotels.comを利用することで、世界中のどこでも宿泊施設を予約できるため、さまざまな食文化や料理を体験できる」という事を強調しました。

このキャンペーンは大きな成果を上げ、160万人のソーシャルメディアユーザーにリーチし、エンゲージメント率は4%に達しました。

海外の成功事例から考える、FAMトリップでのインフルエンサー起用のポイント

このような海外の成功事例から、私たちが学ぶべきことは何でしょうか。

ブランドとインフルエンサーの世界観を一致させる

インフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングを成功させるためには、PRするブランドとインフルエンサーの世界観が一致していることが重要です。インフルエンサーの持つ独自のスタイルやメッセージがブランドと調和していると、そのコラボレーションは自然で効果的なものになります。しかし、インフルエンサーとブランドの世界観がずれていると、キャンペーンが逆効果になるリスクもあります。

また、ブランド全体ではなく、キャンペーン単位のコンセプトとインフルエンサーの世界観を一致させることも重要です。
ホテルズドットコムの事例では、最終目的は宿泊予約の利用促進だと考えられますが、キャンペーンのコンセプトに合わせて意図的にグルメ系のインフルエンサーを起用しました。

ターゲットユーザーは、インフルエンサーの発信内容を見て、そこから公式ページや公式SNSなどの情報に遷移して情報収集を行うことが考えられます。
公式情報に遷移した際に、インフルエンサーが発信している世界観とあまりにも大きなギャップがあると、多くの人が離脱してしまいます。ターゲットユーザーにとって望ましい行動のゴールまでの一連の体験で、一貫したブランドイメージを伝えることが非常に重要です。

ブランドのターゲット層とインフルエンサーのファン層を一致させる

インフルエンサーのファン層が自社のターゲット層と一致しているかどうかも重要です。
マリオット・インターナショナルの事例では、キャンペーンにおいて、旅行や高級ホテルに特に興味のあるフォロワーを持つインフルエンサーを選定することが重要視されました。

自治体や観光地、観光施設などのブランド側にとって大切なのは、インフルエンサーの発信内容が注目されることだけではありません。その認知の先にある、投稿を見たユーザーに実際に足を運んでもらうことが最も重要なはずです。
キャンペーンを本当の意味で成功させるためには、インフルエンサーのファン層と、自社のブランドがターゲットにしたい層が一致していることが非常に重要です。

質の高いコンテンツを作成できるインフルエンサーを起用する

長期間のFAMトリップ実施

インフルエンサーと連携したFAMトリップと聞くと、一過性の効果をイメージされる方も多いですが、質の高い長期間にわたって見られるコンテンツを作成することで、効果の継続期間も同様に延ばすことができます。

先述したJack HarriesのYouTube動画「24 Hours In Tokyo」は、約10年にわたって愛されているコンテンツです。このように「刺さる」コンテンツを作ることができれば、10年単位で愛され、効果を発揮し続けることも可能です。

また、インフルエンサー目線の質の高いコンテンツを作成することは、さらなる宣伝にも繋げることができます。
例えば、キュナード・ラインは、インフルエンサーがクルーズ中に作成・投稿したソーシャルメディアのコンテンツをデジタル屋外広告(DOOH)にも活用することでキャンペーンの寿命を延ばし、さらなる成功を収めました。

質にこだわることは、一見、費用を上げるだけのように思えるかもしれませんが、俯瞰して考えると施策の費用対効果を向上させると言えるでしょう。

自社にとって大事なポイントを押さえてFAMトリップの効果を最大化

インフルエンサーを起用するFAMトリップは、ノウハウをフル活用し、かつ目的を見失わずに適切に運営することができれば、非常に効果的な施策となります。

当社では、日本の複数の自治体のFAMトリップを担当してきた経験豊富なコンサルタントが、課題のヒアリングから実施、振り返りレポーティングまで幅広くサポートいたします。まずは初回無料ヒアリングで、現在のお悩みをお聞かせください。

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