バングラデシュでの日本語学習状況とその今後は?ダッカ大学で日本語を教える現代言語研究所の准教授にインタビュー

Monir准教授は、ご自身の大阪大学への留学経験や高い日本語能力を基に、バングラデシュのダッカ大学で多くの日本語学科の学生を指導されています。
Monir准教授に、日本語学科の学生の状況や卒業後の進路等についてお話を伺いました。

現代言語研究所のMonir准教授

バングラディシュの学生から見た日本

(棚橋) バングラデシュの学生は、日本にどのようなイメージを持っていますか?

(Monir准教授)まず、日本全体に対して非常にポジティブなイメージがあります。その理由としては、日本とバングラデシュの外交関係が友好的であることや、海外各国の中でも日本からの援助が最も大きいことが挙げられます。また、バングラデシュの学生を対象に、国費留学の奨学金制度が提供されていることも大きな要因です。一般的にも広く良いイメージが広まっていますが、特に大学生の間で日本のイメージは非常に良いです。日本に行きたいと考える学生は非常に多いですよ。

ダッカ大学の日本語学科の在籍数

(棚橋) ダッカ大学の日本語学科には、現在何人くらいの学生が在籍しているのでしょうか?

(Monir准教授)ダッカ大学の日本語学科は、まず学位を与える講座と、非専攻の講座の2つに分かれています。
学位を与える講座では、学士号および修士号を取得できるプログラムがあります。
学士号を与える講座では、1学年あたりの学生数は25名から30名で、4年間でおよそ100名になります。修士課程の学生数は20名以下です。一方、非専攻講座では、1年目の初級コースで約100名の学生が学んでいます。

非専攻講座は希望者が多いのですが、講師の数が限られているため、生徒数を制限しています。また、2年目の初中級コースになると、日本語の難易度が上がるため、専攻者数が減少します。興味本位で日本語学習を始めた生徒も、次第に難しくなる日本語に苦慮し、途中でドロップアウトすることが増えてきます。

4年生まで進む生徒は少なく、最初は120名ほどが入学しても、徐々に数が減っていきます。これは、他の学部での勉強と並行して日本語を専攻するのが簡単ではなく、継続が難しいためです。また、「これだけ日本語を勉強して何になるのか?」という疑問や価値観が学生の中で次第に湧き上がってくる時期があり、その時が継続するか、他のことに時間を充てるかの分岐点となるのです。

学生が日本語を学ぶ理由

(棚橋) 日本語を専攻する学生たちは、どのような理由で日本語を学びたいと思うのでしょうか?

(Monir准教授)そうですね。ダッカ大学ではセンター試験を経て、多くの学生が人民学や英語や経済学を学びます。しかし、センター試験の順位が下位の学生の場合、応募者が多い学部ではなく、比較的応募者が少ない学部を専攻するという選択肢が残されます。そのため、消去法で日本語学科を選ぶ学生もいます。
日本語学科への応募が少ない理由の一つとして、ダッカ大学の日本語学科が設立されてからまだ8年目であり、新設学科であるため認知度がまだ低いという点が挙げられます。

しかし、その中でも真面目に日本語を勉強する学生も多くいます。例えば、学部で1位の成績を収めた学生は、現在日本の文部科学省の奨学金を得て大阪大学に留学しています。また、宮崎大学に留学している学生もおり、私が直接指導している学生の中では、現在7名が日本に留学しています。このような成功事例が増えることで、日本語学科の人気も次第に高まってきています。

現代言語研究所のMonir准教授との対談

ダッカ大学日本語学科の卒業後の進路

(棚橋) ダッカ大学の日本語学科を卒業した学生は、どの様な就職先に進んでいるのですか?

(Monir准教授) 日本語学科自体がまだ若い学科であるため、多くのデータはありませんが、バングラデシュでは就職率が低く、すぐに職に就けない学生も多い中で、日本語学科を卒業した学生の就職率は100%です。さらに、給与も高い傾向にあります。主な就職先としては、バングラデシュ国内の各機関で日本語講座の講師を務めることが多いです。これらの講師の給与は、大学講師の約2倍の水準となっています。他学部の卒業生と比較しても、良い給与水準で就職していますね。

非専攻講座の学生については、就職先に関するデータはありませんが、日本語能力試験N2以上を取得した学生は、非常に良い条件で就職しています。

(棚橋)日本に就職あるいは留学しているバングラデシュ人の学生が、日本での生活で直面する苦労にはどのようなものがありますか?

(Monir准教授)日本人がバングラデシュに来る際に持つイメージと同様に、バングラデシュ人も日本に行く前にポジティブなイメージを持つことが多いですが、大きな不満はあまり聞きません。
ただし、一般的にはカルチャーギャップや食文化の違いから、ある程度のギャップを感じることはあるでしょう。また、日本の商習慣は独特で集団主義的なので、細かなコンフリクトもあるかもしれません。しかし、バングラデシュから日本に行くと、日本の環境が整っているため、生活にあたっての大きな困難は少ないと思います。

現代言語研究所のMonir准教授との対談2

バングラディシュでの日本語学習者の今後

(棚橋) 今後5年または10年の間に、日本語学習者をどの程度増やしたいとお考えですか?

(Monir准教授)日本では介護分野で外国人を採用する動きがあり、バングラデシュでも同様の動きが予想されます。しかし、大学生は介護分野での就職をあまり考えていないようです。日本語学科の学生には、日本人と共に働くための知識を身につけて卒業してもらうことが重要です。そのためには、日本人とのコミュニケーションや文化、語学力を高める必要があります。また、日本の歴史や経済、文化を学ぶことも重要ですが、実際の仕事の現場では、専門的なスキルの習得も求められます。

しかし、現在の学士課程カリキュラムで全てを含めるのは難しいため、効率的な配分を考える必要があります。日本企業は育成や研修を前提とせず、即戦力となる人材を求めるため、日本語能力だけでなく、実践的な仕事のスキルや一般常識、専門的なスキルを一定レベルまで引き上げる取り組みが必要です。

(棚橋) 今後、より多くの学生が日本語を学習することを期待しています。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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