中国+1時代のアジア進出先比較ガイド【IT企業向け:製造×IT/BPO×販売の拠点設計】

昨今、当社への相談事例としても、中国リスク分散や人件費高騰を背景に、「中国+1″チャイナプラスワン” 」や「ポートフォリオ型」の拠点戦略を再検討するIT企業や製造業が増えています。

  • 開発拠点やBPO拠点をどこに置くべきか
  • グローバル顧客向けのサポート・販売拠点をどう設計するか
  • 将来的な製品製造との連携も視野に入れるべきか

といった問いに対して、
本記事では フィリピン/ベトナム/インド の3カ国を軸に、

  • 「製造」「IT/BPO」「販売」の3つの機能別に
  • 各国のポジション・強み・注意点
  • 年商10億円以上の日本発IT企業が取りうる拠点構成のパターン

を整理します。


◆ 中国一極依存のリスク顕在化

  • 地政学リスク・サプライチェーンリスク
  • 人件費上昇・規制環境の変化
  • 対中ビジネスへの社内・株主からの懸念

これらを受け、「一国集中」から

  • 製造拠点の分散
  • IT・BPO拠点の多拠点化
  • 顧客市場に近い販売・サポート拠点の構築

へとシフトする動きが、昨今の日中関係の懸念もあり、更に加速しています。

◆ 比較対象としての3カ国のざっくりポジション

  • フィリピン
    英語+BPO+IT人材、24時間対応可能なサービス・オフィスワーク拠点に強み
  • ベトナム
    製造+ITオフショア開発の“先行国”。エンジニアの層の厚さと製造基盤が魅力
  • インド
    世界最大級のIT人材プール。高度IT開発・先端技術領域に強みがあり、内需市場も巨大

製造 × IT/BPO × 販売の3軸で見る3カ国比較

1. 製造(ハードウェア・デバイス・周辺機器など)

  • フィリピン
    • 一部エレクトロニクス製造はあるものの、製造拠点としては「タイ・ベトナム・中国」ほどの規模はない
    • IT企業にとっては、製造というよりサービス・運用側の拠点としての位置づけが現実的
  • ベトナム
    • エレクトロニクス・機械・繊維など製造拠点として確立
    • ハードウェア製品を持つIT企業にとって、「中国+ベトナム」でサプライチェーンを組む選択肢
  • インド
    • モバイル・家電など一部製造は拡大中だが、全体としてはまだ拡張フェーズ
    • 今後のポテンシャルはあるが、現時点で製造主体で見る国ではない(IT企業にとっては特に)

2. IT開発・BPO・バックオフィス(コアテーマ)

  • 英語が公用語の一つ。大学卒レベルで英語業務が前提
  • BPO・コールセンター・IT運用で欧米向け案件の実績が豊富
  • オフショア開発も拡大中で、「IT開発+CS/BPO+運用」をまとめて構成しやすい
  • 理工系人材が豊富で、コーディング能力・勤勉さに定評
  • 日本向けオフショア開発の実績が厚く、日本語要員も一定数
  • 反面、
    • 先行組との採用競争
    • 給与水準の上昇(外資の場合は、年*10%の上昇が近年の最低水準)
      により、「今から参入する企業」にとってはコスト優位が薄れつつある
  • 世界最大級のIT人材プール。AI・クラウド・データサイエンスなど先端領域の人材が多い
  • 大規模プロジェクト・プロダクト開発など、「スケールの大きなIT投資」に向く
  • 一方、
    • タイムゾーンの問題(欧米向けには良いが日本とはギャップ)
    • 文化・マネジメントの難度
      もあり、「中堅規模の日本IT企業がいきなり自前拠点」はハードルが高め

3. 販売・サポート・CS拠点としての適性

  • フィリピン
    • 英語+BPO文化+親日で、グローバルCS・サポート拠点に最適
    • 日本・アジア・欧米向けのサポート・運用を24時間体制で回しやすい
  • ベトナム
    • 最近はIT・スタートアップシーンの盛り上がりで内需も拡大
    • とはいえ、「グローバル向けサポートハブ」としてはフィリピンほど確立していない
  • インド
    • 英語圏・欧米向けには非常に強いが、日本向けCS拠点としては人材面・文化面での設計が必要
    • 「グローバル製品の一部機能をインドで開発・運用」するモデルに向く

IT企業(年商10億以上)が取りうる
代表的な拠点構成パターン

パターンA:開発はベトナム、CS/BPOはフィリピン

  • ベトナム:日本向け開発チーム(下流〜一部上流)
  • フィリピン
    • カスタマーサポート(日本・英語圏)
    • 運用・監視・L1/L2サポート
    • 一部BPO(バックオフィス)
    • グローバル開発体制
    • 人員拡大をフィリピン側に寄せる

メリット

  • 「開発は既存のベトナム資産を活かしつつ、CS/BPOはフィリピンで新規構築」という柔軟な分散が可能
  • リスク分散と機能分担が明確
  • 中長期的な人員拡大は、採用や人件費で優位性が高いフィリピンで実施

パターンB:開発+CSをフィリピンで一体構築、インドは“将来の高度IT拠点”

  • フィリピン
    • 開発チーム(下流〜中流工程)
    • CS・サポート・運用・BPO
  • インド(将来的なオプション):
    • AI・データ・R&Dなど、特定領域の高度ITチーム

メリット

  • 英語+IT人材をまとめてフィリピンで採用できるため、組織構築がシンプル
  • まずはフィリピンで「オフショア+BPO」の型を作り、その後必要に応じてインドを検討できる
  • フィリピン+インドの2国間でのコミュニケーションが英語で完結する為、スムーズ(*ベトナムの場合はこれが難しい)

パターンC:インドに一部コア開発、フィリピンに運用・BPO、ベトナムは製造・連携先

  • インド:製品の一部コア機能・先端技術領域
  • フィリピン:CS・運用・BPO・一部開発
  • ベトナム:ハードウェア製品がある場合の製造+一部開発

メリット

  • 中長期で「グローバルベンダー」を目指す企業向けの構成
  • ただし、相応の規模・投資余力・マネジメント力が前提

※オフショア開発拠点設立に関する記事は、こちらに詳細を解説しています。


フィリピン・ベトナム・インドの
IT/BPO観点での比較ポイント

人材・人件費

  • フィリピン:英語+IT+BPOの人材が「日本の1/3〜1/2コスト」で採りやすい
  • ベトナム:開発者の層は厚いが、ハノイ・ホーチミンは人件費上昇傾向
  • インド:絶対数は多いものの、優秀層はグローバル水準の報酬が必要

言語・コミュニケーション

  • フィリピン:英語前提。欧米型のプロジェクトスタイルに慣れている
  • ベトナム:英語力には個人差、日本語要員も限られる
  • インド:英語が通用するが、発音・コミュニケーションスタイルのギャップは要設計

タイムゾーン・運用

  • フィリピン:−1時間でほぼ時差を気にする必要が無い為、運用しやすい
  • ベトナム:−2時間で運用しやすい
  • インド:日本と3.5時間差。深夜運用には有利だが、日中のミーティング時間設計が必要

※フィリピンとベトナムの比較については、こちらの記事で解説しています。


「最初の一歩」としてどこから始めるべきか

年商10億前後〜数十億クラスのIT企業の場合、

  • いきなりインドにフルスケールの拠点
  • 3カ国同時多拠点展開

は、コスト・マネジメント負荷の観点から現実的ではありません

現実的なステップとしては:

  1. フィリピンで「IT開発+CS/BPO」の小規模チームからスタート
    • メンバー数:数名〜十数名
    • 日本側PM+フィリピン側チームの二国間体制
  2. 既にベトナム開発拠点を持つ場合は、CS/BPOをフィリピンに追加して「二拠点目」とする
  3. ある程度スケールし、先端技術領域での強化が必要になった段階で、インド活用を検討する

10億規模の受託開発企業での当社代表の支援事例では、フィリピンへのオフショア開発拠点の構築を選択しました。

ベトナムやインドを候補に入れながら、最終的にフィリピンを選択し結果的に事業拡大の中核となる拠点作りに成功しましたが、約4年前の時点でもベトナムは既にコスト高で事業計画やコスト試算をした際に、“3年程度でコストメリットが出なくなる”+“人月単価の値上げと初期から有償稼働率を高い水準で維持する必要がある”という結論を導き出し、ベトナムは見送り、インドは最初の拠点としては3カ国中で最も投資額が必要な市場フェーズで有る為、見送りました。  

結果的には、フィリピンでの拠点の構築は非常に良い結果を生み、その後のグローバル展開のコアとなる組織と拠点の構築ができました。


Social Zeroが支援できること

当社 Social Zero は、フィリピンを中心に、

  • 市場・人材・コストの比較リサーチ(フィリピン/ベトナム/インド)
  • IT/BPO拠点の「役割分担」と「段階的な拠点構成」の設計
  • フィリピンでの現地法人設立・人材採用・組織立ち上げ
  • ベトナム・インドを含めた既存拠点とのポートフォリオ再設計

まで、上流〜下流を一気通貫で支援しています。

※フィリピン進出に関しては、こちらの記事で詳細を解説しています。


まとめ:中国+1時代のIT拠点戦略は
「国選び」より「役割設計」から

  • 中国リスクやコスト上昇を踏まえると、「どの国が一番か」ではなく、
    「どの機能を、どの国に置くか」 という発想が重要です。
  • フィリピン/ベトナム/インドは、それぞれ
    • フィリピン:IT+BPO+CSの“サービスハブ”
    • ベトナム:製造+開発の“モノとコード”の拠点
    • インド:高度IT・R&Dの“テクノロジーハブ”
      という役割を持ちます。

まずはフィリピンで「開発+CS/BPO」の型をつくり、
既存のベトナム資産や将来のインド活用と組み合わせていく──

これが、年商10億以上の日本発IT企業にとって、
現実的かつ拡張性の高い「中国+1」時代の拠点戦略の一つだと考えています。


  • 自社の事業・プロダクトにとって、フィリピン/ベトナム/インドをどう組み合わせるべきか
  • まずはどこから小さく始めるのが現実的か
  • 既にある海外拠点を前提に、ポートフォリオを組み直したい

といったご相談があれば、ぜひ一度お声がけください。

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