日本企業の海外進出拠点として、近年注目を集めている国の一つがバングラデシュです。
その理由は、急速な経済成長、豊富な労働力、戦略的な立地にあります。バングラデシュのビジネス環境の向上は、企業が持続的な成長を目指す上での強力な基盤となっています。
本記事では、バングラデシュがなぜ日本企業の海外進出拠点として選ばれるのか、その理由と将来性について詳しく解説します。
日本企業がバングラデシュに進出するメリットについては「バングラデシュに進出するメリットや起こりうる問題について、バングラデシュ大手IT・BPO企業会長へインタビュー」の記事でもご紹介しています。
Contents
なぜ今バングラデシュが海外進出拠点に選ばれるのか?
今バングラデシュが日本企業の海外進出拠点に選ばれる大きな理由として、高い経済成長率があげられます。
バングラデシュの経済は2010年以降、平均して年間6~7%のGDP(国民総生産)成長率を維持しています。
JETROの世界経済見通し(2024年6月版)によれば、2024/25年の成長率の予測は5.7%、 2025/26年は5.9%。直近数年に比べるとやや鈍化気味ではあるものの、高い水準を維持することが予測されています。
一般的に、経済成長率が5%以上である場合、その国は急速に経済成長しているとみなすことが出来ます。バングラデシュは過去10年間で安定して高水準を保っており、他の新興国と比較しても経済成長が顕著であると言えます。
このような高水準の経済成長は、複数の要因が重なり合って実現しているものです。
理由① コストの優位性
バングラデシュは、世界的に見ても労働力のコストが低いことで知られています。
特にバングラデシュの主要産業である繊維産業や衣料品製造業では、コスト競争力が大きな役割を果たしており、バングラデシュ製品が国際市場での競争力を維持する要因となっています。
加えて他のアジアの新興国は近年人件費が高騰傾向にあることから、近年、相対的にバングラデシュがコスト面の優位性を高めています。
理由② 生産年齢人口の拡大
また、バングラデシュの特徴として、若く豊富な労働力を有している点があげられます。
バングラデシュは世界第8位の人口(1.7億人)を有し、その内生産年齢人口(15歳から64歳)が全人口の約65%を占めています。
国内での人材確保が困難になる中、毎年約1万人の新卒者が労働市場に参入しているバングラデシュは日本企業にとって非常に魅力的と言えるでしょう。
バングラデシュの生産年齢人口は1990年以降上昇し、2050年頃まで「人口ボーナス期」が続くと言われています。特に2020年から2035年に加速的な成長が見込まれることからも、企業からの注目が高まっています。
生産人口が増える「人口ボーナス期」には、多くの場合、労働者が自分への投資や消費にお金をかけることが出来るようになります。その結果として急速な経済成長が見込まれます。
理由③ 教育プログラムの発展
初等教育普及率に問題を抱える南アジア地域ですが、バングラデシュ政府の2022年の調査によると、バングラデシュの初等教育の就学率は97.56%と高水準を保っています。
一方で留年率は5.72%、中途退学率は13.95%となっており、すべての子どもが初等教育を修了できるわけではありません。貧困層の就学困難など依然として問題を抱えていますが、政府は National Education Policy 2010 という政策を進行しており、教育改革に注力しています。
特にIT分野では、政府が「スマートバングラデシュ」「デジタルバングラデシュ」という政策を主導し、IT人材の育成に注力しています。
国内には現在すでに60万人のITスキルを有するフリーランサーがいると言われています。そのほか、バングラデシュ・ソフトウエア・情報サービス協会(BASIS)の登録企業数が過去10年間で6倍以上に増加していることからも、IT分野の拡大が窺えます。
このことから、バングラデシュは特にIT分野でのオフショア開発先としても注目が高まっています。
オフショア開発の拠点としてバングラデシュが選ばれる理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。
理由④ 外資企業に対する優遇措置
バングラデシュ政府は外資企業に対しインセンティブを提供しています。例えばバングラデシュでは、「デジタル・バングラデシュ」政策の一環として、全国にハイテクパークを設置しています。BEZA(経済特区)およびハイテク・パークディベロッパー会社は、次の減税措置を受けることができます。
設立当初の10年間 | 法人税100%減税 |
設立11年目 | 法人税70%減税 |
設立12年目 | 法人税30%減税 |
また、同じく「デジタル・バングラデシュ」政策の一環として、外資のITソフトウェア企業に対して以下のような優遇措置を取っています。
法人税免除(2024年6月まで) |
政府はIT産業のために、これまでに工業地区(ハイテクパーク)やインキュベーションセンターなどを10カ所に設置。 |
IT産業の工業地区(ハイテクパーク)、ICTビレッジまたはソフトウエア技術ゾーン、ITパークなどに設立した場合、7年間法人税免除。 |
その他さまざまなインセンティブが提供されています。これらも日本企業にとっては大きな利点と言えるでしょう。
参照:JETRO「バングラデシュ-外資に関する奨励」
日本企業のバングラデシュ進出状況
では、実際に日本企業のバングラデシュ進出状況は、現状どのような状況なのでしょうか。
バングラデシュへの日本企業進出数
JETROの調査によれば、2023年5月時点でのバングラデシュへの日本企業進出数は338社(駐在員事務所含む)となっています。2008年時点での70社から、10年間で約3倍に増加しています。
繊維業、軽工業などの製造輸出拠点として進出する企業が多いですが、近年は国内のインフラプロジェクトの受注を目指す建設業や、IT企業からの注目も高まっています。
在バングラデシュ日本企業の事業展開
また、JETROの「2022年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によれば、在バングラデシュ日系企業の71.6%が、今後1~2年の事業展開の方向性について「拡大する」と回答しています。この結果は全世界平均(44.4%)を大きく上回っており、日本企業のバングラデシュへの期待感の高さが伺えます。
特に、他の新興国でコストの上昇などを理由に縮小、第三国(地域)への移転、撤退の検討が行われる中、バングラデシュでは縮小や撤退を検討していると回答した企業が無い点も注目です。
バングラデシュ市場への高い成長期待
同調査では、在バングラデシュ企業の市場規模・成長性への期待が高いことも窺えます。
バングラデシュの成長期待は70.7%と高水準で、インド、インドネシア、パキスタン、ベトナムに次いで第5位です。パキスタンやカンボジアのような今後のポテンシャルが評価されている国に比べると、現在の市場規模の割合が高く、すでに市場が拡大しつつあることが分かります。
この点でも、バングラデシュは全地域の期待値平均(67.2%)を上回っています。
進出企業数はインド、ベトナム、フィリピンなどに比べるとまだ少ないものの、近年の経済成長に伴い日本企業からの注目が集まっていること、在バングラデシュ企業からも非常に高い成長期待をされていることが分かります。
バングラデシュに進出するならパートナー探しから
経済成長率、豊富な労働力などさまざまな面から期待が高まるバングラデシュ。
上述の通りバングラデシュは2050年ごろまで人口ボーナス期が続くと考えられ、今まさに加速的な経済成長の只中にあります。
日本企業のバングラデシュへの進出も増加傾向にありますが、2024年現在では他の新興国と比べると数は多くありません。
その分十分な知見のあるアドバイザー企業も、まだ日本には多くないのが現状です。
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