FAMトリップ:海外インフルエンサー起用の注意点を解説

2024年のインバウンド訪日外客数は3,600万人を突破し、消費額も8兆円超えとなり共に過去最高を記録しています。これらのインバウンド需要を取り込もうと、各地方自治体や民間企業は海外プロモーションにより予算を投下しプロモーション活動を行っています。

その中でインバウンド客層に有効な施策の代表的なものとして、海外インフルエンサーを日本に招聘して旅行体験をしてもらい、それらの体験をSNSやブログ等で情報発信をしてもらうFAMトリップが挙げられます。

海外インフルエンサーを活用したFAMトリップは非常に有効な施策の一つと言え、FAMトリップ需要の増加と共に海外インフルエンサーの起用も増えていますが、同時にトラブル事例も増えております。特に初めて依頼をするインフルエンサーとの契約や来日時の渡航トラブル等のケースが出ております。

これらを事前に防ぐために、海外インフルエンサーを招聘する側としてどの様な対策を行えばよいのか事例を交え解説していきます。

よくある契約上のトラブル

SNS投稿の追加要求

日本に海外インフルエンサーを招へいして、日本の観光地や施設を訪問してもらいながらその様子をインフルエンサー自身のSNS等へ投稿・掲載してもらう事で、インフルエンサーのフォロワー層へPRが出来る事が、海外インフルエンサーを活用したFAMトリップの魅力ですが、よくある契約上のトラブルとして日本に招へいして観光地等を回っている時に事前に合意した投稿回数以上の投稿を現地で案内をする依頼主等から、直接依頼され断りづらいが為に致し方なく契約合意回数以上の追加投稿をした際に、後ほど追加請求となりトラブルになった事例があります。

一般的に、海外インフルエンサーを招へいする際には、依頼主である日本側の企業や自治体から当社のような海外インフルエンサーをアサインできる企業へ業務依頼を頂きます。その際に、当社と海外インフルエンサーとで依頼内容に基づく業務委託契約を締結するのですが、有名インフルエンサーであるほど投稿回数や投稿種類は詳細に取り決めを行います。

その際に、インフルエンサーの拘束期間やSNS等の投稿・掲載回数によって委託料金が変わる為、追加の投稿をする場合は追加料金になります。一方で、依頼主はその辺の知見が無く、また契約内容詳細までは把握していないケースが多い為、“せっかくだから”、“よかったらぜひ”というような形で追加投稿を依頼されるケースが多く見受けられます。そのような依頼を現地で直接されるインフルエンサーからすると断りづらい為、追加の投稿を実施する事がありますが、事前の取り決めとは違う業務となり、このケースの場合は当社のような契約先の企業に追加請求が行われる事もあります。

もちろん、インフルエンサーの好意で追加投稿をしてくれるケースも多いのですが、稀に無理な要求を行う依頼主もおり、それらを防ぐために当社では契約投稿回数や諸条件を事前に依頼主と明確な合意をとり、トラブルを防ぐために現地で無理な追加投稿依頼を行わないようにお願いをしています。

日本では契約内容に関わらず、“善意での〇〇”や“ついでに〇〇”のような商習慣はありますが、海外ではそれらが一般的とは限らず、より契約内容が重視される為トラブルを防いで互いに気持ちの良いFAMトリップが慣行できるように、両者間での事前の取り決め順守が必要となります。

スケジュールの遵守 

海外インフルエンサーを招へいするFAMトリップの場合、観光地や施設、ホテル等の各訪問地調整に時間を要する事が多く、特に自治体の海外プロモーションでの海外インフルエンサー招へいの場合は、渡航の直前まで詳細なスケジュールが出てこないケースもあります。

しかしながら、海外インフルエンサーも有名であるほどスケジュールが埋まっており、気軽に前後のスケジュールを直前に調整できる人は稀で、特にトラベルインフルエンサーのような海外旅行に頻繁に出かけている人や、タレント活動を行う人はこのスケジュールが直前まで決まらない事を非常に敬遠されます。

これは日本でもタレントをキャスティングする際に、直前までスケジュールが決まらないとそもそもキャスティング出来ないのと同様なのですが、海外での事業となるとこの辺が考慮されないケースが多く、当社でキャスティングした海外インフルエンサーでも同様のケースがあり、この時のインフルエンサーとは何年も仕事を依頼する関係性であった為、結局別の仕事をキャンセルして対応してくれた事で無事に日本へ招へいできましたが、スケジュールの詳細が決まらないと、多くのケースでは招へい自体が出来なくなります。

例えば、ベトナム人のインフルエンサーをFAMトリップ事業で日本へ招へいするとした場合にはビザ取得が必須となります。そのうえ、詳細に渡航スケジュールを決めないとビザの申請も出来ない為、招へいする国と対象者を決めたら早期にスケジュールの取り決めを行い、ビザ取得が必要な国籍であれば2ヵ月前、ビザ取得が必要ない国籍であれば1ヶ月前にはFAMトリップのスケジュールを固めて航空券の取得を行う事を推奨致します。

来日ビザが取得できずFAMトリップ事業の中止

これはある企業がベトナム人の国民的な有名女優を日本に招へいしようとした際に、日本領事館で来日ビザの取得が許可されず、来日事業自体が中止となったケースです。

現在においてもベトナム人の来日のビザは個人での申請はハードルが高く、旅行目的でも団体ツアーでの申請が一般的となります。この時のビザは個人での申請を行い、必要な各証明書や日本側の保証人等も準備して申請しましたが、却下されてしまいました。この申請人はベトナムでは非常に有名な女優で十分な収入や経歴を証明できても却下された珍しいケースとなりました。

このようにベトナム等の訪日ビザの個人申請ハードルが高い国でのインフルエンサーを招へいする場合には、実は通りやすい方法があります。(詳しくはお問い合わせください)

インフルエンサーのミスマッチ

フォロワーが情報発信したいターゲット層ではない

FAMトリップでの海外インフルエンサーの招へい時に、指標としてフォロワー数や登録者数に注目されます。しかしながら、情報発信したいターゲットが訪日観光客層とした場合に、仮にそのインフルエンサーに100万人のフォロワーが居てもフォロワーの大半が10代だった場合には、直接的な訪日観光客層にはなりません。一方でフォロワー10万人でもそのフォロワーの大半が訪日観光客層や予備軍である場合には、こちらの方が効果がある事は明確と言えます。

フォロワー数だけで起用判断した事で起きたトラブル

以前、タイに進出している大手メーカーが現地の著名インフルエンサーをキャンセルした際にトラブルとなった事例を紹介します。これは当時タイに駐在していた筆者も耳にしていており、現地の日系企業の間では有名な話でした。

このメーカーは自社の新製品のプロモーションに現地の有名なインフルエンサーを起用して商品プロモーションをしようとして、フォロワーが100万人を超えるタレントを起用してSNSプロモーションを行いました。しかしながら、フォロワーが100万人以上居るのにもかかわらず、エンゲージメントが1投稿あたり数件しか付かなかったのです。

これはアジア圏のインフルエンサーで稀にある、フォロワーを買っているインフルエンサーの典型的な事例です。このようなインフルエンサーの一例として、一時ドラマや映画で有名になったタレントがその後はタレント業で活躍できず、SNSインフルエンサーとして生計を立てている場合により高額な案件を取れるようにフォロワーを買って自身のSNSのフォロワー数を増やしているケースがあります。(主に中国から1フォロワー=〇円で安価に購入が出来てしまいます。)

このように、フォロワーを買っているインフルエンサーのフォロワーは幽霊会員と同様に、SNS上でそもそもアクティブでない(存在していないのと同義)為、情報発信しても届く先が存在していないのです。

このようなフォロワーを買っているインフルエンサーを見抜くのは意外と簡単で、フォロワー数に対して各投稿のエンゲージメント(コメントやライク等のリアクション)が異様に少ない場合は、基本的には疑うべきで当社ではまずキャスティングの対象とはしません。従って、インフルエンサーをキャスティングする際には単にフォロワー数だけで判断せず、自身でSNSの投稿をチェックして投稿毎にエンゲージメントがどれだけあるのか事前に精査する必要があります。

インフルエンサーを起用するFAMトリップの海外成功事例から学ぶべき事

おわりに

インバウンド需要が増加する昨今では、各地でインバウンド需要の取り込みを狙い各国のインフルエンサーを招へいしたFAMトリップが活発になってきています。しかし、前述の通り事前に明確な取り決めや準備を怠るとトラブルに発展するケースもあります。

海外インフルエンサーの招へいはそもそもの文化的・言語的ギャップがあり、情報発信したい層とインフルエンサーのフォロワーがマッチしているか等、事前にチェックを行いキャスティングする事で

本記事が、日本企業や自治体プロモーションのFAMトリップを成功に導く一助となれば幸いです。

弊社では、これらのベストプラクティスを活かした海外インフルエンサーを活用したFAMトリップやプロモーションサービスをご用意しておりますので、ぜひご検討ください。

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