日本へのインバウンド観光客はコロナ禍からV字回復を遂げており、現在、多くの場所や地域が訪日外国人観光客で賑わっています。今、多くの観光地や地域コミュニティにとって、この需要の波を持続可能な形で発展させることが重要な課題となっています。
そこで、地域の魅力を効果的に発信する手法として、FAMトリップ(ファムトリップ)への注目が高まっています。
この記事では、FAMトリップの基本概念やメリット、具体的なツアー内容、そしてその効果を最大化するためのポイントについて解説します。
Contents
FAMトリップ(ファムトリップ)とは?
FAMトリップとは、Familiarization Trip(ファミリアライゼーション トリップ)の略で、自治体や観光地、観光施設などが観光客の誘致を目的として実施する取り組みを指します。
Familiarizationは、日本語では「習熟」や「慣れ親しませること」を意味します。
FAMトリップは、特定の国をターゲットにした観光業界関係者やメディア、インフルエンサーなどを現地に招待し、地域の魅力を実際に体験してもらった後、その情報を自国向けにSNSやブログなどで発信してもらうものです。
FAMトリップは、ファムトリップ、FAMツアー(ファムツアー)、モニターツアー、下見招待ツアー、海外メディア招聘事業など、さまざまな名称で呼ばれますが、基本的な内容はほぼ同じと考えて頂いて構いません。
メディアやインフルエンサー、ブロガー、YouTuberなど、FAMトリップに参加してもらう人々に、地域での体験を通じて観光資源や文化に触れてもらうことで、リアルで魅力的な情報を発信してもらうことができます。
デジタルの影響力が増す現代では、観光に関する情報を収集をする際もオンライン媒体が多く活用されています。
日本政府観光局(JNTO)の『訪日旅行データハンドブック2023年版』によれば、各国の「外国旅行の情報収集をする際に使うオンライン媒体」として、YouTubeやFacebook、TikTokなどが上位にランクインしており、SNSが積極的に利用されていることがわかります。
これらのプラットフォームは、視覚的でインタラクティブなコンテンツを発信できるため、FAMトリップの、発信者が自身の発信スタイルを活かしながら旅行先の雰囲気や体験をシェアするという点と相性が非常に良いと言えるでしょう。
FAMトリップのメリット
続いて、FAMトリップのメリットについて述べます。
まだ知られていない地域や場所の魅力を効果的に発信できる
FAMトリップは、まだ知名度が高くない地域や場所の魅力を効果的に伝える手段として特に有効です。ガイドブックやテレビ、雑誌では知名度の高い地域がどうしても有利になりがちですが、FAMトリップではインフルエンサーなどの発信者が自身の表現方法で体験をシェアします。
そのため、地域自体に知名度がなくても、発信者に良い体験を提供すれば、その地域の魅力的な内容がダイレクトにユーザーにシェアされるため、大きな効果が期待できます。実際、日本の多くの地方自治体がインバウンド観光プロモーションの一環としてFAMトリップを採用しています。
日本のあまり知られていない観光地や施設、店舗、商品を海外に紹介する際には、FAMトリップが非常に効果的です。
ユーザー目線の発信により、信頼性の高い情報を提供できる
FAMトリップの大きなメリットは、単なる観光地紹介にとどまらず、地域の本質的な魅力をユーザー目線で発信できるという点です。
例えば、近年、訪日観光客のニーズは本物志向や体験重視が強まってきています。FAMトリップはそのような時代のニーズに応じて柔軟にプログラムを設計・調整し、情報を発信することができます。
さらに、FAMトリップの特長として、メディア関係者やインフルエンサーが直接体験した内容をそのまま伝える点が挙げられます。
この実体験に基づく情報発信は、ターゲットユーザーからの信頼性と興味を高める効果があります。体験に基づいた生の声がターゲットユーザーに伝わることで、その地域への訪問者増加につながる可能性が高まります。
プロモーションに継続性があり、中長期での効果が見込める
従来の観光プロモーションは雑誌やテレビなど一過性のメディアが多かったのですが、FAMトリップはSNSやブログなど、情報がアーカイブされるプラットフォームを活用することが多いです。これにより、そのメディアやインフルエンサーのファンに直接情報を届けることができ、中長期的な効果が見込めます。
また、インフルエンサーがシェアした内容を見たファンが、実際にその土地に訪れ、そしてそのファンが自身のSNSやブログで観光体験をシェアすることで、さらに多くの観光客を引き寄せるという良い循環も期待できます。
ユーザー視点でのアピールポイントを分析できる
冒頭で述べたように、現在多くの観光地や地域コミュニティにとって、インバウンド観光の需要を持続可能に発展させることは重要な課題です。この実現には、ユーザー目線での価値提供、PRが鍵となります。
FAMトリップの魅力の一つは、発信者が自由に旅行の体験や感想を発信できる点です。そのため、発信内容を分析することでどの要素が実際の旅行者に響くのかが明らかになります。
同じ体験であっても、国や地域によって“刺さる”ポイントが異なります。FAMトリップでは、発信されたコンテンツの分析を通じてその地域に最も響くメッセージを特定し、今後の効果的なアプローチを見つけ出すことができます。
FAMトリップのツアー内容
FAMトリップのツアー内容は地域や目的によって多岐にわたりますが、共通しているのは「地域の特色を体験を通じて理解する」点です。一般的には、以下のようなプログラムが含まれます。
視察と説明会
ツアー参加者を地域の観光施設やランドマークにお連れし、歴史や文化、地域の魅力について説明します。これにより、参加者は地域の観光資源について深い理解を得ることができます。
文化体験
その地域特有の文化や習慣に触れる体験プログラムを提供します。例えば、茶道や和紙作り、温泉体験、伝統工芸などが挙げられます。
日本にはその地域独自の歴史的な文化や習慣が多く存在しており、そこに興味を持つ訪日観光客の方も多いです。そのため、FAMツアーではこうした文化体験を重視し、積極的に取り入れることが多いです。
宿泊
訪日外国人観光客の誘致が目的のFAMトリップでは、宿泊を通じてツアー参加者に地域の魅力を感じてもらうことも重要です。
宿泊施設には、その地域の魅力が伝わる旅館や温泉宿が選ばれることも多いですが、近年ではあえて民泊に宿泊してもらうケースも増えてきています。
基本的には、1回のFAMトリップ期間内で複数タイプの宿泊施設を提供することが多いため、参加者に発信してもらいたい宿泊形態をいくつか選んで提供する形になります。
食事
地域の魅力的な食材や料理をツアー参加者に振る舞います。高級日本料理や地域の郷土料理や名物料理、地元で人気の飲食店への招待などが考えられます。
食事と文化体験の掛け合わせは、デジタルメディアとの相性も良く、有効な取り組みです。例えば、板前さんによる調理実演、うどんやそば打ち体験、食事と一緒に振る舞う日本酒の酒蔵見学や試飲など、多様なアプローチが考えられます。
食事を通じて、その地域の食文化の魅力を十分に体験してもらうことが重要です。
地域住民との交流
地元の人々との交流を通じて、その地域の生活や文化を体感していただきます。これにより、参加者は地域の魅力をより深く理解することができます。
地域住民との交流には様々な内容があります。以下に例を述べます。
地域産業の体験
農業体験や漁業体験、伝統工芸の工房訪問など、地域の産業に触れる機会を提供します。
交流イベント
ウェルカムパーティーや地域のお祭り、イベントへの参加を通じて、地元の人々と交流していただきます。お祭りでは運営側として準備や当日運営を体験してもらうこともあります。
教育機関との交流
その地域として移住や教育機関との連携を強めていきたい場合は、地元の学校訪問や授業参観、大学生との意見交換会などが行われることもあります。
これら地域住民との交流を通じて、参加者は純粋に観光だけでは得られない唯一無二の体験ができます。地域の人々の生の声を聞き、実際の生活に触れることで、その土地の本質的な魅力や課題を理解し、より深い関係性を築くことができます。
FAMトリップ成功のためのポイント
FAMトリップを成功させるために重要なポイントについて述べます。
まずはじめにターゲットと伝えたいメッセージを明確にする
FAMトリップの施策を成功させるためには、まずターゲットと伝えたいメッセージを明確にすることが重要です。ターゲットの属性や興味を深く理解し、整理することで、より効果的なプロモーションが可能になります。
このプロセスを通じて、最適なメディアプラットフォームを選定し、適切なコミュニケーション戦略を立てることに繋がります。
ここでは、ざっくりとしたターゲティングではなく極力具体的なターゲット像を描くことで、より精緻なアプローチが可能となり、伝えたいメッセージが一貫性を持って届きやすくなります。ペルソナを作成するのも良いでしょう。
複数のメディアを掛け合わせて、FAMトリップの効果を大きくする
複数のメディアを掛け合わせることで、広範なリーチと高いエンゲージメントを実現できます。各メディアの強みを活かしながら、全体的に統一感のあるプロモーション戦略を構築することで、施策の効果を最大化します。
たとえば、Webサイトでの露出と、FAMトリップ中のSNSでのリアルタイムな情報発信を組み合わせるなどです。リアルタイムの発信により、参加者のその時の体験や感情が即座に共有されることで、ファンの期待値も高まります。
また、オンラインとオフラインを融合させたプロモーションもおすすめです。
知名度ではなく目的に応じたメディア・インフルエンサーの選定
FAMトリップに招待するインフルエンサーは、単に知名度やフォロワー数だけで選ぶべきではありません。インフルエンサーのパーソナリティやSNSプラットフォームの特性を分析し、事前に設定したターゲット層との相性が良く、かつこちらが伝えたいメッセージを適切に伝えてくれそうなメディア・インフルエンサーを選ぶことが重要です。
また、発信内容は基本的には発信者に全て委ねる事が重要です。こちらから文章やアピールポイントなどクリエイティブの指定を多く行うと、インフルエンサーやメディアを選定した意味が薄れ、FAMトリップのメリットもなくなってしまいます。発信者の視点や発信スタイルを活かすことで、より自然で信頼性の高い情報発信が可能になります。
事前・ツアー中・事後に参加者との密な連携で信頼関係を構築する
FAMトリップの成功には、良好なコミュニケーションが不可欠です。ツアー前には、参加者一人ひとりのニーズや興味を把握し、ツアー中にスムーズにコミュニケーションが取れるように準備しておくことが重要です。
ツアー中は、参加者と積極的に会話を交わし、彼らのフィードバックや意見をしっかりと受け取るよう努めてください。
ツアー後も迅速な連携が求められます。参加者の熱が冷めないうちに、素材提供など発信の準備を整えるためのフォローアップを行うことが大切です。
フォローアップの段階では、長期的なパートナーシップを築くことを目指して、継続的にコミュニケーションを取り続けると良いでしょう。これにより、参加者との信頼関係を深め、将来的なコラボレーションの機会を広げることが可能です。
ポイントを押さえて、FAMトリップの費用対効果を最大化する
FAMトリップは、ポイントを押さえて適切に運営することができれば、地域の魅力をターゲットにダイレクトに伝えることができる非常に効果的な施策となります。
当社では、日本の複数の自治体のFAMトリップを担当してきた経験豊富なコンサルタントが、課題のヒアリングから実施まで幅広くサポートいたします。まずは初回無料ヒアリングで、現在のお悩みをお聞かせください。
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