海外進出で失敗しないための経営の注意点: 多国籍ビジネス経験者が解説

 外務省の「海外進出日系企業実態調査」によると、現在7万を超える日本企業の海外拠点があるとされていますが、今後も海外市場での売り上げ拡大やコストダウンを目的とした海外進出企業は増える見込みです。

日本企業が海外進出を行い、海外に拠点を構えて経営をする際には、日本ではあまり起こりえないトラブルや不測の事態が発生することがよくあります。事前にそのようなケースを想定して経営上のリスクを少しでも可視化しておくことで、実際に海外でトラブルが起こった際の臨機応変な対応やトラブル自体を未然に防ぐことにつながります。

筆者がこれまで4か国5拠点で現地法人の立ち上げから経営までを行ってきた経験から、海外進出のメリット、デメリットを含め、実体験を交えながら海外拠点の経営上のリスクを解説していきます。

海外拠点での経営を行う上でリスクヘッジは非常に重要な要素となりますので、本記事をご覧になって少しでもお役に立てれば幸いです。

Contents

海外進出のメリット

市場の拡大:新しい市場での売上の増加

昨今では日本国内市場の縮小や消費の冷え込みから、海外に販路を拡大して売上を確保し、事業拡大に繋げようとする企業は大企業だけでなく、中小企業でも多くのニーズがあります。

海外進出で売上を拡大させている企業例として、コンビニ業界は日本国内での飽和状態から国内市場の出店余地が限られてきており、コンビニ各社は海外へ販路拡大攻勢をはかって各社店舗拡大争いを見せています。ファミリーマートは2024年9月30日現在で、国内店舗数16,268店舗・海外店舗数8,172店舗という比率となっており、最大手のセブンイレブンも2022年時点で国内店舗数22,700店舗・海外店舗数80,000店舗を突破しています。

また、海外進出の方法として日本企業ので多い進出方法はプロダクトアウト型が主流と言えますが、プロダクトアウト型やマーケットイン型での海外進出を見込んだ事例をご紹介します

プロダクトアウトでの海外進出

既に日本市場で売れている自社製品やサービスを、海外の新市場で販路を拡大していくパターンです。

  • 当社のデジタルサービスは日本で多くのシェアを取っているので海外市場でも流行るのではないか。
  • 当社の製品は品質が良く海外製品と比較しても、耐久年数や使い勝手がいいので海外でも売れるはず。
  • 当社の水産加工品は、鮮度の良い日本の海産物を使用しており、海外でも日本食が流行っているので売れるのではないか。

マーケットインでの海外進出

ユーザーのニーズが一定程度顕在化している市場に、製品やサービスを投下していくパターンです。

  • 既に販路がある海外市場でユーザーの声をもとに、既存のサービスをよりニーズにマッチさせてローンチしたい。
  • 顧客の声をもとに(PB)プライベートブランドを販売していきたい。

コスト削減:海外生産拠点の多様化によるメリット

製造業やオフショア開発拠点を海外に展開し、コストダウンを図ることは海外進出で一般的です。アジア圏を中心に、日本企業も多くの海外生産拠点を構えています。

日本企業の海外生産拠点の例として、ユニクロブランドを展開するファーストリテイリング社はベトナムやバングラデシュに生産拠点を設けています。また、多くのIT企業がベトナム、フィリピン、バングラデシュなどにオフショア開発拠点を構え、IT人材の確保とコストダウンを進めています。

さらに、単にコストダウンを目的とするだけでなく、生産拠点の多様化には他にもメリットがあります。複数の海外拠点で生産活動を行うこと自体がリスクヘッジとなり、優秀なグローバル人材の確保にも寄与します。

例えば、ファーストリテイリング社がベトナムにのみ生産拠点を設けていた場合、デモや災害によって工場の稼働ができない状況になるかもしれません。これはベトナム単体市場で見ればカントリーリスクそのものですが、バングラデシュや他国拠点の工場が稼働可能であれば、それらの拠点で生産量を増やすなどの対策を講じることでリスクヘッジとなり、カントリーリスクを分散できます。

IT企業も同様に、オフショア開発拠点を複数の国に設ける傾向があります。筆者が現在滞在しているベトナムでは、近年オフショア開発の市場がレッドオーシャン化しつつあり、IT人材の人件費も急上昇しています。そのため、ベトナム以外に第三の海外拠点を検討している日本のIT企業が多く、海外拠点の多様化によるカントリーリスクの分散を図る傾向が見られます。

ブランド力の向上:グローバル展開によるブランド認知の向上

消費財メーカー等の市場規模の大きい商品を販売する企業は、グローバル展開で自社商品ブランドを海外市場で認知させて行き、ブランド力を向上させていく事が出来ます。

Apple

MacbookやiPhone等の自社製品のブランドの地位を世界規模で確立して、製品のマーケティング活動を単体の国ではなく世界規模で統一させることでブランドイメージの向上と強化をしています。

味の素

日本の食卓でもおなじみの調味料で古くから仮定になじんでいますが、日本だけでなく海外市場でもそのブランド力は高く、「Ajinomoto」という名前が消費者に広く知れ渡っており、日本企業の海外進出成功事例の企業としても100年以上前から海外進出をして現在では海外売上高比率60%となるグローバル企業となります。

ユニクロ

日本でもおなじみのユニクロブランドは、高品質な機能性製品を低価格で販売する戦略で海外進出をしてきました。各国での戦略的なブランディングやキャンペーンで認知を高めました。ベトナムのユニクロ1号店が出来た際には、連日長蛇の列が出来て整理券を配っていた当時の様子を覚えています。

海外進出のデメリットとリスク

リスクヘッジ

法規制の理解不足によるリスク

進出国で新しいビジネスを展開する際、現地の法規制に抵触する可能性や税制の問題が立ちはだかることがあります。ASEAN諸国のような発展スピードが速い国では頻繁に法改正が行われ、知らずに違反してしまうこともあります。以前、タイの飲料メーカーがビールのプロモーションを行った際、タイでは酒類の商品のプロモーションが禁止されているにもかかわらず、アサインしたインフルエンサーがSNSに商品のラベルを映してしまい、当局から指摘を受けて問題になったケースがありました。

文化や言語の違いから生じる誤解

日本企業では、このようなケースが特に多く、日本の商習慣や日本人同士のハイコンテクストなコミュニケーション方法をそのまま海外で行った結果、相手に誤解を与えてトラブルに発展することがあります。初めて海外赴任をした担当者や初めての海外進出を行う企業様は、現地事情が詳しくわからず、些細なことで従業員と労務上のトラブルになることがあります。

例えば、フィリピンで従業員が「雨なので自宅勤務を希望する」と申請してきた場合、日本では雨による出社不可は受け入れにくい理由かもしれません。しかし、東南アジアの一部地域ではインフラが脆弱で、雨季の冠水によって移動が困難になることもあります。このようなケースで現地事情を理解せずに、「日本ではあり得ない」という理由で一方的に申請を却下してしまうと、従業員からすると「危険を冒してまで出社させられる」というメッセージに受け取られてしまう可能性もあり、会社への不信感が募ります。現地事情や文化を知っているか否かで対応も変わるため、些細な誤解や認識不足からのトラブルが起こり得ます。

通貨の変動や経済状況の変化

近年の為替の急激な変動は、海外事業において大きなリスクとなり得ます。海外に生産拠点を構える際、為替変動によってコストが大幅に上昇したり、海外売上が日本円ベースで目減りする可能性があります。

また、東南アジア諸国の成長市場では人件費の上昇率も懸念点となります。短期的には大きなリスクがない場合でも、5年から10年のスパンで見ると、海外拠点の人件費や不動産価格の上昇が経営に大きな影響を与えます。例えば、ベトナムでは人件費やホーチミン市などの大都市中心部の不動産価格が上昇し、中長期的なコスト増を懸念して拠点を別の都市や他国に移す企業も見られます。

税務上のリスク

海外拠点の税務リスクは、外資系企業では特に注意すべきポイントです。

近年、日本企業の進出が多いベトナムやフィリピンでも、現地法人が適切な事業運営と納税を行っていても、外資系という理由で現地税務署から追徴課税勧告を受けることが多くあります。これらの勧告は、当局がノルマを達成するために取りやすいところから取り組む傾向があるためです。

場合によっては、納税額の減額を条件に担当者から非公式取引を求められることもあります。

オフショア開発企業などで、現地法人をコストセンターとして毎年赤字または僅かに黒字で決算している企業は、事業開始後5年ほどで税務署の立ち入りや本来必要のない納税勧告を受ける可能性があります。

日本式マネジメントのリスク

日本企業が海外拠点の運営でうまくいかない大きな要因の一つです。そもそも日本式のマネジメントはグローバルスタンダードではないという前提を持つことが重要です。日本本社のマネジメント方針をそのまま海外拠点の従業員に適用することで、コンフリクトが生じ、従業員の定着が難しくなり、早期離職を招いたり、従業員のモチベーションが下がり、生産性に影響を与えたりすることがあります。

また、日本では所謂「マルチタスク」が当たり前で、「言わずもがな」などが常識とされていますが、海外では一般的にシングルタスクは、1つのことしかできないという捉え方ではなく、自分の職責であるプロフェッショナルな領域を担当することが前提となっています。この前提を理解せず、経験を積ませるために人事担当者にマーケティングの業務を依頼したり、エンジニアに営業のサポートを頼んだりすると、非常に困惑され、良い結果に繋がりません。

経営方針の現地適応が上手くいかない場合のリスク

海外拠点を生産拠点として設立する際、単にコストカットを目的とした経営を行うと、現地の従業員への福利厚生や教育投資が疎かになり、従業員はそのような方針を敏感に感じ取ります。

これはIT企業のオフショア開発拠点でもよくあるケースですが、コストカットを目的に海外進出して従業員への必要な投資を怠ると、従業員が定着せずスキルアップもままならず、強い組織体制が構築できずに事業拡大ができないケースや、必要な教育投資を行わないために組織全体のレベルアップができず、品質や納期が改善されないまま事業が縮小していくケースもあります。

また、本社の意向が現地法人の従業員に納得のいかない方針だったり、方針のブレが大きく現地の従業員が対応に困惑する場合や理不尽に感じることに対して説明を怠り、一方的に押し付けてしまうと、従業員のモチベーションが下がり、会社への信用が薄れて早期離職に繋がります。特に優秀な人材ほど、より良い条件でのオファーが頻繁に来るため、会社に魅力がないと感じると定着は難しくなります。

筆者の実体験から学ぶ海外経営の注意点

海外拠点立ち上げにおける具体的な課題と解決策

社内の各ステークホルダーとの目線合わせは事前に行う

  • 何を目的として海外拠点を設立するのか
  • どのような方針で現地法人を運営するのか
  • 不測の事態に備えたスケジュールを立てているか
  • 様々なリスクと対策が事前に把握できているか
  • 中長期的な事業成長を目指す為の事業計画になっているか

会社組織が海外進出をする際、社内のステークホルダー間でこれらの目線合わせができていない場合、海外事業を進める上で認識の齟齬や理解不足により、事業運営に支障をきたすことがよくあります。

特に初めて海外進出をする企業では、社内に知見を持った人材が少ないため、海外事業の開始後にトラブルが発生するとすぐにネガティブな印象を持たれてしまうことがあります。また、日本で当たり前のことが海外では通用しないという前提が理解されていない状態で意思決定が行われたり、短期的な利益やすぐの結果を求めるケースも多く、このような状態で事業を開始して成功に結びつくことはほとんどありません。

事業開始初年度はトライ&エラーから学ぶ期間と捉えるべき

初めての海外進出後、すぐに成功することはないという前提を持つべきです。

初年度は、事業の結果を優先せず、どれだけチャレンジを行い、多くの失敗体験から学びを得て組織の成長に繋げられるかがポイントとなります。事業を育てるという意識が重要となります。

このとき、短期的な利益のみを求める視点で意思決定を行うと、目先の成功にリソースを注ぎ、本来注力すべき現地社員の教育や組織強化といった重要施策が疎かになり、組織は同じ失敗を繰り返してしまいます。これにより、失敗から学べず、人材の定着もしない悪循環が生まれます。

あるべき姿としては、海外拠点を立ち上げた際にパイロットプロジェクトを実施し、失敗や課題が発生した場合には詳細な振り返りを行い、改善策と必要なトレーニングを計画する期間を設けることです。その間、別のプロジェクトや無理なアサインは行わず、失敗から学び強化を行うことに注力すべきです。それを繰り返すことで同じ失敗をしなくなり、チームのスキルや結束力が高まり、組織が強化されます。事業計画を立てる際にも、これらの投資期間を設けることが必要です。

最初から目先の売上確保を目的化してしまうと、健全な振り返りや改善を行う時間が取れず、成長や改善ができない組織になってしまいます。

初年度の事業計画はバッファを多く設け、参考程度に捉えるべき

事業形態や規模、進出方法により異なりますが、最初の事業計画はあくまで参考程度に捉え、3年後や5年後にどのような姿を目指すのか、その際の定量的な目標値を含めて現実的な数字や損益計算書を作成すべきです。いくら見栄えの良い事業計画を作成して株主に説明をしたり社内稟議を通しても、それを達成できなければ意味がありません。

また、1〜2年で撤退する前提で海外進出をする企業はないと思いますので、最低でも3年後や5年後のあるべき姿から逆算し、そこに到達するにはどのようなアプローチで海外拠点の組織を作っていくのかを考慮し、無理のない現実的な事業計画を立てるべきです。そして、そこにかかる投資コストを検討し、投資に値するのかやリターンが得られるまで待てるのかを判断すべきです。

外資100%で登記が出来ない場合は、現地の株主選定は慎重にすべき

業種や進出形態、進出国によって制度は異なるため一概には言えませんが、現地法人を登記する際に外資100%(つまり日本本社100%株主)で登記できない場合があります。理想的には、自社の関連企業などから出資を受けることですが、多くの企業はすでにグローバル展開をしていたり、大手企業でない限りは最初からそのオプションを利用できません。

その場合の対策として、すでにその国に進出している繋がりのある企業に一部株主になってもらうケースや、現地の会計・法律事務所に一部株主になってもらうケースがあります。

ここでの注意点として、前者の企業や現地パートナーに一部株主になってもらう場合、事前に共有した事業計画通りに進まないと、後に説明や調整が難しくなったり、株主として不要な口出しが入り、海外拠点の事業運営がやりづらくなる場合があります。

また、現地の会計・法律事務所の多くが株主サービスを提供していますが、これらは基本的に月次の会計サービス契約を前提としたサービスです。仮に現地法人を運営し始めて委託する会計に問題があったり、料金が高くて他の会計事務所に切り替えたい場合でも、この株主サービスの契約がネックとなり事業者の切り替えができず、長期的に無駄なコストを払い続ける可能性があります。

このように、海外拠点設立で現地法人の登記を急ぐあまり、外資規制により急いで株主を探し、安易に第三者に株主になってもらうと後々トラブルを招くことになりかねません。これらを未然に防ぐためにも、自社業態における進出国の外資規制調査を行い、現地株主が必要な場合は事前に信頼できる株主を探しておく必要があります。

専門家による第三者視点でのヘルスチェック体制を構築する

このような第三者によるヘルスチェック体制の構築は、特に初めて海外拠点を設立する企業にとって重要な役割を果たします。

日本企業の海外進出によくあるケースとして、日本本社の経営陣に海外事業の知見がなく、海外拠点の動きが見えないため、進捗状況や懸念点が可視化されずに不安が募り、現状の数字のみで意思決定を行ってしまうことで、海外拠点に対してネガティブな印象を抱くことがあります。

その結果、海外拠点の担当者や現地従業員との心理的な対立構造が生まれてしまうことがよくあります。日本側から見る海外拠点の状況は、物理的な距離も心理的な距離も遠く、正確な状況把握や判断がしづらい傾向があります。これは、社内からの報告が正しいか否かを判断する軸がないことが原因です。このような状況を防ぐため、海外事業の知見が豊富な第三者による中立的なヘルスチェック体制のサポートを受けることで、進捗の把握や円滑な意思決定が可能になります。

推奨するヘルスチェック体制の構築方法として、自社で海外事業の責任者を立てる際、立ち上げ当初から顧問やアドバイザーとして第三者に参加してもらうことで、日本本社と海外拠点の双方の相談役としての役割を果たし、外部の中立な立場から健全なヘルスチェック体制を築くことができます。

トラブルが多発し、事業全体に懸念点が多い状況になってから外部のヘルスチェック体制を構築するケースもありますが、それまでの経緯や定性的な状況の分析に時間を要するため、事業立ち上げ当初からアドバイザーが参画した方がトラブルを未然に防ぎやすく、より効果的と言えます。

人材採用と管理:異文化マネジメントの実態

ローカルのキーパーソン人材の採用と育成に全力を注ぐべき

海外拠点の経営において、現地のキーパーソン人材の採用と育成は最重要事項の一つです。筆者はこれまで4か国5拠点で現地法人の立ち上げから経営を経験してきましたが、この経験を通じて、多様な文化の中でのマネジメントの要としてローカルキーパーソンの重要性を痛感しています。

初年度の課題とキーパーソンの役割

海外拠点の立ち上げ初年度は、試行錯誤のフェーズにあります。この時期は経営方針や事業進捗が定まらず、福利厚生を充実させることも難しいため、離職率が高くなりがちです。そこで、ポテンシャルの高い人材を早期に採用し、その人材を離職させず育てることが、現地法人責任者に求められる重要な能力となります。

ローカルマネジメントの重要性

日本企業が海外拠点を持つと、現地では外資系企業としての立ち位置を取ります。そのため、日本人の責任者も外国人扱いとなります。立ち上げ初期の段階では、責任者がプレイングマネージャーとして現場の動きに直接関与できますが、従業員が増えると、現場の細部にまで目が届かず、マネジメントリスクが高まります。

ここで重要となるのが、ローカルのキーパーソンをマネジメントにアサインすることです。彼らが現地従業員の管理をすることで、責任者と現場メンバーの橋渡し役を担ってくれます。特に、現地マネージャーによるマネジメントは、現地従業員との意思疎通がスムーズで、文化的な特徴も理解した上で指導ができるため、効率的かつ的確な判断が可能になります。

成功の鍵:キーパーソンの成長と活躍

筆者が各国での経営で最も注力してきたのは、この現地キーパーソンの採用と育成です。彼らの成長と活躍がなければ、これまでの実績は実現しなかったと考えています。現地キーパーソンは、海外拠点の成功を左右する重要な存在であることを忘れてはなりません。

求人票と雇用契約書の業務内容は詳細かつ明確に記載すべき

現地採用における注意点

海外での現地採用では、日本とは異なり、求人募集要項や雇用契約書に詳細に書かれた業務内容のみがそのポジションの業務とみなされます。それ以外の業務は担当しなくても良いと捉えられがちです。

採用時のミスマッチとパフォーマンス評価

海外では、日本のような終身雇用は一般的ではないため、採用ミスマッチが発生した場合、試用期間中にパフォーマンスを見極めることが重要です。この期間中には適切な指導が必要であり、雇用契約書に記載された業務内容が遂行できていないことや、月次の1on1ミーティングや報告時にパフォーマンスが不足していることを日付と共に文書で記録することが大切です。

法的トラブルへの備え

退職やポジションの降格などのペナルティを課す際には、業務内容に沿ったパフォーマンスができていなかったという具体的なエビデンスが求められます。多くの海外拠点で発生する法的な問題は、退職者が会社を訴えるケースにありますが、エビデンスがあれば会社を守ることができます。解雇の際にも明確な証拠を提示することで、従業員もそれを認めざるを得ない状況となります。

このように、詳細かつ明確な業務内容を求人票や雇用契約書に記載することは、企業を法的トラブルから守るために欠かせない要素です。

現地従業員への指示や説明はロジカルかつ明確に

海外でビジネスを行う際、ロジカルかつ明確なコミュニケーションが重要です。私自身、日本人特有のハイコンテクストなコミュニケーションによる誤解やミスを経験してきましたが、英語脳に切り替えることが鍵となります。

日本人とアメリカ人のコミュニケーションスタイル

日本人は、世界で最もハイコンテクストなコミュニケーションを行う民族として知られています。これに対し、アメリカ人はローコンテクストなコミュニケーションを行う民族として対極にあります。

異文化コミュニケーションでの重要ポイント

アジア圏ではハイコンテクストなコミュニケーションが一般的ですが、海外拠点で異文化コミュニケーションを行う際は特に注意が必要です。YES/NOをはっきりさせ、明確な指示と具体的な説明を心がけ、相手の理解度を確認するコミュニケーションが認識齟齬を防ぎます。

誤解を避けるための改善策

曖昧な指示や説明は、誤解を生み、意図しない成果に繋がります。このような状況が発生した場合、自分のコミュニケーション方法を見直すことが大切です。どこかで意図しない伝わり方が起きていることに気づいたら、次回はその点をより明確に伝えましょう。これにより、相手にも意図がしっかり伝わるようになります。

法律とコンプライアンス:必ず押さえておくべきポイント

信頼できる弁護士事務と担当弁護士を見つける

海外進出時の弁護士事務所選び

初めて海外進出をする企業は、多くの場合、進出国で日系の弁護士事務所を探すことが一般的です。多くの弁護士事務所は会計と法務サービスの両方を提供しており、これらを同時に契約するケースが多いです。しかし、頻繁に法律相談が見込まれない場合は、法務サービスをスポット契約にすることでコストを抑えられます。また、不安がある場合は、月次の法務サービスを保険として契約しておくことをおすすめします。

担当弁護士の選定ポイント

特徴として、基本的には日系企業であれローカル企業であれ、担当する弁護士は現地国籍を持つ弁護士になります。そのため、担当弁護士が自社の事業内容や関連事業の経験を持っているかを事前に確認しましょう。可能であれば、現地でのつながりがある企業から担当弁護士を紹介してもらうと安心です。特に、進出国で新しいサービスを展開する際は、法整備が追い付いていないケースがあり、事業を進める中でトラブルが起こる可能性があります。事前に信頼できる弁護士のお墨付きがあれば、何かあった際にも安心です。

トラブルへの対策

海外拠点でよく見られる雇用に関わるトラブルの際、迅速に対応してくれる弁護士を選ぶことが重要です。初回のヒアリングで、サポート体制や事例を確認し、弁護士が実際にどのようなサポートを提供できるかを理解しておきましょう。この準備があることで、予期せぬトラブルに対処しやすくなります。

海外進出を成功に導くためのステップ

メソッド

徹底した市場調査と戦略策定

海外進出の第一歩は、綿密な市場調査です。進出前に市場調査を行い、現地訪問を通じて定性調査を行いましょう。これにより、リスクを事前に把握し、戦略策定のヒントを得ることができます。初期の事業計画は、現実的な中長期の成長を見込んだ計画やスケジュールとすることが重要です。

初期投資のリスクヘッジ方法

初期投資を無駄にしないため、事前調査やテストマーケティング、テストプロジェクトを実施し、海外メンバーとの働き方や自社メンバーの適応状況を確認してから、大きな投資を検討しましょう。

現地ネットワークの構築

現地でのトラブル発生時やリソース不足の際に頼りになるネットワークを構築することは重要です。現地の同業他社との繋がりを早期に構築するほか、自社従業員以外に第三者的な立場で頼れるアドバイザーや相談相手を見つけておきましょう。

最後に

海外進出は、日本国内とは異なるさまざまなハードルがありますが、適切なリスクヘッジを行いながら事業を育てる姿勢があれば、確実な成長につながります。当社では、海外進出の初期相談からスポットでの顧問やコンサルティング、現地での事業立ち上げ支援、さらには事業拡大のための海外マーケティングまで、多くの実績を活かして貴社の海外進出をサポートいたします。

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