フィリピン進出~主要政府機関略称一覧とその役割を解説~

フィリピン進出

1,はじめに

人口が1億人を超え2050年代まで人口ボーナスが続くフィリピンでは、日系企業の進出国としても近年より注目が高まっています。2022年10月時点でのフィリピン進出日系企業数は1,434社となり、「卸・小売り」、「IT/情報通信」、「製造業」を中心にフィリピン進出企業が増加しております。

またASEAN諸国と比較しても、平均年齢が2025年時点で26歳(日本は49歳)と非常に若く、国民の約10%が海外で労働をするグローバル人材の豊富さや、経済成長による国内消費市場の拡大等、非常に魅力的な要素が多い市場と言えます。当社でも過去15年間、現地のフィリピン人の方々と共に様々なビジネスに携わり、事業立ち上げや法人登記、各種調査や現地企業との商談や交渉等をしてきた中で、フィリピン特有の政府機関名称や各用語の略称が多用される場面が非常に多く、我々日本人は慣れていないが為に都度都度その略称の意味と役割等を理解した上で意思決定やコミュニケーションをとる必要がある場面が多くあり、今後フィリピン進出をする日本企業向けに、フィリピン特有の略称の意味や役割を分かりやすく解説していきます。


2,フィリピンの主要政府機関略称一覧

それぞれの略称と英語正式名称

  1. SEC: 証券取引委員会 (Securities and Exchange Commission)
  2. BIR: 国税局 (Bureau of Internal Revenue)
  3. DOLE: 労働雇用省 (Department of Labor and Employment)
  4. LGU: 地方自治体 (Local Government Unit)
  5. SSS: 社会保障制度 (Social Security System)
  6. Pag-IBIG/HDMF: 持家促進相互基金 (Home Development Mutual Fund / Pag-IBIG Fund)
  7. PH: 医療保険制度(Philhealth)
  8. PHIC: フィリピン健康保険協会 (Philippine Health Insurance Corporation)
  9. POEA: 海外就労促進庁 (Philippine Overseas Employment Administration)
  10. OWWA: 海外労働者福祉庁 (Overseas Workers Welfare Administration)
  11. DFA: 外交省 (Department of Foreign Affairs)
  12. DIO: 移民局(Department of Immigration and Overstay)
  13. DOH: 保健省 (Department of Health)
  14. BI: 移民局 (Bureau of Immigration)
  15. IC: 保険委員会 (Insurance Commission)
  16. NLRC: 国立労働関係委員会 (National Labor Relations Commission)
  17. TESDA: 技能開発・職業訓練庁 (Technical Education and Skills Development Authority)
  18. CFO: フィリピン人海外庁 (Commission on Filipinos Overseas)
  19. NBI: 国家捜査局 (National Bureau of Investigation)
  20. PNP: フィリピン国立警察 (Philippine National Police)
  21. CAAP: フィリピン民間航空局 (Civil Aviation Authority of the Philippines)
  22. PEZA: 経済特区庁 (Philippine Economic Zone Authority)

フィリピン進出-~主要政府機関略称一覧とその役割を解説

各主要機関の役割と企業担当者が覚えておくべき事

これらの各略称は数も多いことながら、日本人には馴染みのない用語や機関も多い事から、なかなか覚えづらい用語となります。

結論から申し上げますと、これらを全て暗記する必要は無く、特に頻繁に出てくる用語のみ正式名称と役割を理解しておけば、その他の用語は出てきたときにこのページを参照して頂ければ判断に困る事は無くなります。

以下に、特に覚えておくべき用語と役割や使用機会について解説していきます。

  1. SEC: 証券取引委員会 (Securities and Exchange Commission)

    SECに関しては、フィリピンに進出をする企業は必ず見聞きする略称で、証券取引委員会を表します。具体的にどのような場面で出てくるかと言いますと、フィリピンで法人設立や法人登記を管轄する機関で、現地法人登記時の書類提出や手続き上必ず関りを持つ政府機関となります。

    法人登記においては、日本で言う法務局に近い役割を担う機関となりますが、フィリピン国内の企業活動の監督や管理を行い、各書類等の提出義務を怠った場合には処罰を課したり、コンプライアンスの監視を行う役割を担います。

    SEC公式サイト:https://www.sec.gov.ph/
  2. BIR: 国税局 (Bureau of Internal Revenue)

    BIRは、財務省の傘下のフィリピン国内歳入庁が管轄する、日本で言う税務署の役割を担い、国内企業の税務調査をする機能を持ちます。こちらも、フィリピンに進出をする企業は避けて通れない機関となり、法人や個人の税務登録や税金の徴収をする上でかかわりを持ちます。

    この期間が日本企業を含む外資系企業には厳しい機関と言え、毎年の徴税目標を設けており、何かと指摘を行いやすい外資系企業にその矛先が向かう傾向があります。フィリピンの現地法人を運営する上で、お金の流れや税金等はクリーンかつ透明性を持たせ、エビデンスに基づく根拠を示すものを現地法人として持ち合わせている必要があります。

    過去の他社の追徴課税の事例として、オフショア開発拠点をフィリピンで運営し、現地法人は毎年ぎりぎり赤字決算を行うように調整し、法人税の支払いをしないように調整していた日系企業が、税務調査時に不当に利益を日本法人に計上していると指摘され、多額の追徴課税を課されたケースもあります。

    BIR公式サイト:https://www.bir.gov.ph/home
  3. DOLE: 労働雇用省 (Department of Labor and Employment)

    DOLEは、フィリピンにおける労働雇用省で労働者保護を目的として、フィリピン国内の雇用に関わるガイドラインや監督を担います。基本的には、従業員を5名以上雇用する事業者はDOLEへの登録が義務付けられており、また企業側の理由により解雇を行った際にもDOLEへの届出が必要となります。

    さらに、非常に多いケースとして、従業員や解雇された元従業員が不正解雇等の異議をDOLEに申し立てると、労働紛争の手続き等をDOLEが担いますが、特にフィリピンでは雇用が非常に守られている傾向があり、DOLEは労働者を守る立場から企業側への罰則や指摘を行う事もあります。

    フィリピンで現地雇用を行う際には、必ずDOLEの存在と役割を認識し、雇用や解雇に関する手続きをエビデンスをもって行う事が、現地法人運営上のリスクヘッジに繋がります。

    DOLE公式サイト:https://dole.gov.ph/
  4. PEZA: 経済特区庁 (Philippine Economic Zone Authority)

    フィリピンに進出をする企業はこのPEZAと呼ばれる経済特区エリアに登記を行い、様々な恩恵を受けることが出来ます。例として、法人税免除や輸入手続きの簡素化等の優遇措置があります。この制度はフィリピンが外国企業の誘致「FDI:外国直接投資」を行う上でのインセンティブとして定め、海外の投資を呼び込む目的で設置され、国内に400以上の経済特区が設置されています。

    具体的には、輸出型の製造業やIT/BPO企業等がこのPEZAの経済特区エリアでの事業を行う恩恵を受けやすい傾向にあります。しかしながら実態として、PEZAの申請には法人設立とは別のプロセスが必要となり、ITオフショア開発拠点でのフィリピン進出をする企業等は現地法人にあなり利益計上をしない企業も多く、追加の手続きの対応や時間を考慮し、PEZAの申請を行わないケースも多くなります。

    PEZA公式サイト:https://www.peza.gov.ph/
  5. SSS / PH / Pag-IBIG/HDMF: 社会保険関連機関

    フィリピンの現地法人で雇用をする際に、これらの社会保険関連機関への支払いと報告が義務付けられています。

    まず、SSSは年金制度となり、60歳以下の民間労働者及び使用者で月額1,000ペソ(約2,600円)以上の収入を得ているものは加入が義務付けられています。病気や障害を負った際に支払われる保証金や年金給付(退職年金、脂肪年金、障害年金)等が該当します。

    次に、PHは医療保険制度となり、フィリピンで働く全てのフィリピン人及び外国人の加入が義務付けられています。給付内容は、入院医療に関わる費用や外来医療等に対しての適用給付となります。しかしながら、この医療保険制度は日本ほど充実しておらず、日本企業等の外資系企業がフィリピンに進出し現地で雇用をする際には、福利厚生として民間の医療保険の加入をする事が人気の福利厚生となっています。

    最後に、Pag-IBIG/HDMFは一般的に言う住宅ローン基金となり、従業員が積み立てた基金は、低金利の住宅ローンや融資、配当金として利用され、雇用主と従業員の双方が毎月拠出し、給与から天引きされる仕組みとなります。

    SSS公式サイト:https://www.sss.gov.ph/
    PH公式サイト:https://www.philhealth.gov.ph/
    Pag-IBIG/HDMF公式サイト:https://www.pagibigfund.gov.ph/

フィリピンでの会社設立に関する記事:
https://social-zero.com/overseas-business/philippines-company-setup-faq/#i-7

3,まとめ

いかがでしたでしょうか。フィリピンでは、このように日本では馴染みがない各機関等の略称が多用され、現地従業員との会話や法人設立の際に必ずこれらの略称を目にする事となります。

主要な略称のみ、その正式名称や役割を認識しておけば、これが何を指していて何をすれば良いのか判断に迷わなくなります。

当社では、フィリピン現地法人の設立や従業員の研修、進出前後のアドバイス、海外事業立ち上げから事業拡大までを包括的に支援し成功させてきた、フィリピンに15年携わり実績のあるコンサルタントやフィリピン人メンバーが、初期段階から貴社のフィリピン進出のご支援いたします。

まずは、初回無料カウンセリングを通じて、貴社がまず何をすべきかという、次のステップを共に整理しましょう。是非お気軽にお問い合わせください。

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