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イオンモールの特徴と戦略
日本式ショッピングモールの導入
イオンは、日本で培ったショッピングモールの運営ノウハウをベトナムに導入しています。その特徴としては以下が挙げられます:
- ワンストップショッピング: 衣食住に関する多様な商品やサービスを1か所で提供
- エンターテインメント施設の併設: 映画館やゲームセンターなど、家族で楽しめる施設を充実
- 食品スーパーの充実: 新鮮な食材や日本食材を豊富に取り揃え
- 清潔で快適な環境: 空調完備、清掃に注力
この日本式のショッピングモール運営は、ベトナムの消費者にも高い支持を得ています。伝統的な市場や露店とは一線を画す、快適でワンストップな購買体験が人気を呼んでいます。
スーパーマーケットの店内でも、日本式の接客がよく教育されている印象を受けます。例えば、店内に野菜等の陳列をしに来た店員が裏に下がる際には、入り口でお辞儀をしてから下がります。これらはベトナム文化にはない為、このようなきめ細やかな従業員教育をしっかりと行っている印象を受けます。
価格設定と商品ラインナップ
イオンは、ベトナム市場に適した価格設定と商品ラインナップを展開しています。
価格設定においては、中間所得層をメインターゲットに据え、適正な価格帯を設定しています。高級志向よりも実用性と手頃さを重視した商品構成です。一方で、一部高所得層向けに高品質な日本製商品も取り揃えるなど、幅広いニーズに応えることを心がけています。
商品ラインナップでは、食品を中心に日本の人気商品を多数取り扱っています。日本食材の売れ行きは好調で、特に調味料、海産物、お菓子などが人気を集めています。また、日用品や家電、ファッションなどの非食品カテゴリーも充実しており、ワンストップショッピングを実現しています。
ここで、実際に現地のイオンのスーパーマーケットで販売されている商品の価格を見てみます。
日本でもお馴染みの寿司もベトナムでは非常に人気でスーパーマーケット店内入り口のもっとも人の目に留まる位置に商品棚を設けています。
- 高額部類の握り寿司12貫セットで157,000vnd[約930円]
- 中央値の握り寿司10貫+巻物セットで108,000vnd[約644円]
- 低価格の巻物セットで39,200vnd[約234円]
次に店内に綺麗に陳列されている野菜の価格を確認します。
- アスパラガス250g入り40,000vnd[約238円]
- トウモロコシ2本入り15,000vnd[約89円]
上記のように、日本ではスーパーマーケットで安価に手に入る寿司も海外ではかなり高い印象がありますが、ここベトナムのイオンのスーパーマーケットで販売されている寿司は日本クオリティーかつ安価で手が届きやすい価格帯でベトナム現地の消費者にも大変人気となっています。
マーケティング戦略
イオンは積極的なマーケティング活動を展開し、ブランドイメージの向上に努めています。
まず、ベトナム人に馴染み深い文化的イベントとのタイアップを行っています。旧正月(テト)の際には特別企画を実施したり、伝統的なドラゴンボートレースなどとも連携するなど、ベトナムの風習に合わせたプロモーションを展開しています。
また、ソーシャルメディアを積極的に活用し、若年層を中心に支持を広げています。InstagramやFacebookなどで、商品情報やイベント告知、キャンペーン情報を発信しており、ユーザーとの双方向コミュニケーションを図っています。
さらに、環境保護やCSR活動にも力を入れ、企業イメージの向上にも取り組んでいます。店舗内でのプラスチック削減運動や、地域社会への支援活動など、持続可能な事業運営にも注力しています。
ベトナム市場における競争優位性
以上のようなイオンの戦略的取り組みにより、ベトナム市場での競争優位性が高まっています。
日本ブランドの訴求力
イオンはベトナム消費者に馴染み深い日本ブランドとして認知されつつあります。日本の品質や信頼性、清潔さがイメージされ、高い支持を得ています。特に食品カテゴリーでは、健康志向やこだわりの高い顧客層を取り込むことができています。
イオンのプライベートブランドであるトップバリュー製品も多く陳列されており、日本でも馴染みのあるお菓子類が多く販売されています。
多くが30,000vnd(約180円)程度の価格帯のお菓子が多く、現地のベトナム人消費者でも購入しやすい価格帯となっています。
ワンストップショッピング体験
イオンモールは、ショッピング、食事、娯楽が一体となった魅力的な空間を提供しています。ベトナムの消費者にとって、この利便性の高い買い物体験は従来の市場や小売店とは一線を画するものです。週末や祝祭日には家族連れでにぎわい、新しい消費行動を生み出しています。
ランチの時間帯になるとモール内や近隣の企業で働いているオフィスワーカー達でスーパーマーケットに併設されているフードコートは賑わいます。
現地適応力
イオンは、ベトナムの文化や風習、消費者嗜好を細かく分析し、それに合わせた店舗運営を心がけています。食品ラインナップの現地化、プロモーションの工夫、CSR活動の実施など、ローカライゼーションにも積極的に取り組んでいます。これにより、ベトナム市場での浸透を着実に深めています。
商品ラインナップの拡充
食品を中心としたラインナップに加え、ファッション、家電、生活雑貨など、非food分野の強化にも注力します。ベトナム市場の嗜好に合わせつつ、日本ならではの高品質な商品を提供することで、ワンストップショッピング体験のさらなる向上を目指しています。
オムニチャネル化の推進
店舗での買い物体験に加え、オンラインショッピングの強化にも力を入れています。スマートフォンアプリの機能拡充や、ソーシャルメディアとの連携などにより、オフラインとオンラインの融合を図ります。ベトナム市場でのデジタル化の波に対応し、利便性の高い新しい買い物スタイルを提案していきます。
スーパーマーケットでのレジも電子決済が導入されており、現地ベトナム人はローカルの電子決済システムでの支払いが主流となっています。
出店加速と地方都市開拓
イオンのベトナム事業は順調に拡大を続けており、今後も大きな成長が期待されています。経済発展とともに高まる消費者ニーズに的確に応えられることが、イオンの強みとなっています。
今後の展望として、イオンはベトナム中部や南部への出店を加速させる方針です。ダナン、ニャチャン、カントーなどの主要都市を中心に、2025年までに20店舗体制を目指すとされています。地方都市への進出は、新たな消費者層の取り込みにつながると期待されます。