ベトナムは、製造業・IT・小売業などを中心に、急速に成長している市場です。日本企業の進出も引き続き顕著です。
しかし、ベトナム進出には、法律・税制・文化の違いなど、多くのハードルが存在します。「現地の規制が複雑で、自社単独での進出が難しい」という声も少なくありません。
本記事では、ベトナムを含むアジアを中心に日本企業の海外進出支援やビジネスに携わってきた筆者が、ベトナム進出を成功させるコンサルティング企業の選び方について、費用相場・契約形態・注意点を詳しく解説いたします。
※ 本記事では、日本企業の大半が選択する進出形態である現地法人の設立を前提に説明しています。投資のみでの進出や、最初から現地企業をM&Aする形でのベトナム進出については、説明の対象外としています。
Contents
ベトナム進出検討前に理解したい海外進出のフェーズ

「ベトナムに進出したい」。そう考えた際まずは何をすべきなのでしょうか? このセクションでは、ベトナム進出をする前に、まず決めるべき事柄について解説します。
そもそもベトナム進出を決定した場合、進出のためのプロセスは大きく分けて調査・計画・設立・事業展開の4つに分けられます。
これは基本的にはどの国に進出するとなっても同じです。
また、コンサルティング会社によってフェーズの区分が異なる場合もありますが、基本的な内容は同じなのでご安心ください。
調査
ベトナムの市場調査や マーケティング調査、現地視察が当てはまります。
進出先の市場規模、競合状況、消費者ニーズなどを調査し、自社製品・サービスの需要を把握します。
目的:市場の特性を正確に理解することで、進出の可否や最適な戦略を判断するため
計画
事業計画立案フェーズです。
前のフェーズの調査結果をもとに、具体的な進出戦略、事業計画、必要な投資額、収益予測などを策定します。
ここでは現地特有のリスク要因も考慮した現実的な計画が求められます。
目的:現実的な事業戦略を策定することで、投資リスクを最小限に抑え成功確率を上げるため
設立
会社設立・登記の準備のフェーズです。
現地法人の設立形態を決定し、必要な許認可取得や登記手続きを行います。この段階では現地の法律や規制に精通した取り組みが不可欠です。
目的:法的に適切な形で事業を開始し、スムーズな運営基盤を確立するため
事業展開
実際の事業展開です。
オフィス開設、人材採用、販売チャネルの構築など、実際のビジネス運営を開始します。現地の商習慣に合わせた運営体制の確立が成功の鍵となります。
目的:
ベトナムへの販路拡大の場合は、現地市場に適応したビジネス運営を実現し、持続的な成長を目指すため
ベトナムを製造拠点とする場合は、安定した生産体制を確立し、コスト競争力を高めつつ品質を維持するため
専門家アドバイス|「調査」の軽視が後からの大きな失敗を招く
筆者は多くの企業の海外進出を支援してきましたが、日本の中小企業の経営者の中には、つい過去の日本での成功体験から「まずはこの勢いで進出してみよう」と考えられる方も少なくはありません。平成後半、令和になるにつれて、こういった勢いに任せた投資は減ってはきているものの、まずはやってみようと考えるケースは存在します。
すぐに撤退できる、初期費用がかからないなど、リスクが極端に低い場合は良いですが、基本的にノーリスクの海外進出はありません。そのためまずは一番初めの調査をしっかりしていく事、ここの投資の必要性を理解することが大事です。
調査を通じて、本当に自社が進出すべき国はベトナムなのか?そもそも海外進出が自社に適しているのか?といったリスク評価も含め、進出の可否を検討します。
ちなみにこの段階で、最終的に進出しないという判断に至ることもあります。
これは無駄な投資でしょうか?
この取り組みを初期段階で検証することで、むしろ結果的に事業の失敗リスクを回避できたと考えるべきでしょう。

ベトナム進出コンサルティング・支援企業とは
言葉の通り、ベトナム進出コンサルティングとは日本企業の海外進出を専門的にサポートするコンサルタントや支援企業のことを指します。
具体的にどのようなサービスを提供しているのか、詳しくご説明いたします。
ベトナム進出支援企業・コンサルティング企業の支援内容やサービス
支援企業は、様々なサービスを提供しています。
先ほど説明した4つのフェーズに当てはめて、具体的な支援内容をお伝えします。
調査
- 現地市場の調査・分析
- 競合他社の調査と分析
- 需要予測と市場規模の推計
- 消費者動向の把握
この調査は、デスクトップリサーチ(既存情報を活用した調査)としてネット上の情報やオンラインアンケートを活用する方法から、現地でのターゲット層への訪問調査、小売店の陳列調査まで、さまざまな手法があります。
計画
- 事業計画策定支援
- 最適な進出形態の検討
- ターゲット顧客層の特定
- 市場参入戦略の構築
- 中長期的な事業拡大計画の策定サポート
事業計画書の作成などがここでのフェーズの支援になります。日本市場でのビジネスと同様に、海外事業においても事業計画書の作成は不可欠です。
作成する目的として、資金調達の際に融資先への提出や、事業の将来を見通すことが挙げられます。
事業計画書を作成することで、銀行や投資家への説明がしやすくなる、投資対効果や今後の具体的な動きを明確にできる、目標管理ができるなど、さまざまなメリットがあります。
その他の海外事業計画書特有のメリットや、事業計画書の作成方法については、以下の記事をご覧ください。
設立
- 法人設立・許認可取得支援
- 会社登記、投資ライセンス、事業許可の取得サポート
- 各種行政手続きの代行・サポート
- 現地法令遵守のためのコンプライアンス体制構築
- 必要書類の作成・翻訳・申請代行
- 税務・労務・法務サポート
- 現地の税制対応、労働契約のアドバイス
- 税務申告、会計処理の支援
- 労務管理・給与計算システムの構築
- 法的トラブル対応や契約書作成支援
- 現地スタッフ採用・オフィス開設支援
- 人材紹介、オフィス探し
- 採用計画の立案と面接プロセスのサポート
- オフィス物件の選定・契約交渉
具体的には、現地法人の設立に関するサポートを提供します。
特にこのフェーズでは、現地特有の規制やルールに従いながら業務を慎重に進める必要があるため、支援企業の役割が非常に重要になります。
専門家アドバイス|成長著しいベトナム。現地ルールはリアルタイムで確認必須
ベトナムは急成長している市場です。その分、法規制などのルールの変更も頻繁に行われるため、最新情報の把握が欠かせません。
特に外資規制や税制、労働法などは事業の継続性に直結するため、リアルタイムで確認し、適切に対応することが重要です。
調査、計画を過ぎるとこの点を軽視する企業や現地コンサルタントも存在しますが、現地ルールは設立時はもちろん、事業展開後も常にアップデートし続ける必要があります。
これは日本市場でビジネスをしていると見落としがちなコストですが、ベトナムでは不可欠な要素です。
事業展開
- 事業運営支援
- 月次/四半期ごとの進捗管理
- 現地経営陣向けアドバイザリー
- 品質管理システム構築
- 現地ネットワーク構築
- DX支援
- リスク管理(法改正情報の提供など)
- 販売拡大支援
- 新規取引先開拓支援
- 展示会出展コーディネート
実際に現地拠点でビジネスを成功させるためには、最も重要なのが事業展開のフェーズです。特に、現地の商習慣や文化、ターゲット、市場環境を高い解像度で理解し、社内メンバーと共にPDCAを回していくことが成功につながります。

ベトナム進出コンサルティング・支援企業を利用するメリット
自社のベトナム進出において、コンサルティング企業を活用する主なメリットは以下の通りです。
失敗リスクを最小化し、ベトナム現地のビジネスの成功確率を高める
この失敗リスクの最小化は、調査、企画、設立、事業展開のどのフェーズで依頼しても享受できる大きなメリットです。
- 調査
- 定性・定量的に第三者の客観データを提供するため、事業成功確率の高い意思決定ができる
- 計画
- 企業の海外進出や、ベトナムでのビジネスの現実を踏まえて、数字算出や戦略立案をするため、実現可能性のある計画の策定が可能
- 設立
- 現地の法規制などの思わぬ落とし穴をカバーして業務を進行するため、設立時のトラブル防止に繋がる
- 事業展開
- 現地のニーズ・文化などに合わせた社内の組織設計や、マーケティングや販売戦略の提案により、現地の経営全体の成功確率が高まる
- 現地のニーズ・文化などに合わせた社内の組織設計や、マーケティングや販売戦略の提案により、現地の経営全体の成功確率が高まる
きちんとしたコンサルティング・支援企業を活用すれば、予測可能なリスクを適切に回避し、専門的な助言を受けることができるだけでなく、トラブル発生時にも迅速な対応が可能になります。
その結果、失敗リスクを最小限に抑え、現地ビジネスの成功確率を高めることにつながります。
海外進出においては、成功に向けた施策はもちろん重要ですが、失敗を防ぐための対策も同様に欠かせません。
専門家アドバイス|日本企業が見落としがちな現地トラブル
ベトナム現地で頻繁に発生しやすいトラブルとして、契約していたはずの現地企業と突然連絡が取れなくなる、オフィスや店舗などの物件がなかなか見つからない、といったケースが挙げられます。
さらに、日本ではあまり馴染みのない問題ですが、実はベトナムでは賄賂問題もあります。
日本から進出した企業が、現地の公務員や企業担当者からバックマージンなどを求められたりすることは珍しくありません。
知らず知らずのうちに法律違反を犯してしまう可能性もあるため、慎重な対応が必要です。
このようなリスクに対し、ベトナム進出コンサルティング・支援企業は、日常的な情報提供はもちろん、トラブル発生時の仲介や方針の相談相手としても頼れる存在となります。
ベトナム現地の複雑な規制をカバーし、スムーズな進出が可能
外資規制や許認可取得の手続きを円滑に進めることができます。
例えばビザひとつ取っても、社内に海外拠点設立のプロフェッショナルが在籍していない限り、コンサルティング会社や支援企業と連携したほうが安心です。
近年、ベトナムではビザの緩和が進み、以前より外国籍者が滞在しやすくなっています。しかし、ビザの取得条件は頻繁に変更されるため、最新情報を基に適切な計画を立てる必要があります。また、外国人に発給される就労ビザは取得難易度が年々厳しくなっております。
また、ベトナムでは行政手続きにおいて、日本では想定しにくいタイミングでトラブルが発生したり、行政側の対応が遅延したりすることも珍しくありません。こうした「ベトナム特有のトラブル」に対応するには、現地の規制を理解し、実際に法人設立を経験した知見を持つ専門家のサポートが不可欠です。
現地ネットワークやコミュニティを活用し、円滑な事業運営を実現
信頼できる現地パートナーや行政機関とのつながりを活用することで、事業のスムーズな運営が可能になります。
独自にネットワークを構築し、適切なルートを見つけるには多くの時間とコストがかかります。しかし、コンサルティング企業を活用すれば、すでに確立されたネットワークを活かし、行政手続きやビジネスパートナーの紹介をスムーズに進めることができます。
また、前述の賄賂問題についても、信頼できる支援企業を選ぶことで、クリーンなパートナーを紹介してもらえるため、安心して事業を進められます。

ベトナム進出コンサルティング・支援企業の費用・料金相場
ベトナム進出を検討されている企業にとって、コンサルティングや支援企業の費用は重要な検討事項です。
以下に、サービス内容や契約形態ごとの一般的な費用相場をまとめました。ただし、これらはあくまで目安であり、具体的な費用は依頼内容や企業規模、業種などによって異なります。
コンサルティング・支援範囲 | 支援内容イメージ | 費用・相場感(目安) |
基本的な市場調査 | 現地市場規模調査、競合分析、消費者動向調査などを含む市場調査 | 50万円〜200万円 |
進出戦略策定 | 市場参入戦略、販売チャネル戦略、リスク分析など | 50万円〜300万円 |
現地法人設立支援 | 登記申請、各種許認可取得、銀行口座開設などの実務支援を含む現地での法人設立業務 | 50万~300万円 |
包括的支援(調査〜設立まで) | 上記すべてに加え、人材採用や業務フロー構築などを含む場合も有り | 300万円〜1000万円 |
ベトナムについては、全体の物価が日本よりまだ安いため、進出支援も安いのではと考える方も多いですが、逆に情報の変化が激しいことや、市場が複雑であることから支援する側の負担も大きく、費用が上がることもあります。
また、ベトナムに進出といっても業種が金融や医療に関連する分野など、規制の多い業界や特殊な許認可が必要な分野では、費用が上がりやすくなることが一般的です。
契約形態ごとの費用相場
下記に一般的な3つの海外進出のコンサル契約形態とそれぞれの費用相場について簡単にまとめたのでご参照ください。
顧問契約型
定期的な報酬を支払う契約形態で、月額5万円から50万円程度が相場です。
また、財務・経営コンサルティングは内容により応相談となっているところが多いです。
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時間契約型
作業時間に応じて報酬を支払う形態で、1時間あたり5,000円から20万円程度と幅があります。具体的な料金は、担当コンサルタントの経験や実績、提供するサービス内容によって異なります。
成果報酬型
特定のプロジェクトの成功度や達成度に応じて報酬を支払う形態です。
相場は成約額の3%から10%程度とされていますが、具体的な割合はケースバイケースで変動します。
専門家アドバイス|M&Aの場合は成果報酬型契約が多い
本記事ではM&Aでのベトナム進出には触れていません。
M&Aによるベトナム進出では、パートナー紹介や契約などに基づいて、事前に設定された成果地点に応じた成果報酬型の契約が比較的多いです。これにより、進出支援企業は契約成立に応じた報酬を得ることになります。報酬額は成約額の一定割合が一般的です。
▼海外進出のコスト削減に関する記事はこちらから

ベトナム進出コンサルティング企業の選び方
お待たせしました。これらを踏まえた上で、どのようにベトナム進出コンサルティング企業を比較し、選べばいいかを説明します。
実績と経験
コンサルティング企業を選ぶ際は、日本企業のベトナム進出の実績を確認しましょう。
自社と同じ業種の支援経験があるかを見ておくと安心です。例えば、製造業の進出を考えている場合、工業団地の選定や労働力確保のノウハウを持っているかどうかをチェックします。
また具体的に「ベトナムでの法人設立にかかった平均期間はどのくらいですか?」など、実体験がなければ答えづらい質問を投げてみるのもいいでしょう。企業の実績を確認するためには、以下のような質問も効果的です。
- 「自社と類似した規模や業種の企業の支援実績はありますか?」
- 「支援した企業の成功事例と、直面した課題をどう解決したか教えてください」
- 「現地のJETROや商工会議所との連携実績はありますか?」
- 「ベトナム国内の地域ごとの特性や規制の違いについて、どのような知見をお持ちですか?」
現地支援体制・言語対応
例えばハノイやホーチミンにオフィスを構えていたり現地にメンバーが駐在している場合は、緊急時にも迅速な対応が期待できます。
また、ベトナム語の対応についても確認が必要です。現地当局との交渉や書類作成においては、ネイティブレベルのベトナム語スキルを持つスタッフの存在は大きいです。
また言語レベルはもちろん、彼らがどのように配置されているか、どのような経験を持っているかを確認することが重要です。
そして同時に現地での手厚い支援があっても、日本語対応可能な現地スタッフがいるかどうかも重要です。現地でのトラブル発生時には、迅速なコミュニケーションが求められるため、日本語で対応できる体制が整っているかどうかをチェックしてください。
支援体制を評価する際には、以下の点も考慮すると良いでしょう。
- 現地スタッフ・メンバーの専門分野
- 緊急時の支援体制
- 日本とベトナム間の時差を考慮した対応時間
現地ネットワークとサポート体制
ベトナム進出では、現地パートナーとの連携が不可欠です。
コンサルティング企業が、現地の法律事務所・税理士・人材会社をはじめとする組織・団体と提携しているかどうかを確認しましょう。
- 政府機関との関係性
- 業界団体や商工会議所とのつながり
- 金融機関や投資家とのネットワーク
- 現地サプライヤーや流通パートナーとの関係
- 他の日系企業とのコミュニティ
支援スタイル
例えば、自社にとってスピード感が重要な場合、その企業が迅速に対応できるかどうかといった支援スタイルを事前に確認することが大切です。
また筆者の経験上、スタートアップやベンチャー、中小企業の多くが柔軟性を求める傾向にあります。状況に応じて柔軟に対応できる企業かどうかを確認しましょう。
また、こうした支援スタイルは、担当者のスキルや対応力に大きく影響されますので、誰が担当するかも確認しておくと安心です。
契約内容と解約条件
契約内容はもちろん、中途解約時のペナルティや解約条件も事前に確認することが重要です。特に長期契約や成果報酬型契約では、解約条件が後々のトラブルに繋がることがありますので、事前にしっかり確認しましょう。
- 契約期間
- 短期集中型か長期サポート型か、延長オプションの有無
- 解約条件
- 中途解約時のペナルティ、成果保証の有無と内容
- 費用体系
- 想定外の費用発生可能性、成功報酬型の場合の計算基準
- 秘密保持
- NDAの範囲と期間、情報管理体制

自社にとって納得のいく支援企業選びで、ベトナム進出を成功させよう
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