ベトナムの大人気日本料理屋“遊雅亭 睦庵/ゆうがてい むつみあん”を営むオーナーシェフのTrungさんに、ベトナムでの飲食店・店舗ビジネスの集客から提供されるお料理や素材等のこだわりのポイント等、ベトナムでビジネス展開する際に参考になるようなお話を2024年12月12日にオープンしたばかりの新店舗(取材時:2024年12月16日)でお伺いさせて頂きました。
本日はお時間を頂きましてありがとうございます。遊雅亭 睦庵さんはベトナムで鰻のお店として現地在住の日本人中心に非常に人気のある店なのは存じていますが、お店の特徴について教えて頂けますでしょうか。
Trung氏) はい、よろしくお願いいたします。現在ベトナムで3店舗の日本料理屋を経営しています。鰻のお店がハノイとホーチミンに1店舗ずつと、12月12日にオープンしたばかりの常陸牛とお任せ握り寿司のお店があります。鰻のお店のホーチミン店は、今年で10周年になります。
生鮮食品は小松水産という日本の卸業者を通じて日本から仕入れており、牛肉は茨城県の常陸牛、水産物は干物やシラスを日本から輸入してベトナムで提供しています。
こちらの新しいお店で出されている常陸牛は、美味しそうな霜降り肉ですが、どの位の客単価でどういうお客さんに好まれているんですか?
Trung氏) この常陸牛とお任せ握り寿司のお店は、ほとんどがベトナム人のお客さんです。まだ新しいお店なので客単価まで出せてないですが、ベトナム人のお客さんに好まれていますね。
メニューの主力商品やおすすめは何になりますか?
Trung氏) コース料理で常陸牛のコースが1,500,000ドンと2,5000,000ドンであり、鰻のコースは1,000,000ドンからあり、牛肉も楽しめる内容になっています。
ベトナムでは何年も前から日本食ブームが来て多くの寿司屋や日本料理屋がここホーチミンでも目に見えて増えてきていますが、ベトナム人の方々は日本食が本当に好きですよね。ただ、ここ日本人街は日本料理屋も多い中で、どのように集客をしているんですか?
Trung氏) そうですね。この辺りは日本人街で日本料理屋は多いですが、他のエリアも最近は増えていますね。日本人向けにはフリーペーパー等に掲載してたり、LINEで友達登録してもらって直接注文受けたりしてます。あとは、このレタントンのエリア自体が日本人が多いので、口コミだったり、自然に来店していただけますね。
一方でベトナム人に対してはSNSでの宣伝がメインで、特にFacebookやInstagram、TikTokをメインにプロモーションを打っていたり、インフルエンサーを活用した施策を行っています。オープン時に20%オフとか30%オフとか日本のお土産をプレゼントするとかのプロモーションは非常に有効ですね。ただ、ベトナム人向けフリーペーパーだと雑誌が多すぎて何が効果的なのかは正直分かりませんね。
あと、飲食店等のテナントはホーチミンはここ数年凄く値上がりが激しい印象がありますが、その点は実際にはどうですか?
Trung氏) 確かに家賃は高いですね。感染症が流行した以前の値上がり幅よりは多少は落ち着いていますが、今のここのお店だとレタントンの大通りに面したビルの5〜6階を120㎡で借りていますが、月の家賃は1億ドン位(約61万円~62万円)ですね。ただ、毎年5%位賃料は上がりますね。
でしたらレタントンだと家賃は平均位ですね。また、今は日本各地からベトナムに食品を販売したい事業者も多いですが、そう言った声がある際に商談して良い商品があれば輸入したりもしてるんですか?
Trung氏) 直接買う事もありますし、普段仕入れている小松水産はベトナムにも現地法人があるのでそこを通じて日本各地から良い食材を輸入しています。ベトナム人はとにかく日本の食材が好きですよ。
どういった食材や商品がベトナム人に人気なんですか?
Trung氏) ベトナムで売れる商品は果物が人気ですが、サツマイモ、トウモロコシ、カキ、イチゴ、メロン、魚はマグロ、カンパチ、キンメダイが人気ですし、和牛はみんな好きですね。あとは、アイスクリームやチーズケーキも本当に人気で当店でも日本のチーズケーキを出しています。
確かに私も日本のチーズケーキをお土産に頼まれる事もありますね。あとは、ベトナム料理のフォーに入っている牛肉は基本的には脂身のない部位が多いと思いますが、日本の霜降り肉はベトナム人の方々には人気なんですか?
Trung氏) ベトナム料理で使う牛肉は、大半が牛のラムの部位やヒレ等の脂身が無い部位を使用します。当店では、お客様の好みに合わせて常陸牛のグレードをおススメしているので、霜降りが好きな人には脂身が多いグレードや、さっぱりしたお肉が好きな人には脂身が少ない部位を提供しています。
そういった工夫をされているんですね。あとは、ベトナムでも日本料理屋が増えてきている一方で集客が厳しいお店は撤退する企業もありますが、どういう点が上手くいくポイントだと思いますか?
Trung氏) 他店さんの取り組みは詳しくはわかりませんが、当店では鰻がメインで日本人は鰻が好きでよく来てくださいますね。韓国人も鰻が好きなので、当店には来てくださいます。また、味付けの面で言うと、同じ和風の味付けでも日本人とベトナム人とでは好みが違うので、日本人がターゲットなのであれば本当の日本の味付けにしないと難しいです。これは鰻だけでなく、煮物や小鉢も全てそうです。逆にベトナム人向けには味付けは変わります。
ベトナムも元々鰻食べる文化があって、私もベトナムの鰻料理が好きなんですが、全く違う食べ方ですもんね。ちなみに鰻はどこで仕入れているんですか?
Trung氏) 鰻は全て自社の養殖場から生きたまま仕入れています。養殖場はニャチャンやブンタウにあり、日本と同じ品種の鰻を育てています。ニャチャンからだとホーチミンまで陸路で6時間、ブンタウからだと2〜3時間で着きます。全て稚魚から育てて1年から長くて1年半で成長して出荷しますが、必ず生きたままお店に届けてお客様から注文が入ってから自分で捌いて焼いています。鰻はその方が美味しいですし、お客様に喜んでもらえますから。
今後の店舗拡大の展望はどのようにお考えですか?
Trung氏) 来年新たな鰻の店を出す事を検討しています。エリアは、ホーチミンやダナン等を考えています。ホーチミンの2区も最近は注目しています。元々、欧米人が多いエリアですが、韓国人も増えていますし。もっとベトナムに来る日本人が増えたら色々と考えていきたいです。
今だとホーチミン市で日本人は12,000人弱の在留邦人が居ると言われていますね。ハノイでは8,000人弱だと思います。
Trung氏) 前はもっと日本人が居たんですが、まだ戻り切っていないですよね。お店の客層とかこのエリアを見ていても昔より減った印象がありますね。
これから確実に増えるとは思いますよ。そもそも日本企業の海外進出でベトナムは非常に人気ですし、企業進出に伴って在留日本人数は増えるのでより日本人客が増えてくると思います。
Trung氏) もっと戻ってきてほしいです。ダナンでも日本人はまだ少ないですか?
ダナンは在留邦人の統計データが出ていませんが、ホーチミンやハノイと比較するとまだ少ないですね。住んでいる人だと1,000人も居ないんじゃないでしょうか。一方で、韓国人は非常に増えていますよ。
Trung氏) これから日本人がもっと増えてきたら、もっと日本人のお客さんに美味しい料理を作って提供したいです。そしたら、もっとお店も増やしたいです。飲食店だけでなくベトナムでは日本の食材の卸事業もしているので、日本の食材はベトナムでより需要が増えていくと思います。
今後、ベトナムに来る日本人の方々にメッセージを頂けますか?
Trung氏) 日本から来た方々に美味しい鰻を食べてもらいたいです。ベトナムに住んでいる日本人の方向けにお節料理も提供しています。当店では、ベトナムでも日本人の方々に喜んでもらえる美味しい鰻を提供しているので、是非当店にお越しください。
鰻が食べたくなったらまた来ます。本日はお時間を下さいまして、ありがとうございました。
遊雅亭 睦庵 オーナーシェフのTrung氏
日本料理屋で8年間の経験を積んだのち、鰻の養殖場で2年間勤め、こだわりの鰻を生きたまま仕入れてお店で捌いてから炭火で焼いて提供される。在留邦人だけでなく、ベトナム人やその他外国籍客に親しまれる本格的な日本料理を提供し、日本語が流暢できめ細やかなホスピタリティや優しいお人柄のTrung氏がもてなしてくれる。
店舗サイト:https://mutsumian.vn/
GoogleMAP:Mutsumian Omakase & Sukiyaki