近年、多くの日本企業の海外進出においてベトナムが注目されています。当社へのお問い合わせもベトナム市場関連が最も多く、アセアン諸国の中でも成長率が高く、中長期的な経済成長が見込まれるベトナム市場への日本企業の進出は、様々な業種で今後も増える見込みです。
一方で日本企業がベトナム市場へ進出する際には、その商品やサービスのターゲットとなる層は、多くが富裕層や中間所得層以上がマーケティングターゲットとなります。その際に、中間所得層が大半を占める日本市場と同様のマーケティング戦略を考えてしまうと、本来の購買層や利用者層であるターゲットにたどり着かない事もあり、ベトナム市場への進出の際には市場調査は欠かせません。
本記事では、日本企業のベトナム市場への進出の際にベトナムの富裕層や中間所得層以上をターゲットとした市場調査の方法について、ベトナム現地の富裕層のコミュニティや購買傾向や文化的背景の観点から分析し、日本企業がベトナム市場への進出の際に役立つ富裕層をターゲットとした市場調査ための提言をお伝えします。
Contents
ベトナムの富裕層の割合
富裕層(ミリオネア)の増加割合
VnEconomyによると、2023年時点で19,400名のミリオネアがベトナムにおり、また2013年からの10年間で98%の増加をみせており、中国、インド、アメリカを抜いてその増加速度は世界一となります。さらに、資産約150億円(*現在円ドルレート換算)以上の超富裕層は58名居るといわれています。
ベトナムの世帯収入と分布割合
以下のグラフは、Cimigoが発表している145,000世帯を対象とした調査に基づいて作成された2024年のベトナムの世帯収入グラフと基に当社で作成した、2024年時点のベトナム国内28,262,586世帯の世帯収入グラフとなります。
グラフから見て取れるように、高所得層のA群は大都市圏が地方の約4倍となり、D~Fの中間所得層以下は地方の割合がより高くなっています。

収入階層とベトナムのワーカーの比較
上記グラフを実際にベトナムで働く都市圏のオフィスワーカーのホワイトカラー層には、どの様なペルソナが居るのか、当てはめてみると以下のような企業やポジション、スキルを持つペルソナが当てはまります。


ローカル企業は外資系企業よりも給与形態は低く、また日本企業は欧米企業よりも給与は低く、営業職等のインセンティブ等も設けられていない傾向がありますが、より高い給与を稼ぎたい意識の高いハイクラス層は欧米系の外資系企業への就職を好む傾向があります。
また、上記の給与表は営業職のインセンティブ等は含まれておらず、特定の優秀な営業人材は日本の営業職の平均給与よりも稼ぎが大きい層もいます。
ホーチミンやハノイ等の大都市圏の外資系企業に勤めるホワイトカラー層は、英語や日本語等の第2言語が流暢かつ特定のスキルを持つ人材が高収入を得ており、このようなホワイトカラーの労働者層が、特に日本企業が進出する際の製品やサービスのターゲットとなるボリューム層となり得ます。
また昨今のベトナム市場はオフショア開発企業の増加に伴いITエンジニアの採用競争が激しく、ITエンジニア層の人件費の上昇が著しい為、他職種よりも給与相場が高くなる傾向にあります。これらの要因としては、世界的なDX市場の拡大によるIT開発の需要の増加。またベトナムのオフショア開発企業の売り先は日本や欧米等の海外になるので国内よりも売り名が高くなり、その分採用競争力を持たせるためにエンジニアへの人件費を投資している傾向があります。
なぜ所得階層で市場調査やマーケティングの分類を分けるのか
上記のグラフ等で見てとれるように、ベトナムを含むアセアン諸国ではボリューム層が日本の様に中間層とは必ずしも限らず、またその層が日本企業の販売する製品やサービスを利用できる層とも限りません。
ベトナムの世帯で見ても家計を管理する人がいて、その月の収入から家賃・教育費・食費・衣類・医療から贅沢品や旅行・投資・美容等様々な支出に対して収入を割り当てます。
例えば世帯収入が月500USDに満たない家計が、1台1,000USDを超えるスマートフォンを購入するボリューム層にはなかなかなり得ない為、一定所得以上のターゲット購買層に届くマーケティング施策を行う必要があります。
一方で、ベトナムでは教育や医療・健康にはお金をかける傾向がある為、娯楽やエンターテインメントを売るのか、または生活の根幹に直結する教育や医療・健康等に関わるものを売るのかでもターゲットは変わってきます。
日本企業の多くがベトナムに進出する際には、地場の企業製品やサービスよりも高価格帯なモノを提供する事の方が一般的となります。そうなると必然的にターゲットは高収入な富裕層や準富裕層となってきます。そして、それらの潜在顧客層ターゲットの購買行動や思考性、価値観等を事前に調査せずに、思い込みでマーケットインをしてしまうと、ターゲットに届かないマーケティング施策やブランディングをしてしまい、結果的にサービスが利用されない、製品が売れないという結果になってしまう事もあります。
その為に、ベトナム市場に於いては所得階層でセグメントをした市場調査を行う事が時に非常に重要なヒントとなり得ますが、ここで課題となるのがベトナムの富裕層にどのようにアプローチするのかが、一番の課題になります。


富裕層コミュニティとのコネクション
結論から申し上げると、ベトナム市場で一定の所得以上の富裕層を対象にした市場調査を行う場合は、ベトナム人同士のローカルコミュニティに入る事が必要になります。
具体的にコミュニティを分解していくと、一定の所得が無いと利用できないサービス(ここで言うサービスはエンターテインメントやアクティビティ等の趣味で利用するサービス)等を利用している層は富裕層が多く、その共通の趣味等での小さなコミュニティをベースにしてベトナム人同士でもコミュニティを形成しています。
当社でもこの様なコミュニティとの繋がりを作る事で富裕層へ市場調査を行う際に、直接ヒアリング調査を行ったり、定性調査をする際に協力をしてもらったり、そこから特定企業を紹介してもらったりする事に繋がっています。
しかしながら、これらのコミュニティに日本から来ていきなりアプローチをする事は非常にハードルが高く、筆者も10年ほどベトナム市場に関わっておりますが、長くベトナムに携わり多くのベトナム人と関係性を構築した上でこれらのコミュニティに入る事が出来ております。
おわりに
ベトナム市場への参入は中長期的な市場成長や文化的・政治的な親和性からも非常に魅力的と言えますが、新規参入の際に適切な市場調査を行う事は必須であると言えます。当社では、企業調査や富裕層をターゲットとした市場調査も独自のコネクションを生かしご提案が可能です。ベトナム進出や市場調査の際には是非ご検討いただけますと幸いです。