ベトナム進出を本格検討する前に整理すべき5つの論点【「安いから今のうちに出たい」では危ない】

ベトナムは、

  • 高い経済成長率 (2025年:GDP成長率8.02%)
  • 若い人口構成 (2024年:平均年齢31歳)
  • 製造・IT人材の厚み
    • *独立行政法人労働政策研究・研修機構の情報によると、ベトナムの15歳以上の労働人口は2022年時点で5,548万人に及ぶ

といった点から、新たなサプライチェーンや中長期的な市場成長に期待し

日本企業の主要な進出先として定着しています。

※JETRO“日本貿易振興機構”の「【コラム】ベトナム人気は「優秀な人材」との評価に」の記事でも

日系企業のベトナム進出の人気の理由等が記載されています。

その一方で、当社に届くご相談の中には、

「ベトナムは成長しているし、まだ安いから今のうちに出たい」

という動機でベトナム進出を検討しているケースも多く見られます。

しかし、既に進出している企業からは、

  • 「人件費や採用競争が厳しくなり、思ったほど安くない」
  • 「当初の想定と現実がズレてきており、ベトナム拠点をどう位置づけ直すべきか分からない」
  • 「IT業界では価格競争の激化と人件費高騰で、小規模事業者は経営が成り立たない」

という声も増えています。

本記事では、ベトナム進出を“これから本格検討する”企業向けに、

  • ベトナム進出を決める前に整理すべき5つの論点
  • 「安いから出たい」という発想が危うい理由
  • 既存のベトナム関連記事(店舗・人材・再設計・出口)とどうつながるか

を整理します。


論点1:なぜ「ベトナム」なのか? 他国との比較での理由づけ

「とりあえずベトナム」は危険なスタート

  • 中国の代替 (新たなサプライチェーン)
  • ASEANの“代表国”(高い経済成長)
  • 他社も出ているから安心(ベトナム進出=成功している)

といった理由だけでベトナムを選んでしまうと、

  • 出てみたものの、思ったような生産が出来ない
  • 想像以上に自社サービスの対象市場が小さかった
  • 思った以上にコストがかかりメリットが少ない

というリスクが高まります。

他国との比較で見るべき軸

ベトナムを「第一候補」として見るにしても、少なくとも以下の軸で他国(例:フィリピン・タイ・インドネシアなど)と比較しておくべきです。

  • ターゲット市場の有無・規模
    • “総人口=ターゲット”にはならない事が多い
  • 人材の質・量・人件費(製造/IT/バックオフィスなど職種別)
    • ベトナム人と先進国の労働者とでは、必ずしも同じ生産能力は期待できない
  • 規制・外資受け入れ姿勢(業種ごとの違い)
    • 業種により規制が異なる
  • 既存のサプライチェーン・顧客とのつながり
    • ベトナムに拠点がある事で何がメリットなのか

**「ベトナムでなければならない理由」**がどこにあるのかを言語化しておくと、
後の拠点再設計・撤退判断も行いやすくなります。

関連:

  • 中国+1時代のアジア進出先比較(フィリピン・ベトナム・インド)

論点2:何をどこまでベトナムに任せるのか(役割設計)

「安いから全部」ではなく、「どの機能を任せるか」を決める

ベトナム進出の目的は企業ごとに異なりますが、ざっくり以下の機能に分解できます。

  • 製造(工場/サプライチェーン)
  • IT開発(オフショア開発拠点)
  • 営業・小売(店舗展開・現地販売)
  • バックオフィス・BPO

それぞれについて、

  • ベトナムと相性が良いか
  • 他国の方が適している機能はないか
  • 自社として、どの機能をベトナムに“任せたい”のか
  • コストメリット以上の魅力があるのか
  • 期待する生産性をどのように構築するのか

を整理する必要があります。

ベトナムに向きやすい機能・向きにくい機能(ざっくり)

  • 向きやすい:
    • 製造(業種によるが、一定の実績・インフラあり)
    • IT開発(日本向けオフショア実績が多い)
  • 注意が必要:
    • CS・BPO・多言語サポート(英語+コールセンターや多国連携ならフィリピン優位)
    • 一部小売・サービス(ローカル競合・外資規制などの理解が必要)

「ベトナムに何でもかんでも集約」するのではなく、
「ベトナム+他国」のポートフォリオ前提で役割設計をするのが、これからの潮流です。

個人の得意不得意があるように、国によっても得意不得意な領域があります。

自社のビジネスと市場を比較し、どの国で何をするのが良いのかを検討する必要があります。

関連:

  • ベトナム進出企業が直面しやすい3つの壁(役割再設計の話)
  • フィリピンとベトナムIT企業向け比較記事

論点3:人材・組織をどう作るか(採用・定着・カルチャー)

ベトナムの人材市場の現実

  • 大都市圏(ハノイ・ホーチミン)では給与水準が年々上昇
    • IT・デジタル人材は売り手市場で、日本と大差がない水準
  • 製造・ITともに、経験者層は既に多くの企業が取り合い
    • ベトナムは若年層が多い一方で、マネジメント層や経験者層が少ない事が課題となっている
  • 転職前提のキャリア観を持つ若年層も増えている
    • 成長機会が少ない・日本式の年功序列の文化では人材の定着が非常に難しい

「賃金が安いから」だけを前提とした人事設計は、もはや通用しにくくなりつつあります。

日本企業がつまずきやすいポイント

  • 日本本社と同じ評価・報酬制度をそのまま持ち込む
  • 昇給・昇格スピードが遅い
  • キャリアパスが見えない
  • 拠点長・ローカルマネージャーに十分な権限を与えない
  • 意思決定スピードが遅い
  • 業務での成長機会が少ない

結果として、

  • 優秀な人材ほど他社へジョブホップ
  • 中堅層が育たない
  • 現地法人が「いつまでも日本人頼み」の組織になる

という状況が起きがちです。

人材・組織設計の基本的な考え方

  • 採用ターゲット(新卒/中途/管理職)の明確化
  • ベトナム市場に合った給与レンジ・昇給・インセンティブ設計
  • ローカルマネージャーを育てる前提での権限委譲
  • オンボーディング・カルチャー浸透の仕組みづくり

詳細は以下の記事で深掘りしています。

  • ベトナム進出における人材採用・定着・報酬・カルチャー・福利厚生:

論点4:コスト・投資回収のイメージ(3〜5年)

「人件費が安い=全体コストも安い」とは限らない

前述の通り、ベトナム進出には

  • 法人設立・事業ライセンス取得
  • オフィス賃料・内装・設備
  • 採用・人材関連コスト
  • 専門家費用(会計・税務・法務等)
  • 日本側の出張・コミュニケーションコスト

など、人件費以外のコスト要素が多く存在します。

これらを合算すると、

  • 初年度は2,000万円〜数千万円規模のキャッシュアウトになるケースも珍しくない

というのが現実です。

3〜5年でどう回収するかを、ざっくりでも描いておく

  • 売上目標(悲観/標準/楽観)
  • 粗利率の想定
  • ランニングコスト(人件費・賃料・専門家費用等)

を前提に、

  • いつ損益分岐点に到達させるのか
  • 累積赤字のピークはどの程度か
  • 投下資本(初期投資+累積赤字)を何年で回収したいのか

を、最低限のシナリオとして持っておく必要があります。

あわせて、

  • どの条件になったら「縮小を検討するか」
  • どの条件になったら「撤退を検討するか」

という 撤退・縮小ライン も、進出前に設計しておくのが理想です。

関連:

  • ベトナム撤退ガイド(出口戦略・撤退プロセス)
  • 海外拠点のコスト構造と損益シミュレーションの記事

論点5:出口・拡張シナリオ(縮小・撤退・他国との組み合わせ)

「出るとき」だけでなく「将来どう変えるか」も決めておく

ベトナム進出を決める時点で、

  • うまくいった場合の拡張シナリオ
    • ベトナム拠点の役割拡大
    • 近隣国(フィリピン・タイ等)への横展開
  • 想定通りにいかなかった場合の見直しシナリオ
    • 拠点の縮小・役割変更
    • 他国への機能移管
    • 撤退

を“ざっくり”でも決めておくと、
「想定外」の出来事が減り、意思決定がしやすくなります。

フィリピンなど他国との組み合わせも前提に

  • ベトナム:製造・開発の中核
  • フィリピン:BPO・CS・バックオフィス・英語圏向けサポート
  • インドなど:高度IT・R&D

というように、

「ベトナム“だけ”に賭ける」のではなく、
「ベトナムを含むASEANポートフォリオの一角として設計する」

という視点が、今後は重要になります。


Social Zeroがベトナム進出検討フェーズで支援できること

当社 Social Zero は、

  • ベトナム進出を「これから本格検討する」企業様
  • すでに進出を検討中だが、前提整理に不安がある企業様

に対して、次のような支援を行っています。

  • 「なぜベトナムか」を他国比較も含めて整理するディスカッション
  • ベトナムに任せるべき機能と、他国に任せるべき機能の役割設計
  • ベトナム人材・組織設計(採用・評価・カルチャー)の初期設計
  • 3〜5年のコスト・損益のざっくりシミュレーションと、撤退・縮小ラインの検討
  • 必要に応じて、進出後の人材採用・営業代行・拠点再設計までの伴走

※「海外進出の設計」は、こちらの記事で解説しています。


まとめ:ベトナム進出は「安いから今のうちに出たい」ではなく、「何をどこまで任せるか」の設計から

  • ベトナムは依然として魅力的な市場ですが、
    「成長していて安いから今のうちに出たい」という発想だけでは、
    コスト・採用・競合環境の現実とのギャップが大きくなりがちです。
  • ベトナム進出を本格検討する前に、
    • なぜベトナムなのか(他国との比較)何をどこまでベトナムに任せるのか(役割設計)人材・組織をどう作るのかコスト・投資回収のイメージ出口・拡張シナリオ
    の5つの論点を整理しておくことが、後戻りコストを減らし、成功確率を上げる近道です。

ベトナム進出の初期検討(前提整理・シナリオ設計)に関するご相談はこちら

御社の事業内容・狙いたい市場・社内の制約条件を伺ったうえで、
「本当にベトナムか」「ベトナムなら何をどこまで任せるべきか」を一緒に整理いたします。

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