海外輸出・進出・販売はテストマーケティングから。メリット、実施方法、進め方を有識者が解説

海外市場への進出を検討する企業にとって、最初から大規模な投資を行うことはリスクが高いものです。そこで注目したいのが「テストマーケティング」という手法です。本記事では、効果的な海外テストマーケティングの実施方法について、具体的な事例を交えながら解説していきます。

海外向けテストマーケティングの定義と特徴

海外向けテストマーケティングの定義と特徴についてまず述べます。

定義

海外テストマーケティングとは、本格的な海外展開を行う前に、限定的な規模で製品やサービスの市場適合性を検証するための活動です。
期間限定で小規模に製品を販売し、現地の反応を確認するケースが比較的多く見られます。

特徴

海外のテストマーケティングは以下のような特徴があります。

  • 期間限定での実施
  • 特定エリアや販路に限定した展開
  • 明確な検証項目の設定
  • フィードバックの収集と分析に重点

本格進出・展開との最大の違いは、その「実験的」な性質にあります。本格展開が長期的な事業成功を目指すのに対し、テストマーケティングは市場理解と検証に重点を置きます。

本格進出・展開の前にテストマーケティングを実施することで、柔軟に軌道修正が可能となります。それは、自社の海外進出のリスクを軽減し、成功確率を高めることに繋がります。

ディスカッションする人

海外テストマーケティングのメリット

海外進出におけるテストマーケティングのメリットは以下です。

投資コストを最小化することが可能

テストマーケティングの最大の利点は、比較的少ない投資で市場理解を深められることです。フルスケールでの展開と比較すると、在庫投資や、人材の採用・育成費用、設備投資といったコストを大幅に抑えることができます。
また、このタイミングで現地のユーザーニーズの解像度が上がれば、今後のマーケティング費用の削減につながる事もあるでしょう。

事業リスクを抑制しながら市場理解を深められる

事業リスクを抑制しながら市場理解を深められることも、海外テストマーケティングの重要なメリットです。

まず、実際の市場での販売を通じて、設定した価格帯が現地の購買力や競合製品との比較において適切かを検証できます。
同時に、商品自体が現地消費者のニーズや嗜好に合致しているか、どのような改良や現地化が必要かも明確になります。

また、消費者の購買行動や商品に対する反応を直接観察することで、マーケティングメッセージの効果や、想定していなかった使用シーンなども把握できます。さらに、競合企業の動向や価格戦略、プロモーション施策などの詳細な情報も、実地での展開を通じて初めて得られます。

販売面では、選定した流通チャネルの有効性を検証し、どの販路が最も効率的に目標顧客にリーチできるかを見極めることができます。

価値ある現地とのネットワークの構築ができる

海外市場での小規模な展開は、単なる市場検証以上の価値をもたらします。
私の経験から、最も重要な成果の一つが、将来の本格展開を見据えた人的ネットワークの構築です。

例えば、テストマーケティングを通じて築かれる現地バイヤーとの関係は、その後の事業拡大において重要な資産となります。バイヤーとの直接的なコミュニケーションを通じて、商品改善のヒントが得られるだけでなく、業界動向や競合情報などの貴重な市場インテリジェンスも入手できます。

また、代理店販売での進出の場合は、代理店候補との関係構築も極めて重要です。彼らの反応や提案を通じて、その代理店の能力や熱意、信頼性を実地で評価できることは、将来のパートナー選定において大きな利点となります。

何より重要なのは、消費者との直接対話の機会です。商品やサービスに対する生の声を聞き、現地ニーズへの理解を深めることで、より効果的なマーケティング戦略の立案が可能になります。

テストマーケティングの実施方法の種類

テストマーケティングの実施方法には、以下のような種類があります。
なお、広義には販売を伴わない現地調査などもテストマーケティングに含まれますが、本記事では「販売を通じて検証を行うこと」を前提として説明を進めます。

催事・展示会・イベントなどへの出展

展示会やイベントへの参加は、多くの企業が選択する入り口として人気があります。
バイヤーや消費者との直接的な接点を持てる機会として重要です。

特にアジア圏(香港、シンガポール、タイなど)では、大規模な展示会が定期的に開催され、アジア全域のバイヤーが集まる重要な商談の場となっており、当社でもベトナムをはじめ複数の実績がございます。

※予定販売数250%達成を成し遂げた当社のイベント実績はこちらから
https://social-zero.com/works/travel-agency-vietnam/

ポップアップストアの展開

期間限定の独自店舗展開により、ブランドの世界観を直接的に伝えることができます。

欧米では、特にニューヨーク、ロンドン、パリなどの主要都市で、ポップアップストアが消費者に広く受け入れられており、新規ブランドの参入手法として効果的です。

現地ショップでの間借り販売

既存店舗内での展開により、初期投資を抑えつつ、実店舗での販売テストが可能です。
特に韓国や台湾などのアジア圏では、セレクトショップ文化が根付いており、間借り販売の機会が豊富です。

越境ECを活用した販売

デジタルプラットフォームを活用した展開は、比較的低コストで広範囲のテストが可能です。
中国では、Tmall GlobalやJD.comなどの越境ECプラットフォームが高度に発達しており、また消費者の越境EC利用率も世界最大級です。
東南アジアではShopeeやLazadaが域内で強い影響力を持ち、日本企業の多くがこれらのプラットフォームを活用してテストマーケティングを実施しています。

このようなプラットフォームを活用してテスト販売を行うのも方法の一つですし、自社独自でECサイトやランディングページを作成して販売するケースも多く見られます。

当社で以前支援を行った大手消費財メーカー様のテストマーケティングを見据えた事前のベトナム市場競合製品・小売り調査では、ベトナムのShopeeにて同社の製品がCtoCで多く販売されており、同時にShopeeの商品ページで多くの高評価レビューを得ていた事が判明しました。
そのヒントを基に需要の仮説検証が行われ、後にベトナム大手小売店へ商品を卸す事に成功し、現在に於いてはベトナムに広く販売されています。

その他、ベトナムに関する当社の事例は以下をご覧ください。
https://social-zero.com/country/southeast-asia/vietnam

代理店活用

現地代理店のネットワークを活用することで、効率的な市場テストが可能になります。

例えば、中東では、UAEやサウジアラビアなどの比較的高所得国において高級品市場が確立されており、自社の製品がターゲットニーズにマッチすれば、一定の効果が見込めます。
現地の商習慣や宗教的配慮に精通した代理店の活用が鍵となるでしょう。

東南アジアでは、シンガポール、タイ、マレーシアなど、それぞれの市場の成熟度や規制が異なるため、各国の特性を理解した代理店選定がポイントです。
また、代理店販売開始後もマーケティングに力を入れないと現地で商品は売れ辛い為、現地の代理店を選定する際は現地でのマーケティング等の販促活動をどのような戦略で進めるか、代理店と販売元メーカーとでどう役割分担を行うかを取り決める事も重要となります。

ミーティング

テストマーケティングの進め方

具体的にテストマーケティングを行う場合、どのように進めていけばよいかを説明します。

検証項目と数値目標の設定

まずはKPI設定することで、テストマーケティングの成功の定義を明確にすることが重要です。成功ラインに達することで、自社製品の海外輸出や進出を決定できます。

以下のような項目を設定すると良いです。

  • 売上目標
  • 新規顧客数・リピート率
  • 顧客フィードバック指標

高級商材や検討のリードタイムが長い商品の場合、売上ではなく商談の滞在時間や商談回数、資料請求数などで計測するのも良いでしょう。また、ECサイトやWEBの場合は、アクセス数や滞在時間での計測も考えられます。

仮説の設定

続いて仮説を立案していきます。仮説を立てることでテストマーケティングの精度を向上させ、意味のある取り組みへと導きます。

以下のような内容を例として挙げます。

  • ターゲット層の行動
  • 市場の需要
  • 価格感度
  • 競合との差別化
  • 販売チャネル
  • 購買の決定要因
  • 製品認知度
  • リピート購入の可能性
  • 季節やタイミングの影響

テスト市場・具体的な実施方法の選択

テストマーケティングを行う際には、市場選定が非常に重要なステップです。
成功のためには、以下の要素を考慮する必要があります。

  • 市場規模
    市場規模が大きいほど、得られるデータの量が増える可能性が高まりますが、競争が激しい場合もあります。一方で、小規模市場で実施することで競争を避け、ターゲット顧客層を絞り込んだテストが可能ですが、その分データの母数が少なくなるリスクもあります。
  • 競合状況
    市場には既に競合が存在するかどうかを確認することが重要です。競合が強力であれば、差別化戦略を前提にテストする必要があります。
  • 規制環境
    規制が厳しい市場では、輸出手続きや商標、品質基準など法的障壁が多くあります。規制環境を十分に理解し、クリアできる市場でテストを行うことが重要です。日本では規制が緩い業種や商品も、海外輸出時には規制に引っかかることもあるため注意が必要です。
    特に食品や酒類、医薬品等は事前に輸出入の規制が無いかを調べる必要があります。
  • 文化的親和性
    自社製品やサービスが、ターゲット市場の文化に適合するかを確認することも大切です。文化的な適応が求められる場合、製品やプロモーション方法を調整する必要があります。

実施と結果分析

テストマーケティングが実施された後、その結果を徹底的に分析することが、次の展開を決定する上で欠かせません。テストマーケティングにあたって設定したKPIや立案した仮説を照らし合わせながら振り返りを行い、その上で次のステップを決めます。

数字を見ることは重要ですが、数字だけに惑わされず、定性的な部分にも注目して社内で議論し、意思決定を行いましょう。データだけでは見えない課題や市場のニュアンスも含めて、総合的に判断することが成功への近道です。

テストマーケティングの結果を踏まえて、今後の展開方針を決定します。成功した場合は市場進出に向けた施策を進め、逆に問題が多かった場合は戦略の見直しや撤退も検討します。市場に適応した製品改良や販売チャネルの見直しが必要な場合もあります。

テストマーケティングは市場との深い対話に必要な手段

テストマーケティングは単なる「売上のテスト」ではなく、市場との対話を深めるための重要な手段です。得られたデータを基に市場やターゲット層のインサイトを引き出し、その後の戦略を精緻化することが成功の鍵となります。

テストマーケティングの仮説立案や販売に向けての手続きは自社単独ではハードルが高くなる場合が多いです。現地の状況や市場環境を熟知した信頼できるパートナーの支援が欠かせません。信頼できる海外支援企業や現地パートナーを見つけ、協力することで、スムーズな実施と結果を得るための強力な支えになります。

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