東南アジア進出はフィリピンかベトナムか?IT・サービス企業が比較すべき7つのポイント

東南アジアへの進出を検討する日本のIT企業・サービス企業にとって、
「フィリピンか、ベトナムか」はよく挙がるテーマです。

  • ベトナム:オフショア開発の“先行国”として人気
  • フィリピン:BPO・英語力・若い人口を強みに近年存在感が増大

どちらも有力な選択肢ですが、「今から参入するIT・サービス企業」にとって、条件が良いのはどちらかという観点で見ると、結論としてはフィリピンの優位性が高まりつつあります。

本記事では、主にIT・デジタル・サービス企業を想定し、

  • フィリピンとベトナムの比較ポイント
  • 特にIT/BPO拠点としての向き・不向き
  • 今から参入する日本企業にとっての現実的な選択肢

を整理します。

なぜ今「フィリピン vs ベトナム」なのか

◆日本企業の東南アジア進出で人気の2カ国

ここ10年ほど、日本企業が東南アジアに進出する際の候補として、

  • 製造業:タイ・ベトナム
  • IT/BPO・サービス:ベトナム・フィリピン

がよく比較されてきました。

実際に当社へお問い合わせを頂く企業や支援を行う企業でも、進出国をフィリピンかベトナムかで悩まれる企業は多く、両国ともに魅力的な市場でありますが、日本企業が参入する際のハードルや、事業内容や企業による向き不向き等の特徴は異なります。

特にベトナムは、 

  • 早くからオフショア開発拠点として注目されていた
  • 日系IT企業の進出も多く、既に大規模拠点を持つ企業も多数

という「先行優位」があります。

一方で、フィリピンは

  • BPO・コールセンター・グローバルバックオフィスで欧米企業が大量進出
  • 英語人材を活かしたIT/BPO拠点として実績が蓄積
  • 近年は日本企業のIT・サービス系進出が増加

という状況です。

両国に共通しているファクターとしては、中長期的な市場成長が見込まれる点です。

◆製造中心のベトナム/サービス・BPO中心のフィリピンという構図

ベトナムは製造業・サプライチェーンの観点でも非常に重要な国であり、
「工場+開発」のセット拠点として評価されています。

フィリピンは、逆に

  • BPO
  • コールセンター
  • IT開発+運用サポート
  • カスタマーサクセス・バックオフィス
  • 欧米進出前のグローバル体制構築拠点

といった「サービス・オフィスワーク系・グローバル展開」に強みがあります。

◆「どちらが良いか」ではなく「自社の事業に合うのはどちらか」

特にIT・サービス企業にとって重要なのは、 

  • どこでエンジニア・オペレーション人材を採りやすいか
  • 英語でグローバル展開しやすいか
  • 今から参入しても人件費・採用競争で戦えるか

という視点です。**オフィスワーク中心のIT・サービス企業にとっては、
「今から新規参入するなら、ベトナムよりフィリピンに分がある」**というのが現状の見立てです。


人口動態と市場ポテンシャルの比較

◆人口規模・平均年齢・人口ボーナス

  • フィリピン:人口 約1億1,600万人超(*国連2025年データ)、平均年齢 約26歳
  • ベトナム:人口 約1億106万人超(*国連2025年データ)、平均年齢 約33歳

どちらも若く成長中の国ですが、上記の図の人口ピラミッドで比較すると、フィリピンの方がより若く、人口ボーナス期が長く続くと見込まれています。

IT・サービス企業にとっては、

  • 若い労働人口が長期間確保しやすい
  • 中間層の拡大とともに、デジタルサービスの内需も伸びる

という意味で、フィリピンは「人材供給」と「市場成長」の両面で魅力があります。

◆都市部の中間層拡大と消費市場

  • ベトナム:製造中心の外資誘致から、都市部の中間層が拡大
  • フィリピン:マニラ首都圏・セブなどで、BPO・サービス業を中心に中間層が急拡大

特にフィリピンでは、

  • BPO産業の拡大で「英語+ホワイトカラー層」が増加
  • EC・Fintech・オンライン教育・エンタメ等、デジタルサービスの伸びが顕著

であり、IT・サービス企業にとっては、自社サービスのテストマーケットとしても相性が良い国です。

また、当社でもフィリピン、ベトナムを含むASEAN諸国で有形商材の販路開拓をしておりますが、食品や日用品を含む有形商材の販路開拓の観点では、フィリピン及びベトナム共に日本製品に対する信頼は非常に高く、現地の販売代理店や小売りに対しても総じて反応は良いという実態があります。


人件費・人材の比較(英語力・スキル含む)

◆人件費水準:ベトナムも「安くはない」フェーズに

かつては「ベトナム=人件費が安い」というイメージがありましたが、

  • 大手日系・外資IT企業の進出が進み
  • 優秀なエンジニアの給与水準は上昇
  • ハノイ・ホーチミンの一等地オフィス賃料も高騰

しており、“先行組”に比べると、今から参入する企業にとってのコストメリットは薄まりつつあります

一方フィリピンは、

  • オフィスワーカーの人件費は日本の1/3〜1/2程度
  • オフィス賃料もエリア選定次第で抑えやすい
  • 特にBPO・IT系人材は層が厚く、給与とスキルのバランスが取りやすい

という状況です。

※実際に当社でITオフショア開発の進出国をフィリピンとベトナムでP/Lベースの3ヵ年と5ヵ年で事業計画を組み、詳細なコストまで算出した際に、

  • 人件費(福利厚生含む)
  • 年間人件費上昇率
  • 固定費

が特に差分が出ており、

ベトナムでのオフショア開発の進出の場合は、

  • 人月単価
  • 稼働率

の両方をある程度高いラインで維持しないと損益分岐点を超えづらい上に、小規模オフショア開発の場合は、黒字化が難しいという試算が出ております。

◆英語力・外国企業での就労経験の違い

ここが、IT・サービス企業にとって最も大きな差になるポイントです。

【ベトナム】

  • 理工系・エンジニアの層は厚い(ハノイ工科大学 等)
  • ただし、英語力は個人差が大きく、顧客折衝や仕様調整を英語で任せられる人材は非常に限定的

【フィリピン】

  • 英語が公用語の一つで、大学卒であれば英語での業務が前提
  • 米・豪・欧向けBPOで働いた経験者が多く、グローバル企業の働き方に慣れている

「英語で顧客対応」「英語でプロジェクトマネジメント」「英語圏への展開」を見据えるなら、フィリピンの優位性は非常に大きいと言えます。

◆BPO・オフショア開発・グローバル対応拠点に向くのはどちらか

  • 「日本向けの下請け開発のみ」であれば、ベトナムも依然選択肢
  • 「日本+英語圏向けサービス」「グローバルのサポート・運用」を視野に入れるなら、フィリピンが圧倒的に有利

特に、
オフショア開発+カスタマーサポート+運用監視といった“複合オフィス”を構える場合や、第3国との開発連携体制の構築を検討する場合は、
英語+IT人材をまとめて確保できるフィリピンの方が設計しやすいのが実務上の実感です。

※フィリピン側の人件費・採用実態は、別記事「フィリピンの人件費と人材採用の実態」で詳しく解説しています。


ビジネス環境・インフラ・行政手続きの比較

◆インフラ(通信・交通・電力)と実務上の体感

  • ベトナム:主要都市のオフィスエリアではインフラが整備されつつあるが、交通渋滞や電力面で課題も残る
  • フィリピン:マニラ・セブのビジネス街ではビジネス用インターネット・電源バックアップ環境が整ったビルが多数

どちらも「日本並み」とは言えないものの、
BPO・ITオフィス向けのグレードA~Bオフィス(*主に外資系企業が入居するビル)では、24時間稼働前提のインフラが整っている点で共通しています。

フィリピンでは、 

  • BPO企業のニーズに合わせて設計されたビルが多く
  • 24時間入退室・ジェネレーター完備・複数回線敷設可能

といった「オフィスワーク向けインフラ」はかなり整っているのが特徴です。

◆法人設立・許認可取得の難易度とスピード感

行政手続きの煩雑さは、
正直なところ「どちらもある程度の時間と手続きが必要」というのが実情です。

ベトナムの場合:

  • 外資100%法人の設立に3~4カ月程度かかるケースが多い
  • 事業内容によっては追加の事業ライセンスが必要
  • 窓口担当の裁量・運用で時間が読みにくいこともある

フィリピンの場合:

  • 外資100%法人の設立に5〜6カ月程度かかるケースが多い
  • 事業内容によっては追加の事業ライセンスが必要
  • 窓口担当の裁量・運用で時間が読みにくいこともある

ただし、
一度設立してしまえば、IT/BPO系のオペレーションは比較的回しやすい土壌があり、フィリピン、ベトナム共にIT企業に関しては政府の外資優遇策等もある為、現地法人設立自体はそこまでハードルは高くありません。

※フィリピンの会社設立については、既存記事「フィリピンの会社設立FAQ」等に詳細をまとめていますので、そちらも参照ください。


業種別に見た適性(IT・サービス企業視点)

◆製造業中心の場合

  • ベトナム:製造拠点・サプライチェーンの観点から依然として非常に重要
  • フィリピン:製造よりもサービス・BPOに強み

製造業にとっては、
「工場はベトナム・タイ、バックオフィスやITはフィリピン」という組み合わせも現実的です。

◆IT・デジタルサービス企業の場合

IT・SaaS・Webサービス・ゲーム・デジタルマーケティング企業などにとっては、以下の観点が重要です。

  • エンジニア、デザイナー、マーケターなどデジタル人材の採用難易度
  • 英語でのサポート・運用・プロジェクトマネジメントのしやすさ
  • BPO・サポートチームとの連携の取りやすさ

これらを総合すると、

  • 日本向け開発オンリー・英語不要 → ベトナムも依然選択肢
  • 日本+海外向け、将来のグローバル対応を視野に入れる → フィリピン優位

という構図になります。

※実務上で考慮すべき点として、ベトナムでオフショア開発拠点を設立する場合は、

  • 日本語人材のみで体制構築する事は非現実的
  • ブリッジエンジニアやコミュニケーターとして日本語人材を採用
  • 他のエンジニアはベトナム語メイン+テキストの英語コミュニケーション

を取る企業が多くなります。

ここでの課題として、

  • 末端のエンジニアに共通言語でコミュニケーションが取れない
  • 将来的に第3国へ拠点を広げた際に、他国の拠点との開発体制が構築しづらい

という課題が現実的に出てきます。

一方でフィリピンにおいては、

  • 末端のエンジニアまで共通語の英語でコミュニケーションが可能
  • 第3国の拠点とも連携体制を構築可能

というメリットがあります。

◆BPO・コールセンター・CS(カスタマーサクセス)の場合

この領域に関しては、フィリピンが世界有数のBPO拠点として確立されており、

  • 米・豪・欧の大手企業のコンタクトセンターが多数
  • ナイトシフトを含む24時間稼働前提の人材プール
  • CS・サポート業務のノウハウ・文化が根付いている

という点で、ベトナムよりも一歩抜きん出ています。

◆小売業の場合

販売する製品によっては両国ともに、ネガティブリストに抵触し外資規制がかかる場合がある為、現地のディストリビューターをパートナーとして販路拡大をするか、合弁会社を設立する事を検討する必要がりますが、消費市場という観点においてはフィリピン・ベトナム共に、

  • 中長期的な市場の拡大
  • 可処分所得・中間層の拡大

それに伴い、確実に高品質な日本製品のニーズが拡大しています。

当社の販路開拓支援の実績においても、フィリピン・ベトナム共に現地小売店やディストリビューターの日本製品への反応は良く、販路拡大がしやすい土壌があります。


コストだけで決めないための「経営視点」の判断軸

◆3〜5年先の事業ポートフォリオから見た国選び

IT・サービス企業にとって重要なのは、
「現時点の人件費の安さ」だけではなく、

  • 3〜5年後にどういう事業ポートフォリオを組みたいのか
  • どの国に、どの役割の拠点を置くべきか
  • 3年後に100名体制なのか、1,000名体制なのか

という中期視点です。

例えば:

  • 今は日本向けの開発・運用が中心だが、将来的に英語圏にも展開したい
  • カスタマーサポート・CS・バックオフィス機能も海外に持っていきたい
  • 事業拡大を見据え、開発リソースの大半を海外に置いてスケールさせたい

といった構想がある場合、最初からフィリピンを前提に設計しておく方が拡張しやすいケースが多く見られます。

◆国単位ではなく「役割単位」での拠点配置

  • 「製造/物流はベトナムやタイ、IT・BPOはフィリピン」
  • 「日本本社は企画・営業・PM、フィリピンは開発+サポート+運用」

のように、国ごとの“役割分担”で設計する発想が重要です。

「東南アジア進出=どの国にするか」ではなく、
**「自社バリューチェーンのどの機能を、どの国に置くのが最適か」**という問いに変えると整理しやすくなります。

◆撤退・縮小のしやすさも含めたリスク管理

新興国への進出では、 

  • 成功すればスケールしやすい一方で、
  • 思惑通りにいかなかった場合の「撤退・縮小」のしやすさ

も重要です。

IT・サービス企業の場合、 

  • ハードアセット(工場・重設備)は少ない
  • 人材・ノウハウ・顧客基盤が資産

となるため、柔軟にスケールアップ/ダウンできる拠点設計が望まれます。

フィリピンは、 

  • オフィス・人材・BPOの柔軟性が高く
  • 「初期は小さくテスト → 成功すれば拡大」という段階的アプローチが取りやすい

という意味でも、今から参入するIT・サービス企業にとって相性が良いと言えます。

※オフショア開発拠点設立については、既存記事「オフショア開発拠点設立の完全ガイド」に詳細をまとめていますので、そちらも参照ください。


Social Zeroが支援する「進出国比較・拠点戦略」の設計

当社 Social Zero は、フィリピンを中心とした海外進出を「国選び」から支援しています。

◆フィジビリティスタディで複数国を比較検討

  • フィリピン・ベトナム・その他ASEAN諸国を対象に、人件費・人材・規制・市場性などを比較
  • 貴社の事業モデルにとっての「フィット感」を整理
  • 「どの国に、どの機能を置くべきか」をレポート化

◆事業モデル別に最適な国・都市を提案

  • IT開発拠点/BPO拠点/営業拠点など、機能別に候補地を提案
  • マニラ・セブといった都市レベルでの比較も実施
  • 現地視察・パートナー面談・候補オフィスなどもアレンジ

◆フィリピン進出を選んだ/選ばなかった企業の実例から見えるポイント

実際には、

  • ベトナムを検討しつつ、最終的にフィリピンを選んだIT企業
  • 製造拠点はベトナム、IT・BPO拠点はフィリピンとした企業
  • 販路拡大の市場としてフィリピン、ベトナム両国を選択した企業

など、企業ごとに最適解は異なります。

当社では、こうしたケーススタディも踏まえ、「御社の場合」に絞った現実的な選択肢を一緒に整理します。


まとめ:IT・サービス企業にとって、今からの新規参入はフィリピンが有利

  • ベトナム
    • 既に多くの先行企業が拠点を構え、人件費・採用競争も上がっている
  • フィリピン
    • 英語力の高い若い人材が豊富
    • BPO・IT・サポートの実績が蓄積
    • オフィス・人材面で今なお「伸びしろ」が大きい

という状況です。

特にIT・サービス企業が、
「今から東南アジアでオフィス拠点をつくる」のであれば、
フィリピンを軸に検討する価値は非常に高いと考えています。


  • フィリピンとベトナムのどちらを選ぶべきか迷っている
  • 自社の事業モデルにとって、どの国・どの都市が適しているか整理したい
  • まずはフィージビリティレベルで比較検討をしたい

といった段階でも、お気軽にご相談ください。

東南アジア進出(フィリピン/ベトナム等)の比較検討・個別相談はこちら

御社の現状とご意向を伺ったうえで、
「今からどの国に、どの機能を置くべきか」を、経営目線でご一緒に整理いたします。

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