ベトナム進出企業が直面しやすい3つの壁と、「安いから今のうちに出たい」という誤解

ベトナムは、製造業やITオフショア開発を中心に、日本企業の主要な進出先として定着してきました。

  • 「中国の次の候補地」
  • 「成長しているし、まだ人件費も安い」
  • 「ベトナム進出で儲けている企業もいる」

といったイメージから、

「ベトナムは成長しているし、安いから今のうちに出たい」

という理由でベトナム進出を検討・実行する日本企業も少なくありません。

一方で、当社に相談をいただく企業の多くは、

  • ベトナム拠点はあるが、以前ほど伸びていない
  • 人件費・採用競争が厳しくなり、当初想定のメリットが薄れてきた
  • 撤退までは考えていないが、今のまま続けて良いのか不安

といった、「ベトナム進出“後”の現実と壁」に直面しています。

本記事では、

  • 「ベトナムは成長していて安い」という誤解
  • ベトナム進出企業が直面しやすい3つの壁
  • それぞれに対して何をどう再設計すべきか
  • 必要に応じて、フィリピンなど他国との組み合わせも含めた考え方

を整理します。


Contents

「ベトナムは成長しているし、安いから今のうちに出たい」という誤解

確かに「成長している」が、「安い」は必ずしも正しくない

ベトナムは、

  • 高い経済成長率 (2025年:GDP成長率8.02%)
  • 若い人口構成 (2024年:平均年齢31歳)
  • 製造・IT人材の層の厚さ

という点で依然として魅力的な市場です。

しかし、

「まだ安いから今のうちに出たい」

という動機で進出を決めてしまうと、
**「思ったほどコストメリットが出ない」「日本と大差ない(場合によっては高い)」**という現実に直面するケースが増えています。

※当社へのベトナム進出に関わるお問い合わせでも、このようなイメージでベトナム進出を検討されている企業は多く、実際にコストシミュレーションを行うと想定外に進出コストがかかる為に、イメージと違ったという声は良く聞かれます。

ベトナム進出にかかる“大まかな費用感”のイメージ

業種・規模で大きく変動しますが、
一般的な日系企業のベトナム進出(現地法人立ち上げ〜1年目)では、例えば以下のようなコストが発生します。

  • 法人設立・ライセンス取得 (業種等により変動:80万円~300万円)
    • 登記費用、翻訳・認証、現地専門家(コンサル・会計士・弁護士)への報酬 など
  • オフィス関連 (数名規模で:月10万円~)
    • ハノイ・ホーチミン主要エリアのオフィス賃料(近年上昇傾向)
    • 内装・什器・IT設備等の初期投資
  • 人件費
    • 現地スタッフ(管理職・エンジニア・営業・小売スタッフなど)
      • 例:
        • エンジニア:売り手市場で、ミドルレベルで月20万円以上
        • 営業人材:月12万円~20万円
        • ジェネラルマネージャークラス:月30万円~60万円
        • 小売スタッフ:月8万円~15万円
    • 日本人駐在員の駐在コスト(給与・住宅・教育・渡航費 など)
  • 専門家・アウトソーシング
    • 会計・税務・法務・労務アウトソーシング費用
  • 現地マーケティング・営業活動
    • 展示会・広告・販促・出張費 等

これらを合算すると、

  • 初年度で2,000万円〜数千万円規模のキャッシュアウト

になるケースも珍しくありません。

小売・店舗展開や、採用・人事制度にかかるコストについては、以下で詳しく解説しています。

  • ベトナムでの店舗展開・小売出店のポイントと費用感:
  • ベトナム進出における人材採用・定着・報酬・カルチャー・福利厚生:

「安いから出たい」ではなく、「何をどこまで任せるか」で判断する

重要なのは、

「ベトナムは安いから出る」ではなく、
「どの業務・機能をベトナムに任せると、全体として合理的か」

という視点です。

例えば:

  • 製造の一部工程をベトナムに持つ
  • 特定技術領域の開発チームをベトナムに置く
  • 一方で、BPO・CS・バックオフィスはフィリピンに置く

など、

“何を”“どの国に”置くと、事業ポートフォリオとしてバランスが良いかを設計する必要があります。


壁1:人件費上昇と採用競争の激化

かつての「低コスト優位」が薄れつつある

ベトナムは長らく、

  • 製造業:人件費が安く、若い労働力が豊富
  • IT:エンジニア人材が豊富で、日本向けオフショア開発の“定番国”

として評価されてきました。

しかし近年、

  • ハノイ・ホーチミンなど大都市圏での給与水準上昇
  • グローバル企業・先行日系企業との採用競争激化

により、後発組にとっての「圧倒的コストメリット」は薄れつつあるのが実態です。

オフショア開発拠点の成功を経験している当社でも、今からオフショア開発拠点設立目的でのベトナム進出は、よほど明確な理由か企業体力が無い限りは*おススメしていません。

既に、この業界はレッドオーシャンとなっています。

再設計ポイント1:人件費だけでなく「生産性 × 付加価値」で見る

日本との単純比較で「給料が何分の一か」ではなく、

  • 一人当たりのアウトプット量
  • 担っている工程の価値
  • 提供できる付加価値(技術力・スピード・品質)

まで含めて、「総合的なコストパフォーマンス」を見直す必要があります。

例:

  • 下流工程(コーディングのみ) → テスト・運用・一部設計まで広げる
  • 単発案件 → 特定プロダクト・サービスの中長期開発ハブにする

など、人件費上昇を“役割の高度化”で吸収する発想が求められます。

再設計ポイント2:採用エリア・ポジション構成の見直し

  • ハノイ・ホーチミン以外の都市圏活用
  • 新卒・第二新卒採用と育成の組み合わせ
  • リモートワーク前提のチーム構成

など、「どのエリアの、どのレンジの人材を採るか」のポートフォリオを再検討する余地もあります。

※「東南アジア進出はフィリピンかベトナムか?」の比較については、

こちらの記事で解説しています。


壁2:競合増加と差別化の難しさ

「ベトナムに拠点があります」だけでは差別化にならない

  • 製造:多くの外資・日系が既に拠点を構え、設備・品質・コスト競争が激化
  • IT・オフショア開発:日系・韓国系・欧米系ベンダーが乱立し、人月単価競争になりやすい

そのため、

  • 「ベトナムに開発拠点があります」
  • 「ベトナムに工場があります」

だけでは、**顧客から見た差別化要因として弱くなっています。

再設計ポイント1:ベトナム拠点の“役割”を明確にする

  • 特定技術領域の専門チーム(例:フロントエンド/組み込み/QA など)
  • 特定製品・プロダクトの開発・製造拠点
  • 日本市場だけでなく、他国市場向けも含めた「リージョナルハブ」

など、「ベトナム拠点ならではの役割」を明確にすることで、

  • 採用・育成
  • 投資配分
  • 他拠点との連携

を設計しやすくなります。

再設計ポイント2:他国との“役割分担”を検討する

  • ベトナム:開発・製造の中心
  • フィリピン:BPO・カスタマーサポート・バックオフィス
  • インド:高度IT・R&D領域

といったように、「すべてベトナムで完結させる」モデルから、「国ごとに得意分野を活かす」モデルへシフトしている企業も増えています。

特に、

  • ベトナム開発+フィリピンBPO/CS
  • ベトナム開発+フィリピン開発 で両国で開発工程や分野を分ける

の組み合わせは、

  • 開発生産性とコストのバランス
  • 英語サポート・多言語対応能力

の観点で、現実的かつスケーラブルな構成になり得ます。

※「オフショア開発拠点設立の完全ガイド」については、

こちらの記事で解説しています。


壁3:本社とのギャップとガバナンス・スピードの問題

ベトナム現地法人の「声」と、本社の「期待」がずれていく

よくある状況:

  • 現地側:
    • 「本社の意思決定が遅く、市場機会を取り逃している」
    • 「ベトナムの現状を十分理解されないまま、数字だけ求められる」
  • 本社側:
    • 「現地が何をしているのかよく見えない」
    • 「当初期待したほどの成果が出ていない」

このギャップが広がると、

  • 現地は「言っても変わらない」と感じてしまい
  • 本社は「現地は何も言ってこない」と感じる

という悪循環に陥ります。

※このような日本側と海外拠点での対立構造は、大半の海外進出をする日本企業が直面する状況となります。

この状況が継続または改善しない場合は、海外事業が成功する事は難しく、また多くの場合は社内で意識改善が難しい事から、当社のような外部専門家が入り、仕組みや意識改善の取り組みを行う事が有効な手立てとなります。

再設計ポイント1:権限・レポートラインの明確化

  • 投資
  • 価格・条件
  • 人事
  • マーケティング
  • パートナー選定

などを項目別に整理し、

  • 現地が自律的に決められる範囲
  • 本社と協議すべき範囲
  • 本社が最終決裁すべき範囲

を明文化した「権限マトリクス」があるだけで、

  • 現地は動きやすく
  • 本社も安心して任せやすく

なります。

再設計ポイント2:撤退だけでなく「縮小・モデル転換」も含めた選択肢

当社への相談でも、

「今すぐ撤退したいわけではないが、今のままの形で続けるのは厳しい」

というケースが多くあります。

その場合、

  • 拠点規模の縮小(人員・オフィス)
  • 任せる事業・サービスの絞り込み
  • ベトナム拠点の役割変更(例:開発専任/特定プロダクト専任)

など、「続けるかやめるか」以外のシナリオを設計することが重要です。

※「海外拠点の撤退・縮小ラインの決め方」については、

こちらの記事で解説しています。


ベトナム拠点を「見直す」ための3ステップ

ステップ1:現状の棚卸し(数字+定性)

  • 売上・利益・案件数・顧客構成
  • 人材・組織(採用・離職・マネジメントの状態)
  • 市場環境・競合・顧客の変化

を整理し、「今どこにいるのか」を客観的に把握します。

ステップ2:役割とシナリオの比較検討

  • 現状維持
  • 縮小
  • 撤退
  • 他国との役割分担前提での再設計

などのシナリオを、

  • 数字(PL・CF・投下資本回収)
  • 戦略的価値(顧客・技術・ブランド)

の両面から比較します。

ステップ3:アクションプランの策定

  • 1〜2年でどの状態に持っていくか
  • 採用/削減/組織再編の方針
  • 本社との関係・ガバナンス設計の見直し
  • 必要ならフィリピン等他拠点の新設・移転

を、ロードマップとして落とし込みます。


Social Zeroが支援できること:ベトナム拠点の再設計と他国との組み合わせ

当社 Social Zero は、

  • ベトナムに既に拠点を持つが、今後の方向性に悩んでいる企業様に対して、

以下のような支援を行っています。

  • ベトナム拠点の現状診断(数字・人・組織・市場・ガバナンス)
  • 継続・縮小・撤退・役割変更などのシナリオ設計
  • フィリピン拠点(BPO/CS/ITオフショア等)との組み合わせ提案
  • 実行フェーズ(組織再編・パートナー見直し・営業代行など)の伴走

※「海外進出プロジェクトを成功させる「上流〜下流」設計ガイド」や「海外営業代行サービス」

については、以下の記事で解説しています。


まとめ:ベトナム進出の「次の一手」は、“安いから”ではなく“役割と構えの再設計”

  • ベトナムは依然として重要な進出先ですが、
    • 人件費上昇・採用競争
    • 競合増加・差別化の難しさ
    • 本社とのギャップ
      という3つの壁に直面する企業が増えています。
  • 「ベトナムは成長しているし、安いから今のうちに出たい」という発想だけでは、
    現実とのギャップが大きくなりがちです。
  • 重要なのは、
    「ベトナムに何をどこまで任せるか」
    「他国とどう役割分担するか」
    を前提から再設計すること
    です。

ベトナム拠点の見直し・再設計(継続・縮小・撤退・他国との組み合わせ)に関するご相談はこちら

御社のベトナムでの現状と課題を伺ったうえで、
最も現実的で、中長期の成長につながる選択肢をご一緒に整理いたします。

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