海外進出や新市場への参入を検討する際、多くの企業がまず行うのが、
- マクロ統計(人口・GDP・所得水準)
- 例:対象国の統計局等のデータ
- 業界レポートや二次情報の収集
- 例:JETROや調査機関のオープンデータ
- 海外市場規模の試算
- 例:業界団体のデータ
といった「数字中心の海外市場調査」です。
これらはもちろん重要ですが、
数字だけでGO/NO-GOを判断するのはリスクが高いのも事実です。
当社が支援したベトナム・韓国市場へのフィージビリティスタディ(大手小売プライム上場企業向け)でも、
- 現地小売競合店舗や各エリア不動産への訪問調査
- 対象産業の研究を行う教授へのデプスインタビュー
- 規制・チャネル構造・商習慣に関する現地当局ヒアリング
といった定性調査(Qualitative Research)が、
参入判断や参入モデルを大きく変えたポイントになりました。
それがなぜかというと、公的機関等のオープンデータ等で出てくる情報は、最新版の調査報告書でも少なくとも前年度以前の調査を基に調査報告書を作成しております。
また、定量的な統計情報等は取得できたとしても、実際の現場の最新動向や消費者行動は反映できていません。
したがって、ASEAN諸国等の成長が速い国々では、それらの情報が既に古い情報である事が多く、実数や実態とは乖離している事がある為、常に現地の最新の現場の定性的な情報を収集する事が市場を適切に把握する為に重要な情報源になります。
本記事では、
- 海外市場調査で「数字だけ」を見てはいけない理由
- 定性調査・現地ヒアリングでしか得られない4つの情報
- ベトナム・韓国向けフィージビリティスタディの実例(抽象化)
- どのタイミングで、誰に、何を聞くべきか
- Social Zeroが提供する海外市場調査(定性調査・現地FS)の進め方
を整理します。

Contents
なぜ海外市場調査を「数字だけ」で終わらせてはいけないのか
パワーポイント上の市場規模だけでは、実際の「売れる/売れない」は分からない
- 「市場規模◯千億円」
- 「年平均成長率(CAGR)◯%」
- 「ベトナムのGDP成長率8.02%」
といった情報は、進出検討をする国の概要を理解する目的としては有用です。
しかし、それだけでは、
- 実際にどのチャネルで
- どの価格帯で
- どのエリアで
- どの事業形態で
- 誰に売れるのか
という事業レベルの問いには答えられません。
他社も同じ数字を見ている
公開情報や一般的な海外市場調査レポートは、
- 競合も同じものを見ている
- 同じ前提・同じ数字から出発している
- 既に情報が古い
ことがほとんどであり、海外進出の解像度を高める上で、
「その先の解像度」をどこまで上げられるかが勝負になります。
実際に、このようなオープンデータの調査報告書では、“この国の経済と市場は伸びている”程度の結論にしか至らない事が多いはずです。

定性調査・現地ヒアリングでしか見えない4つのポイント
海外市場調査で、定性調査(インタビュー・フィールドリサーチ)を入れることで見えてくるのは、主に以下の4つです。
1. 小売バイヤー・ディストリビューターの本音
- どのような商品・ブランドなら棚取りを検討するのか
- 実際にどの程度のマージンが動いているのか
- プロモーション費用や店頭活動に対する期待値
- 小売店で接客員や営業担当者が、売りやすい商品の特徴
これは、現地の小売・流通プレイヤーへ直接ヒアリングしなければ分からない情報です。
シンガポールの小売店へのインタビュー調査の実例として、
競合のメガネ製品が日本とシンガポールでの小売価格では、シンガポールでは1.5倍~2倍高い価格で販売されていて、小売店側からすると製品の良し悪しに関わらずマージン率が高い製品が現場の接客担当者が“より売りやすい=顧客に進めたい製品”(*営業インセンティブ率がより高い為)である事が判明した事例もあります。
つまり、必ずしもエンドユーザーにとって良い製品が売れるわけではなく、売れる為の理由を定性調査で知る事ができ、現地市場に合わせた適正価格等も事前に知る事ができたのです。
【ここから分かる事として、プロダクトアウト型の日本企業は、
“良い製品=売れる”
という前提で海外販路展開を行いますが、
必ずしもその前提は正しくないという実証になります。】
2. 消費者のリアルな購買行動・ブランド認知
- どのチャネル(モール/路面店/EC/SNS/口コミ)から情報を得ているか
- 日本ブランドに対するイメージと、具体的に買っているカテゴリー
- 価格帯・パッケージ・サイズなどの受容性
数字上の「市場規模」と、実際の“買われ方”とのギャップがここで見えてきます。
3. 競合の見えない動き(販促・チャネル戦略・現場オペ)
- 店頭での棚位置・商品数・POP・プロモーション頻度
- 日本での小売価格とのギャップ
- ECやSNSでのキャンペーン運用
- 現場スタッフへのインセンティブ・商品教育内容
レポートに出てくるのは「売上シェア」までで、
「なぜ売れているのか」の裏側は、現場を見なければ分かりません。
4. 規制・ライセンス・運用実態(グレーゾーン含む)
- 法令上はOKでも、実務上は行政の判断が厳しい分野
- 小売ライセンス・ENT(ベトナム)やフェアトレード規制(韓国)などの運用
- ラベル表示・広告規制など、グレーゾーンの扱い
- 税関での輸入貨物の調べ方やHSコード
- 厳密な法令が無い事例での実務上の判断 (*東南アジア諸国でのよくある)
机上の法令だけではなく、実際にどのように運用されているかを押さえることで、
参入スキームや商品ポートフォリオの設計が現実的になります。
※関連記事:↓こちらの記事で解説しています。

ベトナム・韓国のフィージビリティスタディで定性調査が変えたもの(実例ベース)
参考:韓国市場調査事例
https://social-zero.com/works/korea-market-entry-research/
当社が支援した、大手小売上場企業様のベトナム・韓国進出に向けたフィージビリティスタディでは、
- ベトナム・韓国それぞれで、
- 小売競合店のショップ店員
- 特定産業の研究を行う大学教授 (ベトナムのみ)
- 競合ポジションにあるローカルブランド
- 規制・税務・法務の専門家弁護士
- 各エリアの不動産屋
- 消費者インタビュー
といった対象への**定性調査(インタビュー・現場訪問)**を数か月間に渡り実施しました。
その結果、
- 当初想定していたより産業構造が詳細に明確化され、
→ グローバルサプライチェーン構築のヒントに - 現地不動産の訪問調査による、近年のローカル出店スタイルのトレンドの明確化
→ ベトナムではよりローカルエリアの物件に出店する方向に修正 - 特定製品の輸入規制と法令リスクを踏まえ、
→ 現地展開事業内容の変更
など、レポートだけでは出てこない“具体的な事業レベルの設計変更”につながりました。
※「海外進出プロジェクトを成功させる「上流〜下流」設計ガイド」については、
こちらの記事で解説しています。

どのタイミングで、誰に、何を聞くべきか
フェーズ別の定性調査の位置づけ
- 構想段階(Go/No-Go 検討前)
- マクロデータ+「現地の声」をセットで集める
- ▶ バイヤー・業界関係者・現地当局などへのライトなヒアリング
- フィージビリティスタディ(FS)段階
- 具体的な事業モデル・チャネル・価格帯仮説に対する検証
- ▶ ターゲット顧客・販売チャネル・現地産業有識者などへの深堀りインタビュー
- 具体的な進出方法(登記・輸出・ロジスティクス・不動産・ライセンス等)に対する最新情報把握
- ▶最新の規制や制約、具体的なフロー、不動産契約やトレンド等の現地確認
- 実行直前〜初期実行フェーズ
- 立ち上げ施策の手応え確認・修正点洗い出し
- ▶ テスト販売先・初期ユーザー・現場スタッフへのフィードバック収集
対象別に見た「聞くべきこと」
- 小売バイヤー・ディストリビューター
- 採用したいカテゴリ・ブランドの条件
- 既存日本ブランドへの評価 (※品質が高いは当たり前、それ以外のポイント)
- マージン・販促・リスク許容度・返品ルール・取引条件
- 顧客(消費者・法人ユーザー)
- 現在の購買行動・チャネル
- 価格感度・品質期待値
- 日本ブランドへの認知・期待とギャップ (※品質が高いは当たり前、それ以外のポイント)
- 規制・専門家(法務・税務)
- 小売ライセンス・ENT・広告規制などの運用実態
- 日本企業が過去に問題になったパターン
- 法令が曖昧なグレーゾーンの実運用実態と関連リスク
※「ベトナム進出を本格検討する前に整理すべき5つの論点」については、
こちらの記事で解説しています。

Social Zeroの海外市場調査(定性調査・現地FS)の設計イメージ
当社 Social Zero は、
「現地でしか得られない情報の海外市場調査」をコンセプトに、以下のような流れでプロジェクトを設計しています。
1. スコープ定義
- 対象国・エリア(例:ベトナム大都市圏+特定地方都市/韓国全土など)
- 対象カテゴリ(小売/日用品/食品/ITサービス 等)
- 検証したい仮説(ターゲット・価格帯・チャネル・スキーム・規制・リスク)
2. 調査設計(定量+定性)
- 二次情報・統計データの収集・整理(マクロ市場調査)
- 定性調査の設計:
- 対象セグメント(バイヤー・顧客・競合・専門家 等)
- インタビューガイド(質問設計)
- 現地公的機関情報収集・問い合わせ
- サンプル数・スケジュール
3. 現地リクルーティング・インタビュー実施
- 現地対象者リクルーティング
- 対面/オンラインインタビューの実施
- 店頭・現場視察を組み合わせた“定性+観察”のハイブリッド
4. 分析・示唆出し
- 数字と現場の声を組み合わせた分析
- 「想定通りだった点」と「想定と違った点」の整理
- 事業モデル・チャネル戦略・価格戦略などへのインプリケーション
5. 経営層向けアウトプット
- 経営・事業責任者向けプレゼンテーション
- Go/No-Go、優先国・優先チャネルの選定支援
- 次フェーズ(パートナー探索・テスト販売など)への具体的なステップ提案
当社では、進出に伴う海外フィールド調査は、当社代表が必ず現地で調査を行うようにしております。
理由としては、調査を行う際にスタッフレベルの調査員では、事業責任者や経営視点で調査を行う事は実務上難しい為、調査依頼企業様の事業者目線で調査を行う事で、本当に必要な情報を判断して現地で情報収集を行い、ハイレイヤー目線で質の高い生きた情報を集める事を重要視している為です。
“こうする事で、調査結果を踏まえたフィージビリティスタディの際に、実際に調査を行った代表が経営視点でレポーティングとその後のアプローチ方法を一貫してお客様にお話しする事ができ、より精度も品質も高いアウトプットを提供しております。”

どんな企業に「定性調査付きの海外市場調査」が向いているか
- 既にマクロデータや一般レポートは持っているが、最終判断に踏み切れない
- 社内で「ベトナム or 韓国」のような国比較議論をしているが、決め手となる現場情報が足りない
- 単なる市場規模感ではなく、チャネル・規制・人材まで含めて“事業として成立するか”を検証したい
- 将来の大規模投資(出店・工場建設・ブランド投入)を検討しており、FSの精度を上げたい
こうした状況の企業には、
「数字+現地の声」をセットにした海外市場調査(フィージビリティスタディ)が特にフィットします。

まとめ:海外市場調査の本質は「意思決定に使える情報」を集めること
- 海外市場調査は、
- 市場規模・成長率
- マクロデータ
だけでは「行くべきか/やめるべきか」「どういう形で参入すべきか」を決めきれません。
- 定性調査・現地ヒアリングを組み合わせることで、
- 顧客・バイヤー・規制当局・競合の“生の声”
- 法令と運用のギャップ
- 事業モデルレベルのフィット感
が見えてきます。
「数字は揃ったが、最後の一押しが欲しい」
「机上の情報ではなく、現場の声も踏まえてFSをしたい」
という段階の企業ほど、
一度“数字だけではない海外市場調査”を検討してみる価値があります。
ベトナム・韓国を含む各国海外市場の定性調査・フィージビリティスタディに関するご相談はこちら
御社の検討状況・欲しいアウトプットのイメージ・予算感を伺ったうえで、
最適な海外市場調査のスコープと進め方をご提案いたします。



