中小企業の海外販路開拓における展示会活用術を網羅。出展前の準備、当日の集客・商談、終了後のフォローまで、失敗しないための実践的な手順をまとめました。
Contents
1,はじめに
◆海外販路開拓で展示会を活用する企業が増えている背景
初めて海外販路開拓をする際には、個別のターゲット層へのアプローチ「海外営業開拓」や、来場者層「ターゲット層」がある程度定まっている海外の展示会への出展の2パターンが主なスタートラインとなります。
その為、多くの企業が海外販路開拓の“はじめの一歩”として海外の展示会への出展を行い、自社製品やサービスの潜在顧客層の反応を見る、商談へ繋げる等へのアクションへ繋げ海外販路開拓の足掛かりに活用します。
◆「出展したが成果につながらない」典型パターン
当社へお問い合わせ頂く企業様の中でも、海外の展示会へ出店したが効果が無かった。集客に繋がらなかったという声も聞かれます。
その際に、どのエリアのブースに出店したのか。どのような集客施策を実施したのか、どのような準備を行ったのかをヒアリングすると、そのほどんどが集客施策を行っていない。またはブースの位置は気にせず初めてなので安いブースにした。最低限のカタログのみ準備した。という事が多く聞かれますが、多くの場合は準備不足が故に効果が出なかったケースが多く、同じ展示会の中でも事前の準備が出来ている企業ブースは多くの集客が出来ている事も多くあります。
◆本記事でわかること(準備〜フォローまでの具体的ステップ)
本記事では、これから海外の展示会に出展する企業様やこれまで展示会に出たが効果が無かったという企業様に向けて、どのような準備を行い、どのようにブースを運営し、その後のフォローアップに繋げて成果を出していくかを各国でBtoB/BtoCの展示会出展サポートを行ってきた当社が、順を追って詳しく解説していきます。

2,なぜ「展示会準備」が海外販路開拓の成否を分けるのか
◆海外展示会が持つ3つのメリット
- 海外バイヤーや潜在顧客層と一度に数多く接点を持てる
- 展示会にはその関連業界の海外バイヤーや現地消費者が明確な目的を持って訪れる為、エンゲージメント率が高くなります。その為、商談や製品の購入に繋がる接点を持つ為の絶好の機会と言えます。
- 競合・市場動向をまとめて把握できる
- 同業他社が多く出店する展示会では、競合製品やサービスの傾向から市場動向が把握できる点も魅力となり、同じ出展社同士での情報交換等をする事も可能となります。
- 自社ブランド・技術を直接訴求できる
- 展示会では直接自社の製品やサービスに対するレビューがその場で得られる点も大きなメリットとなり、どの様に訴求すればより魅力が伝わるのかどのように理解されるのかが、その場で把握できる等のメリットがあります。
◆準備不足でよくある「失敗パターン」
- 目的が曖昧で「とりあえず出展」してしまう
- 当社がヒアリングしてきた企業でも、「あまり効果が無かった」という企業は、準備が出来ていなくとりあえず出展した。という事が聞かれますが、これでは費用対効果が見込めず時間と費用を無駄にしてしまいます。
- ターゲットが定まらず、ブースの訴求がぼやける
- 出展する展示会も同じような業界の展示会でも来場者層が違う事が多々あります。また、誰に訴求するのかが曖昧なまま出展してしまい、ターゲット層とはかけ離れた来場者層が多い展示会に出展してしまうと、来場者層との目的ともマッチせずエンゲージメントに至らないケースもあります。
- カタログ・価格表・英語対応が不十分で商談が深まらない
- これもよくあるケースとなり、海外の展示会でとりあえずグーグル翻訳をかけた資料を印刷してきただけで、具体的な製品の詳細や値段は決めておらず、バイヤーがその場で商談を持ちかけても具体的な商談が出来ずに終わるケースや言語対応が出来ずに名刺交換で終わってしまい、機会損失をしてしまう企業も多いです。
- 展示会後のフォローがなく、名刺が「宝の持ち腐れ」になる
- 展示会で名刺交換した企業は潜在顧客層となり、熱が冷めないうちにフォローアップをする事が重要となりますが、言語対応や商習慣の違いが分からずに社内対応が後手に回り商談機会を逃してしまう事もあります。
◆海外販路開拓は「展示会前」が8割を決める
- 「名刺を集める展示会」から「商談を進める展示会」へ発想転換
- 日本と海外とでは商習慣の違いから展示会での目的も出展者と来場者とで違うケースも見受けられます。特に日本企業は情報収集目的が重きとなる一方で、海外の事業者やバイヤーはその場での具体的な商談を目的として来場します。
- そのため、海外の展示会に出展する際にはブースでの具体的な商談が出来る準備をしておかなければなりません。ただ製品やサービスを展示して商談の準備が出来ていない企業は、来場者からすると何をしに来たか分からない会社というネガティブな印象に繋がりかねません。
- 出展前に決めておくべきKPI(名刺数・商談数・受注見込み など)
- 展示会の出展前には前年度の来場者データ等が運営企業から公開されます。自社ブースへの集客や運営体制を考慮し、具体的な数字目標「KPI」を立てておくことが望ましく、KPIを基にどのような準備やアクションが必要なのかを取り決めます。
- 事前準備=「誰と会い・何を伝え・何を次のアクションとするか」の設計
- ブースの出展でターゲット層との接点やコミュニケーションの仕方、その後に製品やサービスの購入にその場で繋げてクロージングまでするのか、具体的なクロージングは後日商談設定するのか、ブースではどこまで開示しておいて次につなげるのか。具体的なアクションを取り決めておくことで展示会の運営がスムーズに行えます。

3,海外販路開拓のための展示会準備ステップ① 出展目的とターゲットの明確化
- 出展目的を「数字」で定義する
- 例:新規バイヤー〇社とのアポイント獲得、代理店候補〇社の発掘、潜在顧客50名との接触 など具体的な目的を数字でたててみましょう。
- 目的別(認知・リード獲得・パートナー開拓)で設計が変わる為、展示会の出展目的は製品やサービスの認知なのか、リードの獲得なのか、具体的な商談を行うのか、その場での購入に繋げるのかを明確化しておく必要があります。
- 狙う国・地域・バイヤー像を具体化する
- ターゲット業種・規模・ポジションを整理
- 例えばアメリカでの展示会でもアメリカの企業や消費者だけでなく、その他の国からもバイヤーが訪れ、また企業サイズも様々です。自社のターゲット層となる企業規模やその他の要素を明確化する事でより具体的なアプローチに繋がります。
- 「誰に何を売りたいか」を一文で言えるようにする
- 特に欧米等のコミュニケーションでは、ストレートな表現で結論を重視するアプローチが一般的ですが、日本は対極に間接的な表現でプロセスを重視するコミュニケーションを取りますが、これでは海外では話が伝わらない事もあるので、自社製品やサービスの訴求ポイントを端的に伝えられるストレートな表現を決めておくことも重要な要素となります。
- ターゲット業種・規模・ポジションを整理
- 出展する展示会の選定ポイント
- 自社ターゲットが本当に来場するか(来場者属性・過去実績)を運営企業のサイト等で事前に取得し、ターゲット層と照らし合わせておきましょう。
- 国・地域・言語・商習慣が自社とフィットするかも重要です。例えばインドネシアでの展示会でも社内にインドネシア語の対応が出来ないのであれば、その後のリードナーチャリングやフォローアップも自社では難しくなります。
- 出展コスト(小間料・渡航費・物流費・人件費)と期待リターンのバランスも検討すべきです。自治体の補助金等の活用も有効ですが、全額が支給されることはほぼ無く、投資の効果が見込めるのか、何回出るとどのくらいのリターンになるのかを概算でも把握しておきましょう。
4,展示会準備ステップ② ブース設計とプロモーション
- 一目で「何の会社か」伝わるブース設計
- メインメッセージを大きく表示する
- 説明しなくてもわかる写真・図・実物展示
- 導線設計(足を止める→話しかける→席に案内する)
- 実例として、以下のブース写真は当社が出展したBtoBイベントのブースとなります。日本での様子ですが、海外の展示会でも同様の工夫が出来ます。
- 当社のブースは最小単位の大きさで良い位置には取れなかったにも関わらず、周りの同業他社のブースよりも圧倒的に集客ができ、常に商談待ちの企業担当者様がいるほどとなり、同業他社からもどういう工夫をしているのか聞かれました。
- この時のポイントとして:
- 良い位置にブースが取れなかった為、近くを通る来場者に対しブースを目立たせるポスター印刷
- 来場者の導線(ブースの左右から歩いてくる)を考慮し、壁の横のポスターにメインメッセージを大きく印刷(正面を通る前から視界に入る)
- 横の壁のポスターは極力文字は最小限でビジュアルで訴求(目にとめる)
- 前で立ち止まる来場者に対し、すぐパンフレット配布と商談への誘導(通り過ぎる前にアクション)
- 背面のポスターは事例写真ポスターと文字が多いポスターを入れ、立ち止まって読ませる工夫(滞留時間を長びかせる)
※この様なシンプルな工夫を行うだけでも集客の差に大きな違いが出ます。

- 海外バイヤー向けツールの準備
- 英語/現地語カタログ・価格表・会社概要の準備は最低限必要ですが、日本での商談時の会社紹介のように長い説明は不要です。特に製品や価格をメインに資料を作る事が有効になります。
- 名刺(英語表記)は最低限必要ですが、可能であればWebサイトの英語ページはあると尚良く、展示会までに対応が難しい場合は英語のパンフレットでも問題ございません。
- 事前プロモーションとアポイント獲得
- 主催者サイト・出展社リスト・来場者データを活用した事前連絡として、展示会によっては多くの場合は有料プランとなりますが、来場者に対して事前に情報提供やブースの商談予約が出来るサービスを提供している為、活用を検討出来ます。
- オンライン展示会・SNS・業界メディアでの告知も自社の海外向けSNSや媒体等がある場合はそこを導線にターゲティング広告を打ったり、主催者側のSNS媒体での事前広告等も集客施策に有効となり得ます。
5,展示会準備ステップ③ 当日の接客・商談オペレーション
- ブースでの役割分担と基本動線
- 自社の展示会へ参加するメンバーの役割分担を事前に取り決めましょう。(呼び込み担当/初期ヒアリング担当/商談担当の役割定義等)
- ピーク時間帯に合わせた人員配置も重要になります。ブースが混んでくると待っている人も出てくる場合がありますが、何も対応せずにいるとそのまま去ってしまいます。一瞬だけでも声がけをして、待ってもらうか時間をずらしてきてもらうような声掛けが重要です。
- 海外バイヤーとの商談の進め方
- 短時間でヒアリングすべき項目(国・販路・規模・ニーズ・決裁者・希望条件)を事前に取り決め、すぐに来場者の目的や自社のターゲット層になりうるかを見極められるようにしましょう。
- 価格・条件の伝え方のポイントとして、避けるべきは価格は決まっていない。というフレーズです。商談時に価格が分からないとバイヤーは興味を失ってしまい、その後の進展が期待できなくなります。大枠でも価格は決めておきましょう。
- 通訳利用時の注意点(事前打ち合わせ、重要キーワード共有)として、通訳者はただ言語を変換しているだけではないので、事前に商談のコミュニケーション内容やサービス内容を共有し、どの様な話になったらどう伝えるか等を事前に打ち合わせておきましょう。
- 海外バイヤーとの商談の進め方
- 展示会では1つのブースに20分、30分と滞在する事は無い為、1〜2分で自社と製品を説明できるピッチを準備しましょう。
- 相手の販路・課題・求める条件を優先してヒアリングする事で、条件に合うか、可能性はあるのかが早期に見極められます。
- 商談の最後に「次のステップ(見積提示・サンプル送付・オンライン商談)」を必ず合意しましょう。
6,展示会後のフォローで海外販路開拓の成果を「定着」させる
- スピード重視の初回フォロー
- 終了後3営業日以内に全リードへお礼+資料送付を行い、熱が冷める前にアクションを取る。
- 商談ランクA・Bは個別文面、Cはテンプレートで対応する等のアレンジが可能な範囲で対応する。
- オンライン商談候補日を複数提示し、アクションを明確化し、リードナーチャリングを実施。
- 中長期フォローと関係構築
- ニュースレターや案件情報などの定期配信をし、今すぐの顧客にならずとも長期的に顧客になりうる可能性を見据えて情報発信を行い、接点を保つ。
- 展示会限定条件(価格・MOQなど)の期限管理し、期間限定価格や展示会接点企業だけの特別サービス等は忘れがちなので、管理を行う。
- 現地パートナー候補とは、商流・役割分担を丁寧に詰め、互いのメリットに繋がる交渉や妥協点を持っておく。
- 展示会の効果測定と次回への改善
- KPI(名刺数・商談数・見積数・受注見込額・実受注額)の集計を行い、うまくいった点/うまくいかなかった点をチームで振り返り、次回展示会に向けた改善アクションリストの作成を行う。
7,海外販路開拓で展示会を活用する際に、支援会社をうまく使うポイント
- 支援会社に依頼すべき主な領域リスト
- 市場調査・展示会選定・出展戦略立案
- ブースデザイン・施工・装飾、現地物流手配
- 通訳・商談同席・現地バイヤーのアレンジ
- 集客施策の立案と実施
- 展示会後フォロー(メール文面作成、オンライン商談同席 など)
- 支援会社を比較・選定するチェックポイント
- 海外展示会支援の実績(国・業界・出展社規模)
- 現地ネットワーク(バイヤー・パートナー・通訳 など)の有無
- 伴走支援か、スポット対応か(関与の深さ)
- 費用体系と成果イメージの妥当性
- 集客施策が対応可能か実績があるか
- 自社と支援会社の役割分担の考え方
- 自社が担うべき「製品・戦略」の意思決定
- 支援会社に任せるべき「現地実務・調整・手配」
- 定例ミーティングやチャットでの情報共有方法
※一番避けるべき海外の展示会出展の例として、予算を削る事を目的化してしまい、効果が見込めないブース出展をしてしまう事が最も費用対効果が悪く、成果に繋がりません。
例として、海外の展示会出展での費用比較を下記に比較します。
【最も費用をかけないパターン:総額55万円~】
1,ブース出展1コマ:30万~120万円(国や展示会により変動)
2,自社担当者の移動費・宿泊費1名:20万~40万円(国や期間により変動)
3,印刷物等最低限:5万~10万
効果を優先し支援企業に依頼するパターン:総額95万円~】
1,ブース出展1コマ:30万~120万円(国や展示会により変動)+15~20%手数料
2,自社担当者の移動費・宿泊費1名:20万~40万円(国や期間により変動)
3,印刷物等:10万~30万
4,支援企業の移動費・宿泊費1名:20万~40万円(国や期間により変動)
5,集客施策:15~50万円(国や展示会により変動)
上記はあくまで一例となりますが、数十万円を削って効果が見込めない展示会となる可能性があるのであれば、差額を出してでも専門家の支援企業に依頼する方が費用対効果が高い為、海外販路開拓やプロモーションでの展示会出展は専門家に依頼する企業が多くなります。
8,まとめ:海外販路開拓で展示会の効果を最大化するために
- 成否の8割は「展示会前の準備」で決まる
- 目的・ターゲット・KPIを数字で明確化する
- ブース設計・ツール・事前アポイントで“会う相手”をデザインする
- 当日は役割分担と商談フローを決めて、質の高い商談数を最大化する
- 展示会後はスピード感あるフォローと中長期の関係構築で受注につなげる
- 必要に応じて支援会社を活用し、自社は本来の強み(製品・戦略)に集中する
当社では各国でのBtoB/BtoCの展示会や商談会の出展実績や成果を出すための重要な要素である集客施策を基に貴社のニーズにマッチした国での展示会出展の包括的なサポートを請け負っております。
まずはお問い合わせを頂き、無料のお打合せ相談にて最適な展示会出展をご提案させていただきます。



