スタートアップ・ベンチャーが海外進出のコンサル費用を抑えるには?コスト削減の3つの基本戦略

近年、円安の進行や深刻な人材不足、国内マーケットの縮小により、スタートアップやベンチャー企業を含む日本企業の多くが、成長戦略として海外進出を検討するようになっています。

しかし、海外進出には相応のコストがかかり、特にコンサルティング費用は大きな負担となることがあります。

本記事では、海外進出を検討する企業が、コンサル費用を効率的に抑えながら、確実に成果を出すための具体的な方法をご紹介します。

アジアを中心に世界各国での法人立ち上げやCEOとしての経営経験を有する筆者の知見を元にお伝えします。

海外進出のコンサル費用の相場感

まず、海外進出のコンサルティングの費用感をご説明します。

一般的な費用感

海外進出のコンサルティング費用は、支援内容や進出国によって大きく異なりますが、一般的な相場としては以下のような範囲となっています。

コンサルティング・支援範囲支援内容イメージ費用・相場感(目安)
基本的な市場調査現地市場規模調査、競合分析、消費者動向調査などを含む市場調査50万円〜200万円
進出戦略策定市場参入戦略、販売チャネル戦略、リスク分析など100万円〜500万円
現地法人設立支援登記申請、各種許認可取得、銀行口座開設などの実務支援を含む現地での法人設立業務50万~300万円
包括的支援(調査〜設立まで)上記すべてに加え、人材採用や業務フロー構築などを含む場合も有り500万円〜2000万円 

先ほどお伝えしたように、支援内容や進出国によって、海外進出のコンサルティング費用は大きく異なります。

進出国については、東南アジアやアフリカなどの新興市場と、欧米諸国などの先進国では市場の複雑さや調査の難易度が異なり、費用も大きく変わります。国自体の物理的距離や基本インフラ事情が厳しい一部アフリカ諸国を覗く東南アジア諸国等は、現地の物価も相まって新興市場の方がコストは抑えやすいです。

また、金融業や医療関連など、規制の多い業界や特殊な許認可が必要な分野では、現地法人設立や戦略策定に高額な費用がかかることが一般的です。

企業規模・進出形態による違い

海外進出にかかる費用は、企業の規模や進出形態によっても大きく変わってきます。

  • 駐在員事務所の設立:比較的低コスト(50〜100万円程度から)
  • 現地法人の設立:中〜高コスト(80~300万円程度※難易度が高い業種が上がる傾向)
  • M&A・合弁会社の設立:高コスト(1000万円以上)

ただし、進出形態の選択は単純なコスト比較だけで判断すべきではありません。
例えば、駐在員事務所は初期コストが低い反面、海外送金ができないなど、国によって様々な規制があります。必ず自社の目的や将来像と照らし合わせて、最適な進出形態を選択することが重要です。

ちなみに、上記にてM&A・合弁会社の設立を一番高コストとしましたが、対象企業の規模感や文化、M&A後の統合効果を最大化するためのPMIの難易度などにより費用が大きく変わってくるため、一概には言えません。

海外進出のコンサルティング費用を抑えるための3つの戦略

海外進出は、特に成長過程にあるスタートアップ企業やベンチャー企業にとって、売上規模や資金力との兼ね合いから大きなチャレンジとなります。そのため、海外進出に伴うコンサルティング費用をいかに効率的に抑えるかは、多くの企業にとって重要な検討ポイントとなっています。

以下では、コンサル費用を賢く削減するためのポイントをご紹介します。

社内でできることは内製化する

外部コンサルタントに依存しすぎると費用が膨らむため、以下のような業務は内製化を検討するのも一つの選択です。

  • 基礎的な市場調査
  • 競合分析
  • 初期的な現地パートナー候補のリストアップ
  • 社内での進出計画の策定

筆者の経験上、「論理的思考を持ってアプローチすれば、知見の有無に関わらず得られるアウトプットに極端な差が見られない」業務を内製化するのがポイントだと考えています。

逆に、外部の知見を取り入れるべき箇所で無理に内製化しても、得られるものが少なく、むしろ時間の無駄になるため注意が必要です。

また、内製化を検討する際は、社内メンバーの人件費も考慮に入れることが重要です。
ジョブディスクリプションなど留意すべき点はありますが、優秀なインターン生や新入社員の力を借りることで、コスト削減だけでなく、人材育成にもつながる可能性があります。

また、効率的に内製化を進めるためのポイントとして以下も有効でしょう。

  • オンライン調査ツールの活用による作業の効率化
  • 経営陣を中心とした現地在住の知人やネットワークの活用による生きた情報収集
  • 業界団体や商工会議所の情報の積極的な活用

複数の支援機関を使い分ける

異なる支援機関の特徴を理解し、効果的に組み合わせることで、コストを最適化できます。ここでは、主な支援機関の特徴と活用方法についてご説明します。

公的機関の活用

海外進出に関する公的機関は、JETRO(ジェトロ)でお馴染みの独立行政法人日本貿易振興機構などが挙げられます。

コンサルティングファームや総合商社、その他の支援会社などの営利企業とは異なり、公的機関の海外進出支援は非営利性や中立性が強いことが特徴です。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://social-zero.com/overseas-business/bangladesh-support-company/

無料もしくは低価格で基本的な情報提供や相談対応を行っていることがほとんどなので、初期フェーズの場合はまずは、公的機関への相談や主催セミナー・勉強会への参加をお勧めします。

専門コンサルタント・支援企業の活用

専門コンサルタントや支援企業は、企業の海外市場進出をサポートする専門家や専門チームを指します。大手のコンサルティングファームや会計ファームといった大規模な組織から、個人の知識や経験を活かして支援を行う個人事業主まで、さまざまな規模や支援スタイルが存在します。

専門コンサルタント・支援企業は独立行政法人などと比べると費用は高めになりますが、専門性の高い分野での支援が必要な場合に大変力強い存在です。

以下のような専門知識・知見が必要な際にぜひ活用してください。

  • 特定の専門分野のアドバイス
  • 法務・税務関連の支援
  • 重要な意思決定時の助言

特に法務や税務など、ミスが致命的となる可能性がある領域では、信頼できる専門家の支援を受けることを強くお勧めします。

現地パートナーの活用

現地パートナーとは、その名の通り現地にいる支援パートナーのことです。現地パートナーは、実務面での支援だけでなく、現地のビジネス慣習や文化的な側面でも重要な役割を果たします。

特に、現地企業とのネットワーク構築や、スムーズなビジネス展開には欠かせない存在となります。

  • 実務的なサポート
  • 現地でのネットワーク構築
  • 文化的な理解や橋渡し

上記のような内容はぜひ現地パートナーに頼って進めると良いでしょう。
また自社とのコミュニケーションをより円滑に行いたい場合や、初めての海外進出で日本人同士のビジネスの方が安心という場合は、現地在住の日本人パートナーに頼るのもおすすめです。

段階的なアプローチで投資を分散

これらの支援機関を効果的に組み合わせるためのポイントは、各段階で必要となる支援内容を明確にし、最適な機関を選択することです。
例えば以下のようなイメージです。

Phase 1:市場調査・戦略策定

  • 社内リソースでの基礎調査
  • 安価な支援が可能な外部専門家や、公的機関への相談

Phase 2:詳細計画・準備

  • 外部専門家と社内担当者が連携し、具体的な進出計画の策定

Phase 3:実行段階

  • 現地パートナーと外部専門家とタッグを組み法人設立や事業開始

予算を「投資」として考えるマインドセット

予算を「投資」として考えるマインドセットは、スタートアップやベンチャー企業が海外進出を成功させる上で特に重要なポイントです。

コスト削減に注力しすぎると、中途半端な施策となり、結果として海外進出が失敗するリスクが高まる可能性があります。この点は、成長途上の企業こそ意識していただきたい部分です。
理論では理解していても、いざ海外進出を具体的に進めようとすると、「安いと思って進出国を選んだのに、日本と同じくらい初期投資が必要になるから予算を削りたい」「人件費はすでに日本の半分程度になっているが、さらに人件費を削減したい」など、コストを抑えることだけに躍起になる経営者も多いのが現実です。
筆者も数々の企業の支援を通じて、そのようなケースを幾度となく目にしてきました。

しかし、目的達成のためには、すべてを低価格にこだわるのではなく、どこに投資すべきかを見極めることが極めて重要です。
特にリスクが高い分野や、ノウハウの習得に時間がかかる分野については、信頼できる専門家に適切な予算を投じることで、結果として長期的にコスト削減につながることが多いのです。
予算は単に削減するものではなく、無駄な投資を抑えながらも、必要な投資をしっかりと行うという考え方が求められます。このマインドセットを持ち、慎重かつ大胆に海外進出に取り組んでいただきたいと思います。

まとめ

海外進出は費用面でも大きな挑戦ですが、適切な戦略を取ることで、コストを抑えながら成功を収めることが可能です。
また、無駄な出費を抑える一方で、必要な部分には適切な投資を行うことが、効率的かつ効果的な進出の実現に繋がります。
慎重な計画と柔軟な対応を重ねながら、貴社の海外進出が成功することを心よりお祈り申し上げます。

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