近年、円安や人材不足、国内市場の縮小などを背景に、多くの日本企業が海外進出を成長戦略として検討しています。特に、ベトナムをはじめとするアジア市場は、引き続き進出先として高い人気を誇ります。
この記事では、ベトナム進出支援サービスを提供するSocialZero株式会社が、ベトナムでの法人設立においてよくいただくご質問をまとめています。アジア各国での法人設立やCEOとしての経営経験を基に、実践的なアドバイスを提供します。
Contents
日本企業の進出先としてベトナムが根強い人気を誇る理由は?
様々な理由がありますが、これまで多くの企業様と話してきた経験上、販路拡大を目的としたベトナムマーケットへの進出の場合は、人口増加や急速な経済成長を一番の理由に上げられる企業が多いです。ちなみに2024年時点でベトナムの人口は約1億人を超え、ASEAN地域でも3番目に人口の多い国となっています。
工場などの生産拠点としての進出の場合は、物価が安く人件費や原材料などのコストが抑えられるという理由が多い傾向にあります。
オフショア開発拠点など、現地従業員のスキルがサービスの品質や企業競争力に直結する企業形態の場合は、コストの安さに加えて、ベトナムの平均年齢が28歳と若く、勤勉で真面目に業務に取り組む人々が多い点、つまり、優秀な若手人材が豊富であることも、ベトナムが進出国として選ばれる理由です。
その他、外資企業を含め企業を後押しする政策が豊富という点も挙げられます。
ベトナムは外資企業の誘致に積極的で、政府の投資活動の誘致により、外国直接投資(FDI)の流入が増加しています。
ではここから、ベトナムの会社設立に関してよく聞かれる質問にお答えしていきます。
ベトナムでの会社設立にかかる期間の目安は?
業種により条件は変わりますが、一般的にはベトナムでの会社設立には約3ヶ月が目安とされています。
特に近年進出が増えているITは外資規制も無く、登記は比較的早い業種となりますが、外資規制がある事業での進出は、さらに時間がかかる為、登記のスケジュールは余裕をもったスケジュールを設けると、より安心です。
ベトナムに限った話ではありませんが、海外で法人設立をする際、日本では通常問題にならないような事がボトルネックとなり、手続きが停滞することがあります。特に行政手続きには時間がかかるため、柔軟な計画を立てることが重要です。
現地に詳しい法律顧問や進出コンサルタントを活用すれば、手続きの円滑化やトラブル回避が可能になります。
ベトナムでの会社設立にかかるコスト・費用の目安は?
設立コストの参考値をお伝えします。※日本円は150円計算
- 登録費用:500〜1,000USD(約7.5万〜15万円)
- 法律顧問料:2,000〜5,000USD(約30万〜75万円)
- オフィス初期費用:1,000〜3,000USD(約15万〜45万円)
合計:5,000〜10,000USD(約75万〜150万円)
上記が最低限のコストのイメージですが、自社単独ではなく海外進出コンサルタントや進出支援企業を利用する場合、そのサポート費用も別途発生します。
パッケージで提供している企業の場合は、設立手続き代行だけでなく、事業計画作成や現地調査までが含まれていることも多いです。
費用はサービス内容によって異なりますが、数十万円から100万円以上かかる場合もあります。サービスの提供価格は、基本的には小規模事業者の方が安価な傾向にあります。
ベトナムで現地法人を設立する場合の形式はどうなりますか?
ベトナムで現地法人を設立する場合、日本企業の多くは有限責任会社(Limited Liability Company、LLC)を選択します。
現地法人の設立形態としては、有限責任会社と株式会社(Joint Stock Company)の2つが主に考えられますが、株式会社の設立には、出資者が最低3名以上必要です。
一方、有限責任会社は設立に必要な出資者の数が少なく、組織設計も簡易であるため、手続きがスムーズに進むというメリットがあります。
また、ベトナムでは株式会社にする利点があまりない場合が多いため、有限責任会社が選ばれることが一般的です。
ベトナムビジネスを始めるには現地拠点をつくった方がよいですか?
ベトナムに進出する方法は、必ずしも現地拠点の設立に限らず、さまざまな選択肢があります。たとえば、既存の現地企業への出資による間接投資や、現地企業との事業協力契約を通じた共同事業運営などがあります。また、近年注目されているのが、越境ECを活用したデジタル進出です。これにより、物理的な拠点を設けることなく、効率的にベトナム市場にアプローチすることも可能です。
それぞれの方法には独自のメリットとリスクがあり、進出の目的、事業規模、リソースによって最適な戦略が異なります。
弊社では、貴社の成功確率を高めるために、次のようなアプローチを推奨しています。
- 直接販売が必要な業種(例:EC販売が向かない小売、飲食店)
イベントや展示会などでテストマーケティング、販売を行い、需要や顧客の反応を確認してから、現地拠点の設立を検討することをおすすめします。 - オンライン販売や輸出が可能な業種
越境ECやオンライン取引を活用してまずは市場に参入し、その後のビジネスの進展を見ながら、拠点設立を検討することが効果的です。 - 現地拠点が前提となる事業(例:システムのオフショア開発拠点)
この場合、すでに現地で事業が回っている企業のM&Aを活用することで、自社での立ち上げの失敗リスクを抑える方法もあります。
特に、拠点設立は事業の規模や進展に応じて適切なタイミングで行うべきであり、無理に設立を進めることはリスクを伴います。そのため、弊社では失敗してもリスクの少ない施策を段階的に実施したうえで、必要に応じて現地法人の設立をサポートしています。
外資系企業としての制限や特別なルールはありますか?
ベトナムでの外資系企業に対する規制は業種により異なります。
小売業では外資比率が51%まで、物流業では49%までといった制限が設けられています。
一方、製造業やIT産業などでは100%外資での展開が可能です。
資本金については、業種や地域により権利が異なり、製造業の場合は一般的に10億ドン(150円計算の場合、約660万円)が必要とされます。しかし、ITなどの特定の注目産業や経済特区への普及では、任意の面での意思決定を受けられる可能性があります。
ただし、近年では最低資本金額での登記は認められないケースも出てきている為、貴社が行う事業内容に沿う金額の資本金を設定する事を推奨します。
法人設立時の重要な法律・規制について教えてください
法人設立時には、主に投資法と企業法が大きく関係します。
税務面では、法人税(標準加算20%)、付加価値税(VAT)、個人所得税などが課されます。
また、労働許可証(ワークパーミット)は、原則として外国人就労者全員に必要であり、取得には2〜3ヶ月程度かかります。
ベトナムの投資法は、外国企業が法人を設立するための出資についても規制している法律です。ベトナムでは、海外企業の法人設立における出資はすべて外資と見なされ、投資法の適用対象となります。
ちなみに、ベトナムには三権分立がないなど、日本の法律や司法制度とは異なる点がいくつかあるため注意が必要です。
そのため、法人設立手続きを進める際は、必ず現地の法律に詳しい専門家のサポートを受けることが重要です。
ベトナムの法人設立後の運営のポイントは?
ベトナムの法人設立後の運営において重要なポイントの一つは、現地従業員の採用・教育や福利厚生などの従業員管理です。
現地従業員の採用については、ベトナムの人材市場や求人市場の特性を理解した上で、採用活動を進める必要があります。
また、現地で事業を開始する際には、現地の労働基準法を遵守することにはもちろん、ベトナム人従業員にとって魅力的な福利厚生や教育制度、人事評価制度の構築が重要です。これらは、優れた人材の採用と定着において非常に大きな影響を与える要素となります。
日本企業が進出した際のよくある失敗例として、自社のルールをそのまま適用して運用してしまうケースがあります。
日本のビジネス習慣は、世界的に見ても特有であるため、そのまま持ち込んで運用することは強くおすすめしません。
ベトナムのビジネス習慣を理解している人のサポートをうまく活用し、現地拠点が円滑に機能するように進めてください。
費用削減したい。ベトナム法人設立のコストを少しでも抑える方法は?
現地拠点の設立が確定している場合、コスト面で重要なのは事務所や工場、オフィスなどの立地選定です。ハノイやホーチミンの中心部に進出する場合、その中でもコストパフォーマンスが高いエリアやビルがありますので、複数の候補から慎重に検討することが大切です。
中心部を避けて郊外のエリアを選択するという方法もありますが、現地従業員が通勤に時間がかかる場合、遅刻が増えるリスクがあります。ベトナムは日本ほどは交通が発達していないため、遅刻が頻繁に発生する可能性があります。
また、立地条件が悪い場合、こちらが求めるレベルの従業員の応募が集まらないことも考えられます。
従業員にとって通勤が不便な場所は避けられる傾向にあるため、立地選定が悪いと、応募者の質が低下し、結果的に優れた人材を確保しにくくなる恐れがあります。そうなると、結果として必要以上に人件費を上げて募集することになり、効率的でなくなります。
その他、法人設立を進める際には自社の工数を有効活用し、必要な部分だけを海外進出支援企業に依頼する方法もあります。
ただし、先述の通り、法規制などに関しては慎重に対処しなければならない点が多いため、信頼できるパートナー企業を見つけ、「どこを自社で巻き取ることで、安心かつコスト削減ができるのか?」を明確にすることが有効です。
また、パッケージサービスではなく、カスタマイズ可能な支援内容を調整して提供してくれる企業を選ぶのも一つの方法でしょう。
まとめ:大胆さと慎重さを両立させることが、ベトナム進出の成功確率を高める
ベトナムでの法人設立は、自社の成長や事業存続に向けた重要な一歩です。スピードや大胆な意思決定も時には必要ですが、実際の会社設立を進める際には、現地特有の法制度や商習慣の違いを十分に理解し、注意深く進めることが成功への鍵となります。
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当社では、中小企業の小売業の皆様の海外進出を総合的にサポートする「海外進出支援サービス」を提供しています。10年以上にわたる海外進出支援の実績を持ち、17カ国以上での支援経験があるコンサルタントが在籍しています。
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