海外進出前のフィージビリティスタディとは?市場調査で失敗しないための基本と進め方

海外進出や新市場参入を検討する際、

  • 「まずは市場調査レポートを買う」
  • 「社内で軽くデスクリサーチをして、あとは出てから考える」

という進め方をしてしまう日本企業は少なくありません。

しかし、一定規模の投資(出店・工場・ブランド投入など)を行う場合、

きちんと設計されたフィージビリティスタディ(Feasibility Study:FS)を挟むかどうか

が、成否と後戻りコストを大きく左右します。

当社 Social Zero でも、ベトナム・フィリピン・韓国など複数国で、

  • 大手小売企業の海外進出前FS(ベトナム・韓国)
  • ITオフショア拠点構築前のFS(フィリピン 等)

を支援してきましたが、

  • 「数字だけ」の市場調査では足りないこと
  • 「スコープが曖昧なFS」は結局意思決定に使えないこと

を痛感しています。

※JETRO「日本貿易振興機構」の海外進出STEPのコラムでも

具体的な候補地を決めたら、現地に行って、生の情報を得ることが重要です。

と記されています。

本記事では、

  • 海外進出前のフィージビリティスタディとは何か
  • 海外FSでよくある3つの失敗パターン
  • 成功する海外FSの5つの柱(何を調べるべきか)
  • ベトナム・フィリピン・韓国で押さえるべき視点の違い
  • 実務的な進め方ステップと、Social Zeroが提供できる支援

を整理します。


Contents

フィージビリティスタディ(FS)とは何か【目的とアウトプット】

フィージビリティスタディの目的

海外進出前のフィージビリティスタディ(FS)の目的は一言で言うと、

「この国・このモデルで本当にやるべきか/やるならどういう形が現実的か」を判断する材料を揃えること

です。

単なる市場調査レポートではなく、

  • 戦略(どの国・どのタイミングか)
  • 事業モデル(何をどこでどう売るか)
  • コスト・投資回収
  • リスクとその対策

まで含めて、「経営としてGo/No-Goを判断できる状態」に持っていくのがFSの役割です。

フィージビリティスタディの典型的なアウトプット

  • ターゲット市場の規模・成長性・構造
  • 競合マップ・チャネル構造(小売・EC・B2Bルート等)
  • 顧客・バイヤー・パートナー候補のインサイト(定性調査結果)
  • 規制・税制・ライセンス・オペレーションの前提条件
  • 事業モデル案(チャネル・価格・商品ポートフォリオ 等)
  • 3〜5年の売上・コスト・損益シミュレーション(ベースライン)
  • 想定されるリスクと対策の方向性
  • 「Go/条件付きGo/見送り」の提言

当然ながら、これらのアウトプットに繋げる為には、海外市場調査を精緻に行う事が重要です。

※関連記事:“海外進出プロジェクトを成功させる「上流〜下流」設計ガイド”については、

こちらの記事で解説しています。


海外フィージビリティスタディでよくある3つの失敗パターン

失敗1:数字だけ・机上だけで終わるFS

  • マクロ統計・既存レポートの要約が中心
  • 実際の顧客・バイヤー・パートナー候補へのヒアリングがない
  • 規制・ライセンスも法令文レベルのインプットに留まる

この場合、

  • 「おおよその市場規模」は分かるが、「どのチャネルで・どの価格帯で売れるか」が見えない
  • 実際の参入条件(外資規制・リスク・エリア情報・棚取り・マージン・プロモーション等)が分からない
  • オープンデータのみで集めた情報で、最新の現地の生きた情報ではない

ため、経営の意思決定材料としては弱いFSになりがちです。

失敗2:スコープが曖昧で、「何でも少しずつ」調べてしまう

  • とりあえず幅広く情報を集めるが、深さが足りない
  • 優先順位が不明確で、レポートが分厚いだけになってしまう
  • 「結局、何が言いたいのか」が分からない

FSは、「何でも調べる」ではなく、「意思決定に必要なことだけを深く調べる」べきプロセスです。

失敗3:FS結果が事業計画・実行フェーズに繋がらない

  • FSで出た示唆が、実際の事業計画に落ちていない
  • FSフェーズと実行フェーズが分断され、知見が活かされていない
  • FSをやった“こと自体”が目的化してしまう

FSは、

  • 実行フェーズでの「初期設計(チャネル・パートナー・組織・実施方法)」に直結させてこそ価値が出ます。

※関連記事:“失敗事例から学ぶフィリピン進出”については、

こちらの記事で解説しています。


成功する海外フィージビリティスタディの5つの柱

柱1:市場規模・成長性(定量調査)

  • マクロ統計・業界レポート
  • ターゲットセグメントごとの市場規模・成長率
  • 価格帯・地域・チャネル別の構造

ここは一般的な「海外市場調査」に近いパートですが、
ターゲットセグメントレベルまでブレイクダウンすることが重要です。

柱2:競合・チャネル構造

  • 競合企業のポジショニング・シェア(可能な範囲で)
  • 小売・EC・卸・B2Bルートなど、チャネル構造の整理
  • 競合の強み・弱み・参入障壁
  • 現地の産業構造

これにより、

  • どのチャネルから入るべきか
  • どのポジションなら戦えるか

の仮説が描けます。

柱3:顧客・バイヤー・パートナー候補の定性インサイト

  • 小売バイヤー・ディストリビューター・ECプラットフォーム担当者
  • 最終顧客(消費者・法人ユーザー)
  • 専門家(業界団体・コンサル 等)

への定性調査(インタビュー・現場観察)で、

  • 採用される商品の条件
  • 日本ブランドへの評価・期待
  • 価格・マージン・プロモーションの現場感

など、数字では見えない“行動の理由”を掴みます。

※関連記事:「海外市場調査で『数字だけ』を見てはいけない理由」

柱4:規制・税制・ライセンス・オペレーション条件

  • 外資規制・ライセンス要件(小売ライセンス・ENT・外資ネガティブリスト等)
  • 税制(法人税・VAT・特別消費税・FCTなど)
  • 労務・人材・人件費の前提(現地の最新の人件費や労務条件・人件費上昇率等)
  • 物流・コールドチェーン・店舗インフラなどのオペレーション条件

法令条文だけでなく、

  • 実務運用・行政のスタンス(法令が施行されていても、実運用がされていない等)
  • 日本企業が過去にトラブルになったパターン(例:オーナーとのトラブルで退去を余儀なくされた等)

もヒアリングや事例を通じて押さえる必要があります。

柱5:コスト構造・人材・収支シミュレーション

  • 立ち上げコスト(法人設立・弁護士費用・内装・採用等)
  • ランニングコスト(人件費・賃料・専門家費用・マーケ費等)
  • 3〜5年の売上・粗利・固定費を踏まえた損益・キャッシュフロー試算

これにより、

  • 投下資本の回収イメージ
  • 縮小・撤退ラインの設計

まで、数字ベースで議論できる状態を作ります。

※関連記事:“海外拠点のコスト構造と損益シミュレーション”については、

こちらの記事で解説しています。


ベトナム・フィリピン・韓国で押さえるべきFS視点の違い(概要)

ベトナム向けFSの特徴

  • 製造・IT開発拠点としての検討が多い
  • 小売・店舗展開ではモール・路面・FCなど出店形態の選定が重要
  • 外資小売ライセンス・ENT・資本金など、規制・ライセンスの確認が必須

関連記事:

  • ベトナム小売法人設立ガイド
  • ベトナム進出の3つの壁と再設計
  • ベトナム店舗出店のポイント

フィリピン向けFSの特徴

  • BPO・CS・ITオフショア開発拠点としての検討が多い
  • 英語人材・コールセンター・24時間稼働インフラの適性評価が重要
  • 小売でもモール+コンビニ+ドラッグなどチャネル構造が独特
  • 7,600島を超える群島国家で構成され、大手ディストリビューターが市場を握る

関連記事:

  • フィリピン進出ガイド
  • フィリピン人件費・人材採用
  • フィリピン小売・流通チャネル

韓国向けFSの特徴

  • 日本ブランド(コスメ・食品・キャラクター等)のポジション評価が重要
  • 小売・ドラッグ・オンラインのチャネル構造が高度に発達
  • フェアトレード規制・販促ルール・特有の不動産ルールなどの理解が必要

事例:


海外フィージビリティスタディの進め方ステップ

ステップ1:スコープ設計(何をどこまで調べるか)

  • 対象国・エリア
  • 対象カテゴリ・製品・サービス
  • 検証したい仮説(ターゲット・価格帯・チャネル・スキーム・法人形態)
  • 予算・期間・必要なアウトプット(経営会議資料レベルか、現場実行レベルか)

ここが曖昧なまま始めると、「調べたけど意思決定に使えないFS」になりがちです。

ステップ2:二次情報収集(定量ベースの土台づくり)

  • 公的統計・業界レポート・既存調査の整理
  • ターゲットセグメントごとの市場規模・成長性をざっくり把握

ステップ3:定性調査設計・実施

  • 対象セグメント(バイヤー・顧客・競合・専門家)の選定
  • インタビューガイドの作成
  • 現地パートナーを通じたリクルーティング・インタビュー実施
  • 店頭視察等の観察調査を組み合わせる
  • 対象エリアの交通量や人流、不動産等の現地定性調査
  • 法令の実務上の施行や運用状況とリスク

ステップ4:分析・シナリオ作成

  • 「想定通り」「想定と違った」点の整理
  • 事業モデル・チャネル・価格戦略へのインプリケーション
  • 3〜5年のPL・CFシミュレーションのドラフト作成

ステップ5:経営向けレポートと次アクション提案

  • Go/条件付きGo/見送りの選択肢整理
  • 優先国・優先チャネルの提案
  • 具体的な進出形態と事業内容
  • PL・CFシミュレーション
  • 次フェーズ(パートナー探索、テスト販売、法人設立等)のロードマップ

Social Zeroの海外フィージビリティスタディ支援メニュー(例)

当社が提供している海外FS支援は、国・業種によってカスタマイズしますが、例えば以下のようなスコープイメージです。

スコープ例(大手小売向け:ベトナム+韓国)

  • 対象国:ベトナム・韓国・シンガポール
  • 対象カテゴリ:PB(日用品・食品・コスメ等)
  • 調査内容:
    • 市場規模・カテゴリ別構造(定量)
    • 小売・ドラッグ・ECチャネル構造
    • 競合ブランドマップ
    • 小売バイヤー・ディストリビューター・EC事業者向けインタビュー
    • 消費者調査(定性・必要に応じて定量)
    • 規制・ライセンス・税制・オペレーション条件
    • 各項目におけるリスク洗い出し
    • 3〜5年シミュレーションと参入シナリオ案

スケジュール・アウトプットイメージ

  • 期間:2〜4カ月程度(スコープによる)
  • アウトプット:
    • 調査レポート(PDF+PPT)
    • 経営会議用スライドデッキ
    • 次フェーズアクションプラン提案

市場調査前の段階であれば、海外市場での定性調査の設計から入り、その後のFSに繋げたご提案をおこないます。

調査がそもそも出来てない場合ではFSが精緻に行えない為、①市場調査→②FSというセットの流れとなります。


まとめ:海外FSは「レポート作業」ではなく「意思決定プロセス」

  • 海外進出前のフィージビリティスタディは、
    「調査レポートを作る作業」ではなく、「経営としてGO/NO-GOを決めるためのプロセス」です。
  • 数字だけの市場調査や、スコープが曖昧なFSでは、
    後戻りコストを減らすという本来の目的を果たせません。
  • 市場・競合・顧客・規制・コスト・人材という5つの柱をバランスよく押さえ、
    ベトナム・フィリピン・韓国など各国の特徴に応じたFSを行うことで、
    「行くならこの形」「行かないならなぜか」を納得感を持って判断できるようになります。
  • 海外進出には一定規模の投資が必要となる為、失敗の確立を下げる為にも、
    海外進出前のフィージビリティスタディは重要なプロセスとなります。

海外進出前のフィージビリティスタディ・市場調査(ベトナム・フィリピン・韓国など)に関するご相談はこちら

御社の検討段階・予算規模・欲しいアウトプットを伺ったうえで、
最適なFSスコープと進め方をご提案いたします。

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