―― SIer・受託開発企業がベトナム/フィリピンでオフショア開発で失敗しないために
Contents
- このページでわかること
- 1. SIer・受託開発がベトナム/フィリピンで陥りやすい品質トラブル
- 2. そもそも、なぜオフショア開発の品質トラブルが発生するのか?
- 3. 立ち上げフェーズで決めるべき「品質設計」の4つの軸
- 4. 日々の開発で品質を落とさない「運用フレーム」
- 5. コミュニケーション分析とルールの明確化
- 6. 末端エンジニアが品質向上のモチベーションを保てる環境が提供できているのか?
- 7. ツールとAIを使った現実的な品質向上
- 8-1. これから立ち上げる企業向け「品質設計チェックリスト」(たたき台)
- 8-2. 既にオフショア中の企業向け「品質改善チェックリスト」(たたき台)
- FAQ(よくある質問)
- 9. Social Zeroが支援できること(品質 × オフショア)
このページでわかること
- SIer/受託開発企業がベトナム・フィリピンでオフショア開発を行う際に起こりがちな品質トラブル
- そもそも品質トラブルが起こる原因
- 立ち上げ時に決めておくべき「品質設計」のポイント
- コミュニケーション分析とルールの明確化
- 品質向上のモチベーション設計
- すでに走っているオフショア開発の品質を立て直すための運用フレーム
- AIツールを前提とした、これからの品質向上の考え方
- そのまま使える「品質チェックリスト」のたたき台

1. SIer・受託開発がベトナム/フィリピンで陥りやすい品質トラブル
ベトナムやフィリピンでのオフショア開発は、
コスト・スピード・採用難の解消という意味では非常に魅力的です。
一方で、SIer/受託開発企業からよく聞く課題は次のようなものです。
- 日本側の要件が曖昧なまま着工し、仕様変更が連発して炎上した
- プロジェクトメンバーの役割と責任が曖昧な為、「どこで品質が落ちているか」が分からない
- 手直しによる工数増加で結果的にプロジェクト粗利が大幅に下がっている
- 日本側と現地側の適切なコミュニケーションが取れているか分からない
- 「人月単価を下げる」ことが先行し、レビューやテストが後回しになった
国別の傾向感としては:
- ベトナム:一部の技術力は高いが、上流工程での解釈ギャップが出やすい
- フィリピン:英語で会話しやすいが、個々の役割分担を明確化しないと運用が上手くできない
これらは「オフショアだから」ではなく、
立ち上げ時の設計と、日々の運用の仕組みでかなり防げます。
◆ 参考記事:オフショア開発拠点設立の完全ガイド[2026年版]:成功するための重要ポイント

2. そもそも、なぜオフショア開発の品質トラブルが発生するのか?
オフショア開発の品質トラブルは全ての企業が経験すると言っても過言ではなく、
その原因のほとんどが「コミュニケーションエラー」になります。
オフショア開発の品質課題を抱える企業の日本側から聞こえる事は、以下のようなものです。
- 仕様説明をしても理解されない・分かったと言っても本当に理解しているか不明
- 説明した通りのアウトプットで出てこない
- オフショア側の品質が悪く、日本側での修正工数が増えている
- オフショア側の遅延が多く、プロジェクト全体が遅れる
- 自己学習をしない為、スキルが上がっていない
一方で、同じ企業のオフショア拠点側から聞こえる事は、以下のようなものです。
- 日本側の仕様説明が不明確で、質問しても適切に回答が得られない
- 日本側とオフショア側で、誰がどこまでやるのか明確化されていない
- 品質の定義が決まっておらず、基準が分からない
- 着手後に変更が頻発したり、質問の回答が得られず着手が出来なかったり調整が間に合わない
- ツールや学習時間を与えられず、学習とプロジェクトの優先事項が見えない
上記の例は、実際に日本とフィリピンのオフショア開発拠点で起きた事例になります。
両者のやり取りを中立な立場で細かく分析をしていくと、以下の様な課題が見えます。
- 仕様説明が不明確=伝わらないのでは意味が無い
- 基準が不明確=相手に何を求めているのか伝わっていない
- 適切な質疑応答が出来ない=作業遅延やアウトプットに影響が出る
- 日本の文化を前提として価値観を測る=相手は日本人ではないので理解できない
※これらを要約すると「適切なコミュニケーションが出来ていない」に行きつきます。つまりは、コミュニケーションが出来ていないが故に、様々な認識齟齬が生まれ、それらが品質の課題に結びついているのです。
◆ 参考記事:オフショア開発の失敗事例から学ぶ、失敗のポイントとその対策

3. 立ち上げフェーズで決めるべき「品質設計」の4つの軸
3-1. ビジネスゴールと品質目標をセットで決める
SIer/受託開発のオフショア立ち上げでは、次の2つをセットで定義しておくことが重要です。
- ビジネスゴール(例)
- 6ヶ月以内に初回リリース
- クライアント先での重大障害ゼロ
- プロジェクト粗利率の日本対比◯%向上 など
- 品質目標(例)
- リリース前の重大バグ件数の上限
- リリース後◯ヶ月の障害件数目安
- コードレビュー実施率/テストカバレッジの目安 など
「どこまでできれば“合格”なのか」を、ビジネス側と技術側の両方で協議し明確な基準を定義します。
3-2. 品質基準を“日本語で”落とし込む
- 重大バグ/中程度/軽微の定義
- 受け入れ判定の条件(どのバグまで許容してリリースするか)
- コードの品質基準(コーディング規約・設計原則)
- テストの範囲(単体/結合/受入/性能 など)
ベトナム/フィリピン側には英語で伝えるとしても、
まずは日本語で整理してから「翻訳」するほうがブレません。
3-3. 役割分担(日本本社/現地チーム/ブリッジSE)
典型的には、次のように線を引きます。
- 日本本社:要件定義・基本設計/優先順位の決定/受入テストのOK/NG
- ベトナム/フィリピン:詳細設計・実装/単体・結合テスト/一次障害解析
- ブリッジSE:要件の翻訳/Q&A管理/仕様変更の影響説明/レビューのハブ
「誰がどこまで責任を持つか」を曖昧にしたまま走ると、
品質トラブルが起きたときに、原因も責任も見えなくなります。
※各ポジションとメンバーのプロジェクト毎の役割と責任の範疇を明確化しましょう。よくある失敗例で、ベンチャー気質で「皆でやれることやろう」は国際間のプロジェクトでは絶対にNGです。
3-4. 最初の6〜12ヶ月の体制モデル
人月ではなく“役割”で設計します。
- ブリッジSE
- テックリード(レビューと設計の責任者)
- 実装メンバー
- QA/テストリーダー
ベトナム/フィリピンでは、人の追加自体は比較的しやすい一方、
レビューと設計を見られるリーダー層がボトルネックになりがちです。
◆ 参考記事:オフショア開発でのブリッジエンジニアの役割とは?よくある課題と解決策

4. 日々の開発で品質を落とさない「運用フレーム」
4-1. 週次・スプリントごとの品質ルーチン
毎週/毎スプリント、少なくとも次は確認したいポイントです。
- 要件のグレーゾーンが残っていないか(曖昧なタスクの洗い出し)
- 仕様変更や追加機能が、どのスプリント/誰に影響するかが見えているか
- レビューが「誰が・何を・どの粒度で」見ているか
- バグは「どの工程で生まれたか」まで遡って記録されているか
これは、拠点設立ガイドで触れられている「役割とプロセス設計」を、
「品質」にフォーカスして具体化したものと考えてください。
4-2. 日本側が“最低限”やるべきこと
- エンドユーザーの状況や非機能要件(レスポンス/可用性/運用制約)を伝える
- 受入テストの観点や優先度を明示する
- 定例会で「何がうまくいっていて、何がズレているか」を言語化する
- ガントチャートを2国間で共有しデイリーの進捗状況をチェック
ベトナム/フィリピン側に丸投げすると、
「期待していたアウトプットとは違う形で進んでいる」状態になりがちです。
4-3. ベトナム/フィリピンのコミュニケーションのクセ
- ベトナム:
- 技術的な質問は活発だが、仕様の“前提条件”は自分解釈で進めてしまうことがある
- 「分からない」と言いづらい文化背景もあるため、こちらから“確認質問”を促す仕組みが有効
- ベトナム人ブリッジエンジニアの語学力次第で現地エンジニアの仕様理解等の影響が大きい
- フィリピン:
- 英語での会話はスムーズだが、口頭合意だけで進みがち
- 設計・仕様は、必ず「書いたもの」を残す前提で進めると品質が安定しやすい
- 欧米的な明確な役割と責任の範疇の定義を基に、合意形成をはかると良い

5. コミュニケーション分析とルールの明確化
管理者の重要な役割
立ち上げ時期のオフショア開発は、特にコミュニケーションエラーが頻発します。
当社でも実施していた有効な施策として、拠点長や事業責任者等は、社内コミュニケーションツール(Slack等)のプロジェクトメンバー間のコミュニケーションを細かくチェック出来るようにします。
- 日本側のPMとブリッジエンジニア、オフショア開発側メンバー間のやりとり
- どこで、どのように合意形成がはかられたか
- スケジュールや進捗管理について明確に合意がとれているか
- コミュニケーション上のコンフリクトが起きていないか
- レスのタイミングは適切か(返信が無い等の状況は無いか)
このメンバー間のコミュニケーション分析を責任者が実施する事で、非常に重要な指標の収集になります。
ここでのチェック体制が出来ていると、小さなコミュニケーションエラーからインシデントになる前に、どこで、誰が、どのように、なぜ、そのような状況になったのか、適切な振り返りや早期の課題発見と改善に繋げられます。
このエラーポイントを責任者が、全体ミーティングや個別にチームに共有し、
- 再発防止策を図る
- 適切な伝え方をレクチャー
- コミュニケーションマニュアルへの落とし込み
- 改善案を基にしたルール作り
等のアクションに繋げ、チーム全体のコミュニケーション品質の向上に繋げます。

6. 末端エンジニアが品質向上のモチベーションを保てる環境が提供できているのか?
モチベーション管理は会社の責任
オフショア開発側のエンジニアは、情報がブリッジエンジニアを通じて間接的にしか入ってこないという限定的な情報を基に作業する環境となり、かつモチベーションやスキルの高い人材には特にフラストレーションが溜まりやすいため、それらを解消する施策を講じる事が、現地法人の管理をする上で重要となります。
これらの課題に対する対策として、当社でも実施していた施策は、
- 大規模案件ではコアメンバーを日本へ招待し、クライアント訪問及びエンドユーザー理解の機会を与える
- プロジェクト毎のチームパフォーマンスに応じインセンティブの付与をする
- オフショア開発拠点で、月次、半期、年次等のパフォーマンス賞を付与する
- オフショア開発拠点側が品質チェック体制を構築し、品質のオリジナルスタンダードを作る
- プロジェクトチーム内で各自の品質チェックをする工程を設ける
- ただ基準を設けるのではなく、それらがシステムやユーザーにどの様に寄与するかビジュアルで伝える
このような施策を設ける事で、オフショア開発拠点のエンジニアが自発的に品質を意識するようになり、ただ言われたことをするだけのプログラミングではなく、品質を向上させることに意味やメリットを感じてもらえるような工夫をする事が大切です。

7. ツールとAIを使った現実的な品質向上
7-1. ツールでカバーできる品質
- バージョン管理(Git)とレビューのワークフロー
- CI/CDによる自動ビルド・自動テスト
- 静的解析ツールによるコード品質チェック
ベトナム/フィリピンの優秀な開発会社ほど、
これらの標準ツールチェーンを前提にしています。
7-2. AIで任せてよい部分・任せるべきでない部分
- 任せてよい例
- コードの雛形生成
- 単体テストの初稿生成
- 既存コードへのリファクタ候補提案
- 任せるべきでない例
- 要件の解釈・優先度づけ
- アーキテクチャや非機能要件の判断
- ビジネスロジックや例外処理の抜け漏れの最終判断
「AIで補助→人が最終判断」という流れを、
ベトナム/フィリピン側のチームにも“運用ルール”として組み込むことがポイントです。

8-1. これから立ち上げる企業向け「品質設計チェックリスト」(たたき台)
これからベトナム/フィリピンでオフショア開発を始めるSIer/受託向けのチェックです。
- ビジネスゴールと品質目標(KGI・KPI)を日本語・現地語で明文化している
- バグの重大度定義と受入基準を文章で明確に基準化して共有している
- 日本本社/現地チーム/ブリッジSEの役割と責任の範疇が明確に決まっている
- 最初の6〜12ヶ月の体制(ブリッジ/リード/QA)が“人”ではなく“役割”で設計されている
- ベトナム/フィリピンを選ぶ理由を、品質・コミュニケーション・採用面で言語化している
- メンバー間のコミュニケーションチェック体制ができている
- 品質を向上させるモチベーション設計が出来ている
8-2. 既にオフショア中の企業向け「品質改善チェックリスト」(たたき台)
すでにベトナム/フィリピンでオフショアをしており、品質で悩んでいる方向けです。
- 品質トラブルが「どの工程(要件/設計/実装/テスト/運用)」で生まれているか見えている
- 週次/スプリントごとに品質指標(バグ数/再発率/レビュー指摘数 等)を確認している
- 日本側が“最終的な受入基準”を握っていて、適切にオフショア開発拠点に共有されている
- 過去のバグや障害を、テストケースや設計のナレッジとして蓄積している
- ベトナム/フィリピン側のチーム構成(ブリッジ/リード/QA)が、今の規模に見合っている
- チーム内で問点や問題が発覚した際の報告フローと対策が明確化されている
- 2国間のメンバーが適切なコミュニケーションや質疑応答がすぐ出来る環境がある
FAQ(よくある質問)
- Q1. オフショア開発拠点の品質課題がなかなか解消されず、社内でも有効な施策が打てていません。このような状態で支援は可能ですか?
-
A. もちろんご相談ください。当社は代表とCTOがゼロからオフショア開発拠点と日本側で海外事業部を立ち上げて、2期目で最大収益・最高利益率事業まで構築してきました。その過程では、非常に多くの品質課題やコミュニケーション課題があり、それら一つ一つを丁寧に分析し改善を現場で行ってきており、貴社の状況を詳細に分析しながら課題解決の支援を致します。
- Q2. オフショア開発は品質の課題は海外エンジニアのレベルが低いからですか?
-
A. 必ずしもそうとは考えられません。個々のエンジニアのスキルは様々ですが、根本的な課題は設計と仕組化が適切に出来て居らず、コミュニケーション課題も山積している企業がオフショア開発における品質課題を抱えています。そのような企業を非常に多く見てきております。
- Q3. 日本側とオフショア開発拠点で対立構造が出来てしまいます。対策はありますか?
-
A. 2国間での対立構造は良く起こるケースです。この状態が悪化するとオフショア開発事業自体が難しくなります。これらはメンバー間の役割と責任の範疇を明確化して、適切なマネジメントを行う必要がありますが、個々の状況が異なる為、詳細な分析からスタートする必要があります。

9. Social Zeroが支援できること(品質 × オフショア)
当社は、ベトナム・フィリピンを中心に、
オフショア開発の立ち上げから事業拡大までをリードしてきたSIer/受託開発企業の支援実績があります。
品質まわりでは、例えば次のような支援が可能です。
- 立ち上げフェーズ
- 品質要件を織り込んだRFP設計
- ベトナム/フィリピン拠点の立ち上げ・パートナー選定
- 運用・拡大フェーズ
- 現行チームの品質診断(コード・プロセス)
- レビュー体制/教育プログラムの設計
- 立て直しフェーズ
- 既存オフショア開発の「品質面での棚卸し」と改善プランの策定
- 委託先の見直しや、自社拠点化の検討支援
オフショア開発の品質向上は設計を適切に行う
当社では、オフショア開発拠点の設立や海外事業部の立ち上げから事業拡大までを包括的に支援し成功させてきた実績のある当社代表とCTOが、初期段階から貴社のオフショア開発拠点の設立をご支援いたします。
まずは、初回無料カウンセリングを通じて、貴社がまず何をすべきかという、次のステップを共に整理しましょう。是非お気軽にお問い合わせください。



